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タフテナーたち

アップテンポではムンムンの熱気と無軌道なアドリブをスピーカー越しに伝え、バラードでは時にスケベに時に男泣きするタフテナー達。今日はそんなミュージシャンを以前のインストオルガンのように紹介します。ちなみに本文中ではタフテナーとコテコテ、ホンカーをほぼ同義として扱っています。また時代別で区分していますがザックリしたものなのであくまで参考程度にお願いします。あとはコテコテとはなんぞというとかなり難しいですがざっくり言うとジャズやブルースの要素がある暑苦しくてノリのいい(=ソウルフル)音楽って意味合いで使われるかなと思います。とはいえレッドツェッペリンはブルースを基調とした暑苦しいハードロックですがコテコテではないし、ロックンロールがコテコテじゃないかと言うとロックやロカビリーはコテコテじゃないしチャックベリーも微妙だけどボディドリーはコテコテ、JBはファンクでコテコテだけどP-Funkはコテコテとは微妙に違う気がします。長々と書いた内容を台無しにする結論になりますが概念や定義がはっきりしたジャンルというよりフィーリングや聴いていて楽しければコテコテ。つまりその概念はコテコテを好む人の人数分あると言っていいと思います。

ルーツ~初期

スウィングからビバップへ移り変わる時代。コールマンホーキンス、レスターヤング、ベンウェブスター、チューベリー達が活躍した時代です。ジャズの素養がある人物とR&B系の高度なテクニックではなくパフォーマンスと出たとこ勝負のアドリブで魅せるタイプに分けられます

アーネットコブ
彼は足の不調に悩まされ続け、長いこと松葉杖なしでは歩けなかったといいます。しかし演奏からはそんなハンデは感じません。そして彼こそがコテコテで有名なテキサステナーの父親。南部の豪快なテナーはケガも病気も何のその。故郷でコテコテのおいしい所をごった煮したチタリンシャウトがおすすめです。

ベンウェブスター
ややメタボ体型で喧嘩っ早く大酒飲み。そんな古き良き?ろくでなし親父がベンウェブスターです。アップは比較的大人しめですがバラードにおける咽びは後世に多大な影響を与えたはず。エマーシーからでてるR&Bよりの演奏中心の二枚組やリバーサイドから出ているジョーザヴィヌルとの共演盤がコテコテ的にはおすすめです。

ジーンアモンズ
ブギウギピアニストのアルバートアモンズを父に持ちジャグの愛称で尊敬されたジーンアモンズ。親父顔が多いコテコテ界で一番の強面です。彼の作品は可能な限り集めて聴くのが正解でしょう。

イリノイジャケー
JATPにてガーガーピーピーととんでもないアドリブを披露し評論家を呆れさせたイリノイジャケー。彼もジーンアモンズと並んで元祖コテコテと言えるでしょう。初期の向こう見ずなアドリブも中期のコテコテなソウルジャズも後期の円熟したバラードも素晴らしいです。

アイクケベック
ミュージシャンとしても裏方としてもブルーノートを支えた彼はキャブキャロウェイやチューベリーなどエンタメ色の強いビッグバンドを渡り歩いたタフテナーでした。個人的にはアップよりスローで見せる咽ばないソフトなトーンが大好きです。特にフレディローチとの共演盤はくどすぎないソウルジャズになっていてとても好きです。

ジミーフォレスト
ホンカーなら吹けて当たり前ともいわれるナイトトレインの作者。コテコテながらエリントン楽団にもいた人物。とは言えなんといってもナイトトレイン!

