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CHAGEEは一つの茶を何通りに変えるのか|全30商品から読み解く中国ティーブランドの商品開発

以前書いた、中国新茶飲*の雄CHAGEEのドリンクメニュー解説記事では、上海浦東国際空港T2店のミニアプリに掲載されていた30種類のドリンクを日本語で整理した。

新茶飲:お茶に果汁や乳製品などを合わせた新しいスタイルの中国のティードリンクトレンドのこと

商品を一つずつ見ている時は、龍井、大紅袍、プーアル、ジャスミン、桃、金木犀、抹茶、炭酸、クリームと、多数の素材が並ぶメニューに見えた。

ところが全商品を横断してみると、同じ茶が何度も別の姿で登場している。

桃烏龍はストレートティー、ミルクティー、クリームを載せたデザートティーになる。
金木犀烏龍も、茶だけ、牛乳入り、クリームとナッツ入りの3段階がある。

CHAGEEは少数の強い基礎茶を用意し、抽出法、牛乳、果汁、花、炭酸、クリーム、食感、飲用シーンを掛け合わせて商品数を広げている。
30種類の飲み物は、30種類の茶葉から生まれたものではなく基本のお茶をベースとした素材の組み合わせでできている。

この記事では、CHAGEEのメニュー解説記事で見た商品をもとにCHAGEEの商品開発を分解する。
メニューは更新され続けるのでここで扱うのは最新商品の完全網羅ではないが、基幹商品からCHAGEEの商品開発の型を見る。


この記事で見ること

  • CHAGEEの売上を支える中核商品は何か

  • 一つの茶から複数の商品を作る仕組み

  • 素材組み合わせの「型」の使い方




1. 商品取扱高の約9割をティーラテが支える

CHAGEEのメニューで発酵青梅を使った炭酸茶、熟成プーアルとカルメラ糖を合わせた一杯、山盛りのクリームを載せたデザートティーなどは変わった商品として目を引く。
ただ事業の中心にあるのは、茶葉と牛乳を組み合わせた一杯だ。

この商品群は、中国語のメニューでは「原叶鲜奶茶」と呼ばれている。
「鲜奶茶」は牛乳を使ったミルクティー、「原叶」は茶葉から淹れるという意味で、粉末やクリーミングパウダーで作る従来型ミルクティーとの違いを名前で宣言している。
一方、英語の開示資料では「Signature Tea Latte」という表記が使われている。
本記事では開示資料を参照しているため、後者に合わせ、ティーラテと呼ぶ。

CHAGEEの2025年の中国国内の商品取扱高では、このティーラテが約89%を占めた。
売れ筋上位3商品のティーラテだけでも全体の約54%に達する。
同社は7種類のティーラテを中核商品として位置づけている。

呼び方の使い分けには商品の位置づけが表れている。
一般的な「ミルクティー」からは、甘さ、トッピング、タピオカといったイメージが連想されやすい。
ティーラテと呼ぶことで、コーヒーラテのように、茶葉の種類と乳の組み合わせを選ぶ飲み物として見せている。

主力商品はジャスミン緑茶、大紅袍、龍井、金木犀烏龍、セイロン紅茶など、茶葉の違いで選ばせる。
商品開発の出発点はどの茶を飲むかにある。


2. 基礎茶を商品群の土台にする

30商品を茶の系統ごとに並べると、CHAGEEの商品構造が見えやすくなる。

表1:基礎となる茶と展開商品

商品説明上は、同じ茶系統や一部の原料を共有しながら、店頭では異なる商品として展開している。
たとえば金木犀烏龍なら、折桂令は茶だけを味わう一杯、桂馥蘭香は牛乳を加えたミルクティー、桂子飄飄はクリームとナッツまで載せたデザートティーになる。
CHAGEEが持っているのは一つの茶を複数商品へ展開できる商品群の土台である。

