銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十一話(8) 恋の嫉妬と仕事の妬み
・第一話のスタート版
・第三十話(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)
・第三十話 まとめ読み版①
俺は通信機の周波数を警察無線に合わせた。
『緊急通報によると、犯人は銃を手にしている』
『十五階にいた社員らが、人質に取られている』
おいおい、勘弁してくれ。俺のクライアントがいるんだぞ。
階段を降りるゆっくりなペースがもどかしくて苛立つ。
「外へ避難して下さい」
一階ロビーは大混乱だ。人の波に押される。
念のため待ち合わせ場所を見るが、ティリーさんの姿はない。
サブリナさんをかばいながら、ビルの外へ出る。
警察車両のサイレンが、けたたましく鳴り響いていた。
「十五階で立てこもりが発生したらしい」と口々に人が話している。
「ティリー先輩、どこにいるんでしょうか? これじゃ会えないですね」

サブリナさんが心配している。
「ティリーさんはまだ、十五階から降りてきてねぇんだ」
サブリナさんの目が大きく見開かれた。
「資料受け取るだけなのに、どうして? 今、十五階で立てこもりが起きているって、言ってますよね?」
納得できないと言う顔をしている。俺だってそうだ。
「大丈夫、俺が助けに行くから」
「レイターさんって、本当に厄病神なんですか?」
サブリナさんが怯えてる。想定外に備えて情報を集めるサブリナさんの想定を超えた事態だからな。
俺は安心させようと笑顔で答えた。
「そんな顔しないで。せっかくの美人が台無しだ。厄病神の登場がサブリナさんの契約が成立した後で良かったじゃん」

サブリナさんはニコリともしなかった。
その時、俺は見知った顔を見つけた。
「おい、カルロス」
将軍家の下僕のカルロスは、サラリーマンのような目立たないスーツを着ていた。潜入捜査中か。
「レ、レイターさん」
俺に見つかったのが面倒くさい、って思ってるのが手に取るようにわかる。文句は言わせねぇ。
「カルロス、あんた、こちらのサブリナさんをフェニックス号へ送れ」
「僕は仕事中なんです」

「俺のティリーさんが十五階にいるんだよ。勝手に動くぞ」
将軍家秘書官のカルロスの任務は、アーサーの仕事が円滑に回るようにすること。
俺が勝手に動くと聞いて慌てている。カルロスは頭の回転は悪くねぇ。何と言っても天才軍師アーサーの影武者だからな。
「待ってください。女性をフェニックス号へお送りします。ですから、勝手なことはしないでください」
「サブリナさん、こいつ、腕はいいから、安心して船で待っててくれ。俺はティリーさんを連れて帰るから」
「は、はい」
カルロスに任せとけば間違いはねぇ。
さて、ティリーさん待たせたな。
* *
リリリリリリ・・・、と火災報知器の音をティリーは聞いた。
応接室で一緒にお茶を飲んでいたバッハさんが、白いティーカップを置いて立ち上がった。
「火事ですかね。避難しましょう」
バッハさんの後について、部屋の外へ出る。オフィスから騒がしい声がした。異様な雰囲気だ。
ドアの前で男性社員が固まっていた。
「ここから動くな!」」
奥から男の人の怒鳴る声が聞こえた。「動くな」と言われても火事だったら逃げない訳にはいかない。何をもめているのか。
カウンター越しにオフィスをのぞいたわたしは、身体が硬直した。

スーツを着た白髪の男性が、銃をわたしたちに向けた。
「全員人質だ。動くな」
厄病神の発動だ。
レイター、何とかして!! わたしは心の中で叫んだ。 (9)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」