サムテイラー
演歌歌手ですが前職はジャズミュージシャン兼セッションミュージシャン。アップテンポでのドライブ感あふれるブローや抑制された咽びは巧みです。過剰に咽ばせるムードテナーばかり作らせないで日本のレコード会社にセンスがある人がいれば…と思わずにはいられません。酒井潮さんとか吾妻光良さんと組んだら面白かった気がします

エディ"ロックジョー"デイヴィス
「子供の頃から飲む買う打つにあこがれていた。そんな生活をするのは音楽をやるのが手っ取り早いけどドラマーは片付けがめんどくさいし、目立たない楽器はそんな生活ができない、だからテナーにした」そんなことを言ってしまう古き良き?ダメ男です。メタリックに歪みながら短い音色を繰り出す荒々しいタフなテナーとぶっきらぼうな泣きのバラードがかっこいい。まさに漢です。

ビッグジェイマク二ーリー
この時代のサックス奏者の特徴の一つにヒット曲があるというものがあります。彼の「ディーコンズホップ」もそのひとつ。蛍光塗料を塗ったサックス、派手な衣装、カウンターによじ登ったり寝っ転がるなどパフォーマンスも派手。一時期は音楽で食えず郵便局員をしていたそうですが復帰後はおじいちゃんになっても年齢的に無理のない範囲で派手なパフォーマンスを続け、今はヒップホップの時代だからと自身の曲をヒップホップにアレンジした作品をだすなど生涯流行に敏感なエンターテイナーでした。

ウィリスジャクソン
ホンカーなら一癖あって当たり前みたいなとこがありますがこの人はゲイターホーンなるオリジナル楽器を演奏します。特に秀でていたり個性的な何かがあるわけではないけどやっぱりいいなぁ…と思わせてくれます。たくさん作るプレスティッジやミューズにいたため多作家でもあります

クリフォードスコット
クリフォードブラウンでもクリフォードジョーダンでもありません。誰?という方も多いと思いますがビルドゲットのバンドのテナー奏者であのHonky Tonkでもテナーを吹いています。いまではほとんど注目されないマイナーな存在ですが忘れられるにはもったいない一人です。確証はないですがフルート演奏はローランドカークに影響を与えたのではと勝手に思っています

ハルシンガー
48年に初シングル発表ということで古参の一人ですが最近まで精力的に活動していたようです。(はっきりいつまでかは分からないですが2020年に100歳で亡くなっています。)48年いきなりコーンブレッドでR&Bチャート1位とかなり順調な滑り出しです。アリスタからサヴォイの録音のコンピがでていますがホンカー編にてハルも収録されています。これが一番入手がしやすいLPと思います

ビバップ~ファンキー

この時代になると皆ある程度ジャズの素養を持ち出します。さらにソロ活動よりセッションミュージシャン、ビッグバンドではなくスモールコンボ。非コテコテであってもタフテナーとしての経験を積んだ人物など時代に適応していきます。

デイヴィッド"ファットヘッド"ニューマン
レイチャールズのバンドメンバーとして有名な彼。王道のテキサステナーというべき演奏です。ウィントンケリーらとのハードバップからジャックマクダフとソウルフルにぶつかったりと器用でもありますが、それもそのはずでニックネームのFatheadは馬鹿や愚か者という意味。これは学生時代ブラバンに所属していた彼がまだ教わっていない曲を楽譜を読まずに完ぺきに演奏していたため皮肉としてつけられたものなのです。レイチャールズの伝記映画でおそらくニューマンをモデルにしたバンドメンバーが女の子に「なんであだ名がファットヘッドか教えてあげるよ」といって部屋へ誘うシーンがあったので長らくアソコが大きいみたいな下ネタだと思っていました。ソロはもちろん70年代のハービーマンや80年代のジミーマクグリフとの共演も素晴らしくて良い演奏は決めきれないですが頑張って一曲選ぶならやっぱりHard Timesです。


ドンウィルカーソン
レイチャールズのバンドの三大サックス奏者の一人。呑気な音色が実にソウルフルですが薬物でキャリアを棒に振ったことが惜しまれます。特にPreach Brotherはあまりの呑気さにソニークラークすらシンプルでソウルフルな演奏になっています。

ギィラフィット
おそらくアメリカ人以外のテナー奏者でもっともコテコテな男。フランス人である彼はフランスで初めてオルガンコンボを結成した人物でこの国を訪れたコテコテミュージシャンとも多く共演しています。フランスのコテコテレーベル「ブラック&ブルー」に残った演奏が配信されていてかつ再発も多いので一番聞きやすいと思います。

