旅の始まりは夜を渡って
重なる円の軌道を定規にして
旅の線を引いてはたどる。始まりと終わりを繰り
返す航路に沿って旅に出る。ゆるやかに描かれる
曲線をつたい、リズミカルに刻まれる線や形や
色をたよりにして、閉じゆく街の気配を抜けて。

旅の始まりは夜

通りに並ぶ彫刻が持つ曲線は

連続する雲で、ゆらめく質感は海を示す

緑にまぎれる彫刻のしなやかな線は

御堂筋でも緑の下で
街に動きをもたらしている

止まったままの時を抱える
都市の記憶を帯びる彫刻

奥に立つのは、やわらかなシルエットの女性像の

エーゲ海に捧ぐ。その印象的な波打つような曲線を
いつかの旅でもたどってきた

海のゆらぎが取り込まれるように
彫刻は伸びやかでゆったりとした線を描く

街を構成する曲線に沿い

リズミカルな直線が連続する

過去と現在と未来を内包するモニュメント
神戸の街の記憶を旅に重ね

未来へのまなざしを持つ

建物が描く線を旅に映す

こどもたちのために建てられた本の森
新しい波が寄せては返り

街は新しさを内外に帯びていく

わたしと私。彫刻が示す内側と外側

伸びる影。溜まる光。建物に浮かぶ陰影は

街の一面を映し出す

スクラッチタイルに浮かぶアールデコの装飾

表情豊かなファサードに目を留めては

リズムを刻む垂直性に引き寄せられる

円、シンメトリー、連続、パターンのモチーフが続く
曲線をまとう建物は90年を超える時を刻む

押し寄せる時代の波に

新たに生み出される建物もあれば

姿を保ち、行き交う人を見守る形もある

1995の数字が記されたメモリーウォール

出発までの時間、メリケンパークへと立ち寄ってみる

赤く染まるなだらかな曲線が描く

帆船の帆がイメージされたデザインが
海の旅へ思いを高め

フレームに重なる赤のトラスのシルエットは

直線が重なり、面となり、曲面を構成する
優美な姿の神戸ポートタワー

神戸の港を彩る赤い光の波は

力強く美しくもある

港の風景をぐるりとめぐり

時間に間に合うように、引き返す途中に

有機的な形の建物にもまたふれる
辺りはすっかり暗くなり

光の効果の中を行く

気配を感じ見上げれば
以前にも間を縫うように訪れた

建物自体がキャラクターとなり
生誕70年を祝うように、街にあふれる

移りゆく神戸の港。時代は進み人の流れは変わっていく

船のようなアリーナが浮かぶ海

出発の時間に間に合うように、自転車をたたみ
船に乗り込んでは、海を渡る旅を繰り返す
旅は昨年の11月の初めのことで、賑やかな三宮
の夜の街を抜け、静かな港へと出る。いつかの
旅を位置をずらし、角度を変えては、またなぞり、
闇に浮かぶ光をくぐり、夜の向こうへ旅に出る。
