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私の服を勝手に直した人🌿 大人になってから

私も社会人になり、気づけばベテランと呼ばれる年齢に
近づいていた頃の話だ

その頃のママちゃんも、まだ元気に働いていた

ある日、親戚ではないけれど、少し顔見知りの方の
お通夜に出席することになったらしい

クローゼットを開けては閉め、服を引っ張り出して
悩んでいたママちゃんは、突然私の部屋にやってきた

「黒いスーツ持ってない?」

当時はまだ体型も近く、母娘で服を貸し借りできる時期だった

私はクローゼットの奥から
黒いパンツスーツを取り出して渡した

ママちゃんはその場で着替えを始め、

「変じゃない?」

「これでいいかな?」

と三面鏡の前で簡単なファッションショーを始めた

親族のお通夜ではないし、黒いパンツスーツなら
失礼にはならないだろう

そんな結論になり、必要な小物を追加して出かけていった

その後、私はスーツの存在をすっかり忘れていた

しかし、必要な時はやってくる

数か月後だっただろうか

ふと思い出し、

「そういえば前に貸した黒いスーツ、私も近々使うから返してほしいな」

とテレビを見ながら言った

するとママちゃんは一瞬だけ不思議そうな顔をした

「あ~、どこだったかなぁ」

そう言いながらクローゼットを探し始める

上品そうなブラウス。

どこへ着ていくのか聞きたくなるような派手な服

相変わらずママちゃんらしい服がたくさん並んでいた

しばらくして、

「あ、これだ!」

と黒いスーツを見つけ出した

私は久しぶりに見るスーツを受け取り、
何となく違和感を覚えた

何かがおかしい

袖の辺りが妙に厚い気がする

私は袖を広げて見た
内側に折り曲げて縫われていた・・

「こんなだった?」

するとママちゃんは、

「ああ、そうそう」

と思い出したように言った

「着てみたら袖が長かったから、縫って短くしたわ」

私は一瞬言葉を失った

人から借りた服を、自分用に直す

そんな発想が私にはなかったからだ

「人から借りた物を勝手に縫うって変でしょ?!」

珍しく私も強い口調になった

するとママちゃんは不思議そうな顔で、

「だって切ったわけじゃないし。軽く縫っただけだよ」

と言った

いや、そこじゃない

私が言いたいのはそこじゃない。

けれどママちゃんにとっては、貸した服も借りた服も、
その時自分に合うように少し調整することは、
それほど不思議なことではなかったらしい

結局その夜、私の権幕・不満顔にママちゃんは

「じゃあ取るわ」

と言いながら糸をほどき、元の長さに戻してくれた

今振り返ると、ママちゃんは人との境界線が少し独特だった

優しいところもある

人情家なところもある

けれど時々、娘でも理解できない行動を平然とやってのける

私の服を勝手に直したあの日も、そのひとつだった

そして今でも思う

やっぱり、変だったのは私ではなくママちゃんだったと思う

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