【5大ジュエラー編|第1話・後編:珠玉が生んだ革新とアートの饗宴】
「さて、ユキくん。前編では“ハイジュエリーの世界”と“5大ジュエラー”の全体像をざっくりと紹介したね。今回はその後編だ。各ブランドが具体的にどんな革新的モデルやデザインを打ち出してきたのか、もう少し踏み込んでみようか」
夜ふかしをする部屋のソファで、私(ユキ)はノートPCを開きながら“うさぎ先生”の声に耳を傾ける。先生は闇の組織によってウサギの姿に変えられてしまった元大学教授で、私がまとめる「ビジネスモデル調査ノート」の頼れるパートナー。今回はTiffany & Co.(アメリカ)、Cartier(フランス)、Van Cleef & Arpels(フランス)、Harry Winston(アメリカ)、Bvlgari(イタリア)という世界を彩る「5大ジュエラー」について深く掘り下げるシリーズの第1話(後編)だ。
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●ハイブランド・ジュエリー編
①5大ジュエラー
前編 / 後編
②ティファニー
前編 / 後編
③カルティエ
前編 / 後編
④ヴァンクリーフ&アーペル
前編 / 後編
⑤ハリーウィンストン
前編 / 後編
⑥ブルガリ
前編 / 後編
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5大ジュエラーの芸術性を読み解く:革新とアートの橋渡し
【1】ティファニー(Tiffany & Co.):六本爪の革命と映画的なブランディング
●“ティファニー セッティング”が婚約指輪の常識を変えた
「ユキくん、まずはTiffany & Co.だ。『ティファニーで朝食を』の映画が有名だから女性の憧れというイメージが強いよね。でも実はあの映画以前から、ティファニーは既にブライダルジュエリーの概念を大きく塗り替えていたんだ」
先生がそう言いながら、書類のメモを私に見せてくれる。ティファニー セッティング(Tiffany Setting)――いわゆる“六本爪”の婚約指輪セッティングを指しており、ダイヤモンドを6本の爪で持ち上げるように留めることで石が最大限に光を取り込むデザインのことだ。それまでのエンゲージリングは装飾的な土台に埋め込むタイプが主流だったのを、“ダイヤモンド自体が浮いているかのように美しく見せる”斬新さが話題をさらい、世界中の婚約指輪の定番スタイルにまでなったというわけ。
私(ユキ)は感心しきり。
「これって当たり前のように見えますけど、もしかして当時は誰も思いつかなかったんですかね」
すると先生は耳をピョンと動かしつつ、「そうさ。“台座や装飾をどう作るか”に注力していた時代に、ティファニーは“石そのものを際立たせる”発想をとった。結果として“世界で最も模倣された指輪”と呼ばれるほど広まったんだ」と笑う。斬新な発想が市場を塗り替え、“婚約指輪=ダイヤモンド”という文化をアメリカから世界へ広げるきっかけにもなったという。
●“ティファニーブルー”のパッケージが映す夢とロマン
さらに“ティファニーブルー”と呼ばれるあの淡い水色のパッケージ。箱を開ける瞬間のワクワク感が大きくなり、プレゼント文化を象徴する存在になった。先生いわく、「誰もが知るあの青い箱はマーケティングとデザインが融合した秀逸なブランディングだよ。中身を見なくても“ティファニーだ”とわかるから、贈る側も贈られる側も特別な気持ちになるんだよね」と解説。
映画『ティファニーで朝食を』では、オードリー・ヘプバーンが主人公ホリーを演じ、ニューヨークの五番街にあるティファニー本店を“夢の場所”のように描いた。実際に世界中の女性が“あの店先でウィンドウを眺めたい”“あの青い箱をもらいたい”と憧れを抱くようになったのだから、そのブランドイメージの影響力は計り知れない。
「ティファニーはブライダルに強いだけじゃなく、“キー”や“ハート”モチーフなど、気軽に買えるシルバーアクセサリーのラインも充実させているんだよ」と先生は耳をピョコっとさせながら補足。「若者が入りやすい価格帯から、オーダーメイドのハイジュエリーまで幅広いレンジをカバーしているから、多くの客層を取り込むビジネスモデルが成功しているんだ」
ティファニーはハイジュエリーの分野でもパリの芸術に触発された作品を出してきたし、アールデコ期には直線的・幾何学的なデザインを手掛けるなど、かなり革新的な実験をしている。ただ、一般認知としては“ブライダルリングや軽やかなイメージ”が強いのも事実。先生は「実は奥深い歴史があるけど、そこをうまく隠さずに若者にもアピールしてきたのがティファニーの上手なところだね」とまとめた。

【2】カルティエ(Cartier):アールデコ様式の担い手、“王の宝石商”の革新力
●“王の宝石商、宝石商の王”と呼ばれる由来
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