三題噺ショートショート_手紙
落語家もすなる三題噺といふものを、コジも、してみむとてするなり。
企画もの、大の苦手なのである。
どんな親しい人の企画ものでも、なかなか素直には乗れない。
私は、「ルール」とか「決まり事」とか「期限」とか「締め切り」とかという制限事項が世の中で一番嫌いなのだ。
いくつになろうが、聞かん坊の悪ガキ。それが、私、kojuroだからである。
え?落語?三題噺?ヤスさん?

心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、別名、天の邪鬼志朗だろ。「もし書けなかったとしても、それはそれでOK。でも、やってみなきゃ、もったいない!」なんてこと言われたら、逆に書きたくなるんじゃないの?
なんのはなしですか。

わかったよ、書くよ。書く書く。書けば良いんでしょ、リトル。それで、いいんだろ?
ブラックホールよりも重い重い重い腰を上げて、半ば自暴自棄に筆を執る。
さて。では、三題噺ショートショート「手紙」まいりましょうか。

最初のデートは王子動物園。俺の庭だ。
猿山が好きで。遠足も写生も、ずっとその周りで過ごした。
そのことを話したら、澪はクスクス笑っていたっけ。
俺の大学の隣の女子大生で。幸哉主催の合コンで知り合った。
大人しい性格で。隅っこに一人でいたから、俺から声をかけたんだ。
帰り際に、売店でアクセサリーを買った。
あの日、応援に来てもらったんだ。
俺の逆転サヨナラホームランでゲームを締めたが、スタンドに澪の姿は無かった。
一月ほどしてから、幸哉が手紙を渡してくれた。
あの日、お父さんが倒れ。程なく会社が行き詰まり。学校もやめて遠くに引っ越したのだという。
なくしたピアスを探したが、どうしても見つからなかったらしく。最後はこう結んであった。
See you again.
同窓会で、ひどく幸哉に叱られた。
別れの手紙だと思っていたあれは、また会いたいという意味だったんだと。
そういや最後に、小さな字で数字が書いてあった。
俺ってほんとに、バカなヤツだった。

ヤスさんの三題噺企画の、そんなこんなを家内と語らおうとして後ろを振り向くと、家内が笑って言った。
まだ、あの三題噺続けてるの?じゃ、それにちなんで、マッサー(注1)三倍返しで、ね。ペペン、ぺンッ!
……。
マッサージをすると家内は、上機嫌になる。
家内が上機嫌だと、我が家は、明るくて平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。
俺にしちゃあ、三題噺も、けっこう書いたは書いたが。笑

