コバルト文庫デビューの少女小説家のなれの果て⑤ 誰にもシェアされず……皆いなくなった
このNOTEは、仲間との離別と、25年ほど前のシェアワールド(TRPGなど)製作の失敗について書かれています。
チームで創作することに、興味がある人などには、もしかしたらお役にたてるかもしれません。
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● お絵描きとスポーツは似ている……かも
僕はセツ・モードセミナーを離れて以後、大きな一枚絵を描くことは完璧にやめていました。
絵具を使って、ポスターくらいの大きなサイズの絵を描くのって、めちゃくちゃ面倒なんですよ。
イーゼルたてて道具広げて場所とるし、部屋も手も服も汚れる。
絵を描くという作業に持ってゆく前に、まず準備がいる。それが……だるい。
習慣化してるときは、惰性でなんとなくできてしまうことも、気持ちが一度切れると、だるくて、やる気が起きない。
ワークアウト系ダイエットに近いかもしれないですね。
一度、燃え尽きてしまうと、走るのも面倒になってドカ食いもして、せっかく積みあげてきたものを、すべて灰塵に帰してしまう。
他にも、絵を描く・アウトプットするということと、運動は近いところがあるんですよ。
やめると、エネルギーとか時間をもて余しちゃうんです。
結果、生活バランスが崩れたり、眠れなくなったりするんですよねえ。
そんな感じで、創作行為を完全に断った僕は、絵でアウトプットすることによって放出されていた妄想が、頭の中に沈殿するようになるんです。
そうすると、頭が重いというか、日々鬱々としちゃうんですよねえ。
それがきつかった。
だから、その水子のように憑りついているものを、パソコンで吐きだすことにしたんです。

● PCで、シェアワールドづくりを目ざす
その頃の僕は、小説執筆はしていませんでした。
けれども、PCはインターネットをするために持ってたんですよねえ。
なので、家にいるときは大体たちあげてました。
だから、なにか書きものくらいは、すぐに始められる環境ではあったんです。
パソコン保有者にとっては、文章を書きはじめるハードルは低いです。
でかい紙に、絵の具を塗るくことにくらべると、二十倍くらいラクです。、
で、脳内に貯まった水子というか膿というか……イメージの断片を、アウトプットしてゆくのです。
最初は、プロット未満の設定みたいなものを、メモしていただけでした。
それを積み重ねてゆくうちに、なんとなくベクトルが定まってゆき、なんとなく世界が形作られてゆく。
当時のオタクは、小学校の頃にスティーブ・ジャクソンの『ソーサリー』というゲームブックをやってます。
中学生くらいのときに『ロードス島戦記』とか『アルスラーン戦記』とか『ドラゴンランス戦記』とか『エルリックサーガ』を読んでます。
世界観重視の凝ったファンタジー系作品を、皆が嗜んでいました。
PC8801で『ソーサリアン』とか『ティル・ナ・ノーグ』とか『ラストハルマゲドン』とかやってました。
ラヴクラフトのクトゥルー神話(これがシェアワールドの元祖か?)とか、それを使った日本のヤングアダルト小説(当時、まだ、ラノベという言葉はなかった)や漫画もチョイチョイあった気がします。
TRPGとかも地味にはやってて、ファンタジー作品のメディアミックスの一角を担っていました。
グループSNEの『ソードワールド』とか、伸童舎の『聖刻』シリーズとか「同一世界を使って、複数で作品をつくっている。スピンオフの群れで、成り立っている」のようなシェアワールド的思想が、オタク界隈に根付いていた気がします。
(このシェアワールド的思想が、現代の『異世界転生・転移ブーム』に一役買っていると思います。といっても『異世界ブーム』は、世界設定を共有するのではなく、世界イメージ・世界ガジェットといった様式美・テンプレートを共有しているわけですが)
ファンタジー世界観を嗜む層というのが、オタク界に散見されたんですよねえ。
それらを、僕も楽しんでいました
その流れに「僕の、イメージ排泄作業」もひきよせられてゆきました。
● 世界設定だけつくるのは、わりと楽なんです
小説は、最後にギュッと物語として固めるときに(イメージ的には、ゲロとかウンコとかガラスのかけらとか川原の石とか落ち葉とか集めて、ギュゥゥゥゥゥウウウウウウウと握る感じ)に、すごく消耗させられるんです。
物語って閉じるのとか、複線を回収しながら前に進めるのが、面倒なんです。(楽しい部分でもあるんですけど)
それがない設定製作作業なら、わりと気楽にやれちゃうんですよねえ。
思いつきを並べてゆくだけでいいし、回収する必要のないネタを、バンバン使えるんで、楽しい作業なんですよねえ。
小説家志望で、小説書いたことはないけど「世界設定だけ10ヵ国分あります」とか「この国の年表は、二千年分できてます(ファイブスター物語の影響だろう)」とか「魔術の詠唱文は、百種類ストックあります(バスタードとスレイヤーズの影響だろう)」とか、専門学校の小説クラスに結構いた気がします。
これって、別に悪いことではないんですけど……お菓子なんですよねえ。
栄養にはならんけど、おいしいんすよ。
