形にふれて視点を開く
旅先に幾重に連なる
結ばれては展開するモチーフ。六甲の山から海へ、
街へと吹き抜ける風。海から潮の香りを運ぶ風。
繰り返す季節に場の密度が上下しては、新たな
風が生まれ、並べられた彫刻の間を抜けていく。

風が彫刻を吹き抜ける

翼を広げるかのごとくとらえ

空へと飛び上がるように立つ姿は
かつて六甲の山から街を見下ろし
神戸で繰り返される芸術祭に置かれたもの

「case」と名付けられた作品は
芸術祭の空気をこの場に運ぶ

素材は様々に姿を変える
ケヤキに新たな命が吹き込まれた

生き物のような彫刻は
神戸市電の記憶を帯びる

形は作者の記憶を
過去から現在へとつなぐもの

連なる円の向こうに輝く青に

神戸の海の記憶が閉じ込められる
円は連なり立体となり

空瓶の形をした彫刻を作り出す
作者の記憶の中のガラス瓶が

形を変えて水への思いをつないでいく

白い枠を埋めるのは

幾重に連なる水風船

閉じ込められた水が周囲を取り込み

異なる街の風景を描き出す

連続してはゆらめく水が
周囲との関係を変化させ

水の向こうに広がる空も

街とともに色合いを変える

移動するほどにずれる焦点に

水は向こうの様相をずらし
反射と透過を繰り返す

水風船は光をまとい

街を取り込んでは
風景を動的なものへと転じさせる

幾何学に構成され、光や水を取り込む彫刻もあれば

飛沫を立てて水の中から

ふわりと現れるような彫刻もある

白い生き物の物語は
作者によって姿形を変えていく

木やガラス、金属にウレタン塗装などの素材の中に

しっとりと奥行きのある質感の彫刻は
竜山から切り出されたもので
石の記憶に引き寄せられる

竜山石の台座の上で

彫刻は緩やかな線を描き

空の下で重なり

開いてはループするように
描かれた円の軌道を重ね

彫刻から彫刻へ

素材から形へ、風景へと

視点を転じていく
日々、どこかで新たなものが生み出され、少しずつ
変化していく日常に目を留める。言葉を置いては
重ね、移動を繰り返し、その変化に注意を注ぐ。場
の気配に意識を向けては、形にふれて視点を開く。