またCHAGEEは中国茶だけを使うブランドでもない。
龍井、大紅袍、プーアル、福建烏龍などの中国茶を中核にしながら、スリランカ産のセイロン紅茶や南アフリカ産ルイボスも取り込んでいる。
中国発のティードリンク設計によって、世界の茶素材を現代的な商品へ再編集するブランドと見る方が正確だろう。


3. 同じ茶で、軽い一杯からデザートまで作る

基礎茶を共有すると、商品の味だけでなく、価格と利用シーンも階段状に設計できる。

表2:桃烏龍・金木犀烏龍・セイロン紅茶の3段階

軽く茶を飲みたい人にはストレート、日常的に飲む人にはミルクティー、甘い満足感を求める人にはクリームトップ。
同じ茶葉を使いながら、別の客単価と別の利用目的を作っている。

この設計には商品開発と店舗運営の両面で利点がある。
顧客から見ると同じ茶を気分に応じて選べる。
店側から見ると茶系統や工程を共有できるため、商品数と同じ数だけ茶葉、仕込み、教育を増やさずに済む設計にしやすい。
表側では多様に見せ、裏側では共通化する設計になっている。


4. 商品開発は6つの層でできている

30商品を分解すると、CHAGEEの商品は6つの層の掛け算として整理できる。

表3:商品開発の6層

式にすると、次のようになる。

基礎茶 × 製茶・抽出 × 飲用形態 × 香り × 食感 × 利用シーン

詩的な商品名の裏側には、かなり論理的な組み立て構造がある。
春日桃桃は、桃烏龍を土台に牛乳、白桃クリーム、イチジクを重ねたデザート商品である。
一蔸雨水は、ジャスミン緑茶に炭酸と発酵青梅を加え、夏の爽快感を作っている。
軽因・伯牙絶弦は、ジャスミン緑茶と牛乳という定番の構造を維持しながら、低カフェイン化によってカフェイン摂取量を抑えたい人にも選びやすい商品へ変えた。


5. 香りをどう作り、茶から何を引き出すか

CHAGEEの商品説明では、花香、果実香、焙煎香、穀物香という言葉が繰り返し登場する。
同じ「香り」でも作り方は一つではない。

茶葉そのものが持つ香り
セイロン紅茶の木蘭辞では、青りんご、蜂蜜、ミントを思わせる香りが説明されている。
紅茶のブレンドそのものから立ち上がる香りである。

焙煎で作る香り
大紅袍を使った白霧紅塵と酌紅袍では、茶葉の焙煎によって香ばしさと花香を引き出す。
大紅袍は福建省・武夷山の岩場で作られる「岩茶」を代表する烏龍茶の一つで、焙煎香と厚みのある余韻が特徴である。

花を茶葉へ移す香り
伯牙絶弦はジャスミン、桂馥蘭香は金木犀、梔香毛峰はクチナシを使う。
茶葉と花を重ね、花を交換しながら香りを吸わせる工程を経て、花の香りは茶葉そのものに移っている。

ハーブで作る穀物香
青青糯山と雲中綠は、雲南の「糯米香葉」というハーブを使い、もち米を思わせる香りを茶へ移している。
原料に米は入っておらず、香りだけで穀物を連想させている。

実際の果汁を加える
花田烏龍には白桃果汁、一騎紅塵にはライチ果汁を使う。
茶葉が本来持つ果実香を活かした商品と、実際の果汁を加える商品を分けている点も重要である。

素材同士の組み合わせで生む香り
雲漫普洱にはチョコレートもココアも入っていない。
熟成プーアル茶と牛乳を組み合わせることで、ダークチョコレートを思わせる香りを作っている。
香りの名前より、どの方法でその香りを作っているかを見ると、商品開発の深さが分かる。