(アイデアを作る力は育まれる気がするけど、構成力は身につかない気がする)
お菓子は別腹なんで……色々イッパイイッパイのときも、いけちゃうというか……
閉じるための思考をすることなく、ただ脳内のイメージを甘噛みして排泄するというのは、楽なんですよねえ。
なので、イロイロ挫折して、絵も小説もできない状態だった(書いたところで何になるの? という言葉が、すぐに脳内を反芻する)ですが、この設定作業は楽しんでやれました。
1ヶ月で、原稿用紙200枚くらい書いたと思います。
筆ペンで書きちらかしたラフ画も、300枚くらいあったと思います。
● 旧交をあたためるべく……
当時、シェアワールド的な設定資料集みたいなものをつくって、仲のいいオタク同士で批評しあうみたいなことは……まあまあわりとよくある光景だったと思います。
「僕の考えた最強装備」「僕の考えた最強呪文」「僕の考えた最強傭兵」「僕の考えた最強要塞」「僕の考えた最強ドラゴン」「僕の考えた最強精霊」「僕の考えた最強種族」「僕の考えた最強奥義」「僕の考えた最強召喚獣」「僕の考えた最強兵器」「僕の考えた最強システム」とか、今でも考える人はいるんだろうけど……そういうのを見せあって、語り合うのは楽しいというムードが、あったんですよねえ~
そういうのの基盤となる世界観を僕が示せば、漫画や小説やファッションイラストなどで関わった人たちを結集させることができるんじゃないか、そんなことも考えてました。
みんなが断片的に持っている「僕の考えた●●」を寄せ集めれば、なにかが起こせる気がしたんです
喧嘩別れしてしまったり、疎遠になってしまった人たちとも、また仲良くやれるんじゃないか――そんなことを考えてました。
この話しに乗ってくるだろうなあ~と思った、昔の友人たちに連絡とったりしてました。
シェアワールド作業を通して、昔みたいにオタ話耐久十時間とかを月に二回とかできたら、楽しいし、自分のレベルアップにも繋がるだろうと思ってました。
でも……うまくいきませんでした。

● 人望がないので、シェアワールドがシェアされずっ!
僕が、漫画や小説やイラストなどの創作行為に傾倒したのは、結局のところ現実逃避なわけです。
「現実と関わる能力が、低い」からなのです。
それにくわえて、人間関係力を軽視し、コミュ力をあげてこなかったツケ」が加齢と共に大きくなっていました。
5年ぶりくらいに、昔の仲間と連絡をとると……色々とぎこちなかったんですよね。
連絡を迷惑がる人もいたけど、懐かしく思ってくれたのか、会ってくれるという人もいました。で、全盛期の半分くらいの4名で、飲み会を開くことになりました。
僕は、電車や時間管理が苦手なので、20分ほど遅刻していったのですが……気にしてませんでした。
「あいつら時間にルーズだったし、どうせ半分くらい遅刻してくるだろう」と考えてました。
けれども、遅れてきたのは、僕だけでした。
大人になれてないのも、僕だけでした。
そして、創作行為をつづけているのも、僕だけでした。
オタクではありつづけているようでしたが、つくることに興味は喪っているようでした。
僕のシェア・ワールド話にも「ふうん。川村君は、まだそういうの好きなんだなあ」という感じで、興味も示しませんでした。
何度か会っていれば、また、昔みたいな感じになるかも……と考えていたのですが、そうはなりませんでしたねえ。
三回くらいで、オタク仲間との飲み会は終了しました。
今思えば、よくも三回もつきあってくれたものだという気がします。
大人って、時間はないですからね。
気軽に誘うということも、遅刻してゆくということも、人の時間を大事にしていない行為なのかもしれません。
ハタチ前後の頃に、このメンバーがまとまれていたのは、場の力が大きかったことが……オッサンになった今、わかりますね。
創作系の専門学校でであった僕たちは「よるべなさから、手近なところにいる、まあ話ができそうなヤツ」と、仲良くなろうとした。
見知らぬ場で出会うということは「ここを、少しでも居心地のいい場所にしたい」という共通目的があるのでなく、結束しやすい。
あの頃、僕たちが繋がれたのは「混じりけのない創作欲」だと当時は思っていたけれども……実は、色々な目的とか不安とかが入り混ざっていた上での結束だったのだなあ~と、今は理解できますね。(そういった関係が悪いというわけではないのですが)
20代後半の僕が、仲間に協力を求めるならば「みんなにとって居心地のいい場所」を、まず用意するべきだったのだと思います。
あるいは「僕に乗っかれば、違う景色が見れる」と感じさせることができていたら、変わっていたのかもしれない。
未来が開ける・何かが起こるような「幻想・大義・対価」というエサを与えられたら、違ったのかもしれない。
人が動いてくれない理屈は、実に単純です。
「労力に見合うリターン(具体的なものでなくてもいい場合もある・好きな子の笑顔とか)が得られない」と判断したときに、人は動かない。
蜜月は終わっていた。
僕に人をまきこむ力(人望・政治力・カリスマ)があれば、新たなる関係を構築できた可能性もあった。
ただ、大人になった皆に対し、僕だけ変わってなかった。
それにつきますね。
● 偏っているので、シェアワールドがシェアされずっ!