Jrウォーカー
モータウン1の荒男。ジャズの素養は低く(ほとんどない)ホンカーらしい演奏。上手さではなく勢いで聞かせる歌もいい感じです。しかし悲しいことにこの系統は彼でとだえてしまいます…ちなみ一部の演奏はオールスターズではなくファンクブラザーズが演奏しているもののあり特にライブでは悪いファンクブラザーズの演奏が聴けるといううれしいおまけつきです。

キングカーティス
彼もニューマン同様高いジャズ素養と歌物のソロで印象を植え付けるソウルを合わせもった人物。彼の凄さを知るには61年のLive In New York(音質があまりよくない)と71年のフィルモアでのライブを聴けば一発です。またジャズよりですがプレスティッジからでたジミーフォレスト、オリバーネルソンと三つ巴のバトルをするSoul Battleも異色作でいい感じです。いち奏者に留まらずタレントスカウト、アレンジャーとしても活躍しニューソウルの発展にも寄与しただけに早すぎる死がつくづく惜しまれます。

スタンリータレンタイン
バップ~ファンキー~ソウル~フュージョン~アコースティック回帰とタフテナーを象徴するような生き方をした男。
以前詳しく紹介しているので詳しくはそちらを参照してください

ファンキー~ジャズファンク

この時期はフリーやモーダルが流行った時代。それの反動からかタフテナーたちは時代に逆行するかのように泥臭さを前面に押し出すようになります。さらに欧州へ移住するものもでてきます。欧州移住組の大半はハードバップの再現やフリージャズながらも中には新たなコテコテに挑戦するものもいました。

エディハリス
いきなり映画「栄光への脱出」のテーマ曲のジャズアレンジがヒット。さらにFreedum Jazz Danceはスタンダード化。レスマッキャンとの共演も大ヒットとかなり運のいい人物です。しかしエレキサックス、トランペットに無理やりサックスのマウスピースを付けて吹く、漫談のレコードを出すなど頭の固い人物からは馬鹿をやっているようにしか思えないこともしたせいか、評価に波のある人物でもあります。しかしそんなところに芸能魂を感じます。

レッドホロウェイ
ジャックマクダフの黄金カルテット(通称ヒーティングシステム)のテナー奏者。ジョージベンソンによると癖の強い人の揃ったバンドのなかで新人の彼に優しかったりといい人だったようです。有名になったのはこのあたりなのでこの区分で紹介しましたが1948年にはもうプロとして活動していたらしいのでかなりのベテランです。

ヒューストンパースン
ソウルジャズの最後の世代にあたる彼。プレスティッジにソウルジャズやジャズファンクをたくさん残しています。エマーシー時代はディスコフュージョンが多いですがコテコテを忘れてはいませんでした。80年代以降の円熟したタフネスや音楽監督を務めたシンガーのエッタジョーンズの作品も必聴です。

ファッツテウス
アーサーテウスとも呼ばれておりジミーマクグリフやオドネルリーヴィのバンドでテナー奏者や編曲をやっていました。無名ですがCTIからの唯一作は再発CDすらプレ値のつく人気作。余計なオーケストラがないことやグラントグリーンの参加がこの作品を人気にしているかもしれません。


クロスオーバー~フュージョン〜ファンク

この時代には多くソウルフルなテナー奏者がソウルジャズやジャズファンクから移ってきます。また新たにデビューした者もいますが次第に洗練さやポップさが重視され相容れないジャンルになっていきます。しかし80年代のアコースティック回帰。90~00年代のレアグルーヴ、クラブジャズブームによって再びコテコテジャズも再注目されますが残念ながらかつてのようなスタイルのスターは生まれていません。

ウィルトンフェルダー
60年代の頭には既に活動を初めていたのでここで扱うのは違うかもしれませんが60年代後半にクルセがジャズロック、ジャズファンク化していくのに合わせて彼もルーツであろうテキサステナーに忠実なタフな演奏が増えたように感じます。アップなら67から74年、メロウなら75から80年頃にいい演奏が集まっています

グローヴァーワシントンjr
スムースでクリスタルな彼ですが活動初期はかなり骨太なテナーを吹いています。KUDUやCTI初期。特にCTIオールスターズでのライブ演奏がかなりタフ!