そして香りの作り方と並んで、抽出そのものも商品価値になっている。

浦東空港店のメニューには「现萃纯茶」、日本語では「その場で抽出する」という意味のカテゴリがあった。
ルイボス、白茶、花香緑茶、高山烏龍などを、CHAGEEが「現萃」と呼ぶ現代的な抽出法で提供する商品群である。

コーヒーでは、同じ豆でもエスプレッソ、ハンドドリップ、コールドブリューなど抽出方法や抽出時間によって別の商品として認識される。
ティードリンクでは抽出工程が店の裏側に隠れやすい。
現萃純茶はその工程を商品名と選択理由へ引き上げている。

CHAGEEは公式資料でも、細かく挽いた茶葉へ加圧した湯を通して濃縮液を作る「Teaspresso」と、専用の抽出機器を商品体系の一つとして説明している。
店舗には茶葉用グラインダーや専用抽出機も導入している。
現萃純茶とTeaspressoの具体的な工程は商品によって異なる可能性があるが、共通するのは茶葉の種類だけでなく、その茶から何をどう引き出すかを商品価値にしている点である。


6. 新商品を増やしても裏側を複雑にしすぎない

CHAGEEは2025年に25商品を新たに投入した。
一方で公式資料では「シンプルな中核メニュー」を重視し、供給網の集約、品質の均一化、自動化された店舗オペレーションにつなげていると説明している。
商品数の多さと裏側の単純さは両立できるという立場だ。

30商品の分析でも、多くの商品が既存の基礎茶を別の形態へ展開していた。
桃烏龍の茶がすでにあれば、牛乳を加えてミルクティーにできる。
白桃クリームとイチジクを加えれば、季節のデザート商品になる。

新商品開発を、毎回まったく新しい原料を探す作業にしない。
強い基礎茶を別の飲み方へ翻訳する。
この発想によって、顧客には新しさを見せながら、店舗側は原材料、仕込み、教育、在庫を共通化できる。
基幹商品を残し、その周辺に新しい飲み方を増やすメニューになっている。


7. 健康を軸に、選ばれ方を増やす

低カフェイン商品にも、CHAGEEの商品開発思想が分かりやすく表れている。

軽因・伯牙絶弦では、二酸化炭素を使った超臨界抽出によって茶葉からカフェインを分離し、通常版よりカフェインを約50%減らしたと説明されている。
さらにカフェインを抑えた茶に、沈香樹の葉や酸棗仁などを組み合わせ、別の香りの構成を作っている。
雲遊棲夢や雲棲夢では、石崖茶、甜茶、ジャスミン緑茶、カシス風味の果実茶を組み合わせている。

単に茶を薄くしてカフェインを減らすと、味も香りも弱くなる。
CHAGEEはカフェインを減らしたうえで別の植物素材で香りを作り直し、低カフェインという新しいカテゴリを立て、午後以降の購入理由を増やすところまで商品化している。
制約を新しい利用シーンへ変えている。

健康情報の見せ方も同じ発想でできている。
CHAGEEのミニアプリでは、商品画像の目立つ位置にカロリー、カフェイン量、低GI、低カフェインが表示されている。
消費者は、軽く飲むならストレート、甘い満足感が欲しければクリームトップ、カフェインを抑えたければ軽因シリーズ、朝なら「早」シリーズという形で商品を選べる。

ここで重要なのは、健康情報が商品開発だけでなくメニューの分類にも使われていることだ。
同じ商品でも「朝向け」「低カフェイン」「新商品」という別の棚に置けば、新しい購入理由が生まれる。
商品を増やさなくても、見せ方によって入口を増やせる。


8. CHAGEEの型は新茶飲業界の共通語でもある

中国発ティーブランドの商品開発の独創性は、珍しい材料をいくつ入れるかだけでは測れない。

CHAGEEは龍井、大紅袍、プーアルなどの中国茶を中核に置きながら、セイロン紅茶やルイボスなど海外由来の茶も取り込んでいる。
そのまま飲ませ、牛乳を加え、花の香りを移し、果汁を重ね、炭酸にし、クリームとナッツを載せる。
カフェインを減らして香りを作り直すこともあれば、抽出方法そのものを商品にすることもある。
同じ茶でも体験は何度も変えられる。
表側では多様に、裏側では単純に。
その両方を成立させているのがCHAGEEの商品開発だった。