僕が考えたシェアワールドが「シェアされなかった理由」の二つ目として、シェアしにくい(シェア欲がそそられない)というのがあったと思います。
僕が考えたのは「アトランティス大陸と、吸血鬼と、エドガー・ケイシー」をからめたものでした。
アトランティス大陸の民が、全員吸血鬼になったので、国民の総意で大陸を、太陽のない地底に沈めることにした。それが、のちにケルト神話(多くの神話が、神々は天井にいるが、ケルトの神は地底にいる)とかアガルタと結びつく。
それを、現代から考古学的に読み解いてゆき、エドガー・ケイシーの言葉をルール(縛り)としてからませる。
ファンタジー世界観に加えて、僕のオカルト趣味が混じっています。
王道的ファンタジー愛好家たちからは「ややこしい、面倒くさそう」「暗い。世界観のムードも、世界の行く末も」と感じられるものだったように思います。
シェアワールドって、みんなが好き勝手なことやっても、受け入れられるくらいの懐の深さが必要だと思うんです。
だからアトランティス大陸という”地の底に沈む結末が、限定されている”にしたのは、失敗の一つですね。
『ソードワールド』とか『聖刻』にしても、まったく手をつけてない謎だらけの地域を用意してますし。そこに、フロンティアスピリットが刺激される。
「ここならば自分にも、やれることがありそうだ」と、参戦したくなくなるんだと思います。
そういった先人たちの作品のバランスを、僕は全然理解できてなかったです。

● 頓挫したシェアワールドを……一人でシェア、世界は僕だけのもの・゚゚(p>д<q)゚゚・
誰も興味持ってくれないのなら、いいよ、もう。
オレ一人で愛してやるぜ、そういう気分になりました。
自分で作ったシェアワールド設定で、小説を書くことにしたのです。
誰にも相手にされなかったので、せめて、自分くらい愛でてやらなくてはと思ったんです。
この頃は、とにかく自分が信じられない時期で……なにかやってないと不安だったというのも大きかったと思います。
小説執筆のいいところは、書いた分が数値化されることですね。
やったらやった分だけ、原稿用紙の枚数があがってゆく。成果を実感しやすい。
レコーディングダイエットに近いかもしれません。
(こちらは、数字が減った方がいいのですが)
「いいものを書きたい」と思ったときは、脳がガチガチになって話は思い浮かばなくなっていたのですが「原稿用紙を埋めるだけで満足できる。なんかしてたい」モードになったとき、結構書けるようになってたんですよねえ。
僕は筆が遅く、現在の執筆スピードは「一年間そこそこ頑張って原稿用紙400~500枚」というところなのですが、このときは半年で千五百枚書きあげました。
そして、T原先生に連絡をとって、出版社を紹介してもらいました。
それが、自分史上、最大の黒歴史の幕開けとなってしまうのです。
念のために書いておきますが、当時の僕は本当に愚かでした。
恩を仇で返すというか、後ろ足で砂をかけるというか……
大恥をさらすことになるので、本当は書きたくないんです。
とはいえ、出版社サイドと書き手の間では起こりやすい事態ではあるので、似たような立場の人にとって反面教師になると思いますので、残したいと思います。

次回は、小説セカンド・チャンスの話です。
コバルト文庫デビューの少女小説家のなれの果て⑥ 終わりの始まり
ご期待ください!
過去に一冊だけだした本のアマゾンリンクも残しておきます(^^;
他「なれの果て」のシリーズはこちらから
全八話(第一部完になります)
2025年に、大藪春彦新人賞 & 映像化奨励賞のW受賞しました。
徳間書店さんつくってくれたPVを見ると、主人公(視点人物)である男性のことは全然触れられてないので、コバルトで僕が書いたものとは違う印象を持たれる方もいるかもしれませんが……作風は、大きくは変わってないと思います。コバルト文庫の『吸血鬼の綺想曲』を好きな方ならば、きっと楽しめると思います♪
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