サンタ・マリーア・マッジョーレ教会の鐘が恋しい
ローマのサンタ・マリア・マッジョーレ教会の鐘の音が、なぜか最近、胸の奥に響いてくる。
ちょうど三年前の今頃、自分の不手際でローマに取り残されたとき、この教会の隣にある小さなホテルに二泊した。観光客でにぎわう季節、なかなかホテルの空きがなくて、ようやく見つけた場所だった。しかも二日ごとに宿を変えなければならず、ちゃんとアメリカに戻れるのかと心配ごとに心が曇ることもあった。
けれど、街のどこかから教会の鐘の音が聞こえると、波動が上がるかのごとく胸の内が温かくなった。「すべて大丈夫!」という安心感に包まれる気がした。
サンタ・マリア・マッジョーレ教会の鐘の音は、なかでも特に忘れがたいのだ。
泊まっていたホテルはすぐ隣にあり、その音量にびっくりした。窓を開けると、古びた深紅のカーテンを揺らすように秋のそよ風が吹き込み、ガラーン、ガラーンという音色が一気に部屋へとなだれ込んでくる。それはもはや音を越え、振動そのものとなって骨の奥まで染み渡り、今もなお消えることなく私の中に残っている。

まるで映画のワンシーンに迷い込んだようで、その響きにただ身を委ねて、心が満たされていくのを感じていた。とても幸福なひとときだった。
今の私が暮らすアメリカの街にも、歩いて行ける範囲に四つの教会がある。どれも百年の歴史を持ち、アメリカでは十分“古い”に入る建物。けれど、そこから鐘の音が響いてくることはない。それが、ヨーロッパとの大きな違い。
フランスに滞在したときも、ボルドーや地方の小さな町で、教会の隣のホテルに泊まった。散歩の途中でも、カフェで寛いでいるときでも、鐘の音はいつも町とともにあった。
鐘の音は、ヨーロッパの町並みの“呼吸”のような存在。特にカトリックにおいては「神を思い出す合図」として、人々を祈りや内省に導いてきた。だからこそ、その響きに耳を澄ませれば、自然と祈りや感謝の気持ちに立ち返り、愛に戻ることができる。
住民にとっては「ちょっとうるさい」と感じる人もいるかもしれない。
でも、工事のドリルやクラクションの喧騒に比べれば、ずっと優しい。むしろ、街に溶け込むリズムのように響いている。
でも、そんなふうに、“今ここにある幸せ”を思い出させてくれるリマインダーは、世界のどこにいようとも、たぶん、日常のあちこちに散らばっている。あなたにとってのその響きは、どんな瞬間でしょう?
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