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シン・京都市長 信長 第一話

【あらすじ】
2024年京都市長選、秘密と野望を胸に一人の男が立候補した。小田信長25才。地盤(組織)・看板(知名度)・かばん(資金力)無し、ついでに学歴も無し。
京都市は「オーバーツーリズム」「財政難」「少子化・人口流出」3つの大きな問題を抱えている。
信長は、当選確率1%の泡沫候補とみられていたが、巧みな選挙戦と大胆な公約で次第に注目を集めていく。若き候補者は、京都市長になれるのか、秘密とは何か、野望とは何か、

8月16日、京都で五山送り火が行われる。お盆に帰ってきた精霊(祖先の霊)を冥府(あの世)に送る伝統行事で、夜8時から「大文字」「妙」「法」「船形」「左大文字」「鳥居形」と東から西へ順に火が灯される。仏教では西のはるか彼方かなたに極楽浄土があると信じられている。

この日、京都市の未来に関わるニュースが報じられたが、ほとんど誰も気にかけなかった。それよりも、京都市民はどこで送り火を見るかに関心があった。

「現職の京都市長が引退し、16年ぶりに新人どうしの争いになると予想されます。来年の2024年1月21日告示、2月4日開票予定です」

祇園の中華屋でテレビを食い入るように見る若者がいた。小田信長おだのぶなが25才。5年ぶりに帰国し初めて見たニュースがこれだった。

「どうしたんすか?」信長の顔を横からのぞき込む丸顔の男。後輩の木下秀郎きのしたひでおだ。中学からのブレイクダンス仲間で一時は本気でプロを目指そうとしていた。愛想が良くお調子者でいつも信長のそばにいる。

「京都市長に立候補する」宣言するかのよう静かに答えた。

「またまた~、冗談を」とは言わなかった。木下は信長の性格をよく知っている。自ら信じる正義に厳格で決断したら行動は早く迷いが無い。

木下は、すぐにスマホを取り出し選挙について調べだした。
「選挙は、地盤(組織)・看板(知名度)・かばん(資金力)が無いと厳しいみたいっすよ」
もちろん、信長にはどれ一つ無い。
「そもそも、中卒でも立候補できるんすかねぇ」木下はさらに調べる。

中卒‥‥忘れもしない7年前の出来事。あの日が信長にとって人生最大の転換点だったのかもしれない。

高校3年生の3学期、しつようにアカハラ(アカデミックハラスメント)をしてきた数学教師を殴りそのまま退学したのだ。卒業まであと3週間の出来事であった。

翌日、信長はキャンプ道具を自転車に載せ、なけなしのお金を手に日本一周の旅に出た。京都から西へ時計回りに、途中バイトをしながら、1年かけて。

小田信長は、子供の頃から名前の読み方が同じ「織田信長」に強い関心があった。織田信長ゆかりの地へは積極的に立ち寄るようにした。

日本一周の終盤、織田信長生誕の地とされる、愛知県の勝幡城しょばたじょう跡地へ行ったときのこと、説明の駒札を読んでいると、今まで体験したことのない強烈な眠気に襲われその場に倒れ込んでしまった。

吉法師と呼ばれていた幼少期、濃姫との結婚、桶狭間の戦い、姉川の戦い、小谷城の戦い、長篠の戦い、本能寺の変‥‥

カミナリが全身を貫くような感覚で信長は目がさめた。ハッ!全身汗だくでめまいがする。夢?幻覚?‥‥‥‥いや走馬灯だ!あの時見た、本能寺で燃え盛る炎の中、自害する直前に見た走馬灯だ!!!

俺は、本当に織田信長の生まれ変わりなのか?半信半疑、夢とは明らかに違うリアルな記憶に戸惑う。ふと、殴った数学教師の顔が頭によぎった。この自転車旅に出るきっかけになった人物だ。

「アイツは‥‥荒木村重!」思わず声に出た。

荒木村重は、織田信長の元家臣、謀反の疑いをかけられ遁走した。本人は生き延びたが、妻子はじめ荒木一族と家臣は斬首された。

まだ恨んでたのか‥‥。今まで生きてきた18年間の記憶と過去の記憶がグルグルと頭の中を駆け巡る。そういえば、思い返してみても、家来やかつての敵、自分の周りには過去に出会ったことのある人物が数人いたことに気づく。

何よりも、木下、木下秀郎は…木下藤吉郎!野郎…今まで感じたことのない怒りがフツフツと湧き上がる。のちの豊臣秀吉だ。

少しふらつく体を起こし自転車をこぎ出した。生まれ故郷であり死んだ因縁の地でもある「京の都」へ。


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りょうたろう 京都生まれ・京都育ちの京都人。 2005年から「京都観光研究所」を運営しています。 https://www.kyotokk.com/ https://blog.kyotokk.com/