アーニーワッツ
彼もポップなイメージですが初期はタフより。なんとファーストアルバムのプロデューサーはウェインヘンダーソン。参加作を調べるとジャズファンク、クロスオーバーの名盤が並びます


レニーピケット
TOPのテナー奏者でバンド活動はもちろんセッションミュージシャンとしても活躍。どちらかというとバンドメンバーであること、バンドアンサンブルの一人として時にソロを取るというスタイルであることがゆえにこうした視点からは語られない人物ですが演奏自体はこうしたスタイルに入る人物です。


コテコテを感じる人たち

一般的にはコテコテではないもののそのような要素がある、一部そういった作品も残している人物を紹介します

ジョニーグリフィン
ハードバッパーでハードなブローを披露するもののコテコテとは違った感じ。しかしホンカー経験者でGrab Thisはポールブライアント、ジョーパス参加のソウルジャズでかなりコテコテです

ローランドカーク
この方をコテコテだけにカテゴライズしたら怒られそうですが人間ジュークボックスである彼はコテコテも得意。もはや細かいジャンルなど無意味なカークワールドに呑まれましょう

マイケルブレッカー
コルトレーン以降の白人奏者らしくテクニカルな演奏が持ち味ですがタフテナーからの影響も受けておりソウルフルなミュージシャンの作品でのバッキング、間奏部でのソロではそうした面が垣間みえます。

ジェロームリチャードソン
どんなスタイルもそつなくこなす人。そんなイメージですがローランドカークばりのマルチリード奏者でマイケルブレッカー登場以前は最も忙しいテナー奏者だったに違いないです。そんな彼だからコテコテジャズへの参加も多数。

プラスジョンソン
彼もジェロームリチャードソンタイプの奏者。ただジェロームより参加作品的にポップよりな印象を受けます。ただ本人の演奏はポップというわけでもないです


アルト編


アルトもコテコテはいますかここでは5人だけ紹介

ルードナルドソン
かつてドナルドバードはルーの演奏を聞き老人のようと評したそうです。それはジョニーホッジスやエディ"グリーンヘッド"ヴィンソンに影響を受けまくった演奏をしていたから。パーカーがでてきてフリーやモードが吹き荒れる時代にR&Bやスウィング、バップ初期風の演奏をしていたら年寄りと言われても仕方ないでしょう。しかしこのあとのコテコテに乗ってそんなスタイルが最新となり、さらにレアグルーヴ、クラブジャズで最注目されるのだから面白いものです。

キャノンボールアダレイ
優れたハードバッパーですがファンキーも得意としています。特にデイヴィットアクセルロッドと組んだ作品やジョーザヴィヌルがエレピを弾いた作品はどれも一層ソウルフルで最高です。

ハンククロフォード
彼もまたレイチャールズのバンド出身。テナー顔負けのソウルフルなアルトは世界一。さらにメイシオパーカーやデイヴィッドサンボーンにも多大な影響を与えテナーでは絶えてしまったスタイルを比較的近年まで残すことになりました

メイシオパーカー
この系譜の奏者では彼が最後ではないでしょうか?JBやPFunkのバンドに所属しプロ30年目にして初めて自分の手でやりたい作品をリリースした遅咲き?です(一応バンドの課外活動的な作品はリリースしている)。本人の演奏は60年代初期くらいのスタイルで止まっていますが、バックの演奏や熱で古く感じないのがコテコテがいいなぁと思える所以のひとつ。
 キャンディダルファーもスタイル的にはほぼこの系譜ですがどちらかと言うとプリンス以降のR&Bの影響を受けたエレクトリックなサウンドがバッキングなせいか猥雑さや下世話さに欠けるように思えます。

エディ"グリーンヘッド"ヴィンソン
つるっぱげだからクリーンヘッド。しかしカミソリで毎日そり上げていたそうなので養殖ハゲです。BBキングのクセを強くしたような声にしゃくり上げるような節回しが強烈なボーカルも良く披露していてアルトより歌の方が個性的かつコテコテ。ちなみにコルトレーンとレッドガーランドはヴィンソンのバンド出身です。人気があった頃のは入手が難しいかボリューミーすぎる編集版が多いのでここはパブロからリリースした作品を推します。