ただし、「基礎茶に素材を掛け合わせる」という組み立ては、CHAGEEの専売特許というわけではなく、新茶飲業界に広く共通する。
そもそも新茶飲の定義自体が「お茶に果汁や乳製品などを組み合わせた新しいスタイルの中国のティードリンクトレンド」とお茶と素材の組み合わせを指している。

《中国茶叶加工》に掲載された調査では、13ブランド390商品を分析し、最も使われるベース茶がジャスミン緑茶47.95%、紅茶17.95%、烏龍茶17.44%で、この3種が83%を超えると報告している。
紅餐産業研究院は、茶飲76ブランドとコーヒー54ブランド、計130ブランドが2025年1〜7月に発売した新商品1,992品を調査し、うち茶飲新商品の茶ベースでは、緑茶が69.7%、烏龍茶が17.1%を占めた。

紅餐の報告書は、茶飲新商品の風味設計を「茶香奠基、花香提亮、果香赋能」と要約する。
茶の香りが土台を据え、花の香りが明るさを加え、果実の香りが力を与えるという意味だ。
果物系の食材を使った茶飲新商品は77.1%、花系は43.2%に達し、その花の中心はジャスミンだった。

中国メディアでは、既存の茶、果物、花、小料の組み合わせを入れ替える商品開発を「排列組合(順列組み合わせの意味)」と表現し、同質化されてしまうことの一因として論じている。

新茶飲ブランドの中での違いは型ではなく使い方にある。

多くのブランドは、新しい果物や食感の組み合わせを横へ広げ、高頻度の商品投入によって新しさを作る。
一方のCHAGEEは今回の30商品を見る限り、一部の基礎茶を繰り返し使い、ストレート、ティーラテ、デザートへ縦に展開する比重が高い。

高頻度の新商品で来店理由を更新するブランドに対し、CHAGEEは基幹ティーラテが取扱額の大部分を支え、その周辺へ新しい飲み方を追加している。

2025年2月〜2026年2月に大手茶飲ブランドの茶百道が93商品、滬上阿姨が83商品、古茗が73商品を投入したのに対し、CHAGEEは17商品で「少而精」(日本語に近い表現では「少数精鋭」)の戦略と評されている。

基幹ティーラテを中心に周辺商品を展開するメニュー構造と、ティーラテが中国国内取扱額の約89%を占める販売構成は、よく整合している。


さいごに

CHAGEEのメニューを調べる前に、上海や深圳で新茶飲の店を回った際、どのブランドのメニューも同様の素材の組み立て構造を肌感で感じた。
調べてみるとやはりそうだった。

ただし、CHAGEEの商品開発の特徴はその型を一部の基礎茶へ集中させ、ストレート、ティーラテ、デザート、低カフェインへ縦に展開している点にある。

ベースの茶が何種類あるか、一つの茶を何形態へ展開しているか、組み合わせを横へ広げているのか縦へ深めているのか。
この3点を見れば、初めて入った店でも、そのティーブランドが何を核に考え積み上げようとしているかが見えてくるはずだ。

そして、日本で同様の業態を作り出す場合にも同じ考え方が適用できる。
構想中のGAFUTEAにも、もちろん適用できる。

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主な参考資料


次に読む一本

上海の個人カフェではCHAGEE同様にコーヒーと素材を組み合わせた複雑な創作コーヒーメニューが盛んです。
こちらの記事では実際に現地で飲んだ創作コーヒーをレポートしています。


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初めて飲む方へ:メニュー日本語解説

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成長の理由を知る:戦略分析


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