【物語リレー】瞬きできる方で、会おうね。ファンタジー小説|創作記録
みなさん、おはようございます♪
noteが大好きな「雪綴ゆき」です❄️

読む順番
①ふうりさん プロローグ
②ことさん 第零話
③尋羽さん 第一話
④ekoさん 第二話
⑤ゆずまるまるさん 第三話
⑥匠さん 第四話
⑦ロクトさん 第五話
第六話
「今日は、君に忠告があってきました」
「……知ってるわ」
私の声に、アクラの笑みが
ほんの少しだけ揺らいだ。
街灯の下、群がる蛾の影がせわしなく揺れた。
「……へぇ」
アクラは首をかしげる。
「なんか、雰囲気変わったね。キミ」
「そう?」
「うん。境目が、濃くなった」
濃くなった。
その言葉の意味を、今の私はちゃんと知っている。
裏側に引きずられる側じゃない。
引き戻す側に立った、ということ。
「忠告って、なに」
私は静かに聞いた。
アクラは少し黙ってから、にやりと笑う。
「やめときなって話だよ。
お姉ちゃんを助けるとか、空星を壊すとか。
そういうの、全部」
ぴくり、と指先が震える。
けれど私は、コートのポケットの中で
震える両手をぎゅっと握りしめた。
爪が手のひらに食い込む痛みが
今の私の輪郭を、確かに保ってくれる。
「……なんで」
「無理だからさ。キミひとりじゃ」
アクラは肩をすくめる。
「あの星はね、絶望でできてるんだよ。
この世界に馴染めなかった人間たちの諦めとか
痛みとか、そういうのが何百年も積もってできた塊」
街灯が、じじ、と鳴く。
「触れた人間から、“生きたい”を削っていく。
だから、近づいた奴から壊れる」
アクラの言葉が、ねっとりと足元に絡みつく。
「キミひとりの希望じゃ、どうにもならない」
「……」
「それに、お姉ちゃんはもう、半分こっち側だ。
戻したところで、元には戻らないよ」
その言葉は、ちゃんと刺さった。
刺さって、でも、抜けなかった。
私はゆっくり息を吐いた。
「うん。知ってる」
「……は?」
「全部、知ってる」
蛾が一匹、街灯の光にぶつかる。
じり、と小さな音がして、力なく落ちた。
「無理かもしれない。
元に戻らないかもしれない。
一人じゃどうにもならないかもしれない」
声が、不思議と震えなかった。
「でも、それと、やらないことは、別」
アクラの顔から、笑みが消えた。
初めて見る顔だった。
笑っていない、アクラ。
「……ふぅん」
低い声。
「キミ、変わったね。ほんとに」
「うん」
「ねぇ。一個だけ、教えてあげるよ」
アクラは私に一歩近づいた。
傷跡の走る顔が、街灯の光で青白く浮かぶ。
「お姉ちゃんがキミを戻したのは
優しさじゃないからね」
「……どういう意味」
「あの人はね、キミに、終わらせてほしいんだよ」
ことん、と。
胸の奥で、重くて冷たい石が落ちた気がした。
「空星を。自分ごと」
街のノイズが、急に遠くへ押し流されていく。
自分の浅い呼吸と
早まる心臓の音だけが、やけに大きく耳に響いた。
お姉ちゃんは、私を助けたんじゃなかった。
私に、自分を、終わらせてほしくて。
その願いの重さに、目の前が歪んだ。
喉の奥から、熱い塊が込み上げる。
それを、ゆっくり飲み込んだ。
ここで泣いたら、何かが、ほどけてしまう気がした。
私は、痛む手のひらにさらに力を込め
まっすぐにアクラを見据えた。
「……それでも」
「それでも、行く」
アクラはしばらく、私を見ていた。
それから、ふっと笑った。
今までで、いちばん静かな笑い方だった。
「そう」
「うん」
「じゃあね」
ふわり、と。
アクラの輪郭が、夜に溶けていく。
「次に会う時はさ」
煙のように薄れながら、アクラは囁いた。
「ちゃんと、瞬きできる方で会おうね」
——え。
問い返す前に、アクラの姿は消えていた。
街灯の光だけが、じじ、と残っている。
私はその場に立ち尽くした。
ちゃんと、瞬きできる方。
それが意味するところを、私はまだ、知らない。
でも、たぶん。
たぶん、もう、そう遠くない。
私はゆっくり歩き出した。
家のある方角へ。
明日、学校に行く。
いつもの顔で、いつもの笑顔で。
——そして、それから、始める。
街灯の下には、もう蛾はいなかった。
——もう、戻れないとしても。
私は、お姉ちゃんのところまで、行く。
遂に次で、完結ですね✍️
最後は、よしまるさんでお願いします🙌
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