あくまき 南国物産 鹿児島市 灰汁の笹巻きは中国潮州伝来 和菓子なスクチャイ308 2026.07.08
和菓子なスクチャイ308 鹿児島県 > 鹿児島市
※くまの身長は7.5cm。大きさの参考に。
あくまき(ちまき) 南国物産 鹿児島市


<序>
これも仙台駅の催事場の九州物産展で買ったものだ。
前回書いたが、これだけいろいろまとめて買えば、そりゃあ店のおばちゃんも喜ぶだろうし吾輩のエコバッグも重くなるってもんだ。
ちなみに価格は税込で980円だった。
1.「あくまき」「灰汁の笹巻き」として8メーカー目
これまでに鹿児島県の「梅木商店」(南九州市)や「迫田食品」(霧島市)のあくまきを既に体験しているので3社目の「あくまき」だ。
また、巻く原材が違うものの同じ原理で作られる山形県庄内(鶴岡市)の「灰汁の笹巻き」は5メーカーのものを食べていて、さらに現地では、現役の笹巻きの作り手である80幾歳のおばあちゃんに直々に作り方を教わった。
それぞれの「あくまき」「灰汁の笹巻き」については以下の記事をご参照。
「あくまき」梅木商店(南九州市)014 2025.06.05
「あくまき」迫田食品(霧島市)027 2025.07.11
「笹巻き(三角巻き・こぶし巻き)」(鶴岡市・温海)013 2025.06.04
「灰汁笹巻き」またのや(温海)034 2025.07.19
「灰汁笹巻き(温海こぶし巻)」うなぎ若林(鶴岡市)059 2025.08.04
「片貝のささまき」JA鶴岡もんとあ〜る(鶴岡市)060 2025.08.04
「灰汁の笹巻き」講習会(鶴岡市)288 2026.04.25
なお、庄内の笹巻きは灰汁を使ったものと灰汁を使わないものがあるので、吾輩は区別できるように特に「灰汁の笹巻き」と言うようにしている。
2.「あくまき」とは
以前の記事に書いているので今回はさっとおさらいだが、あくまき(灰汁巻)は、もち米を木灰から採った灰汁(あく)に浸し、竹皮で包んで長時間煮込む鹿児島伝統の保存食だ。灰汁のアルカリ性によってもち米の細胞が分解され、あの独特の琥珀色の飴状の食感と香りが生まれるのだ。
詳しくは庄内あくまきを含み、上記にリンクした以前の記事を参照して欲しい。
3.南国物産の「あくまき」
鹿児島市に拠点を置く「南国物産」のあくまきは、伝統的な手作り感を残しつつ、お土産や贈答用として誰もが食べやすい洗練された仕上がりに工夫されているのが大きな特徴のようだ。
以下は吾輩が食べてみた感想を含むが、南国物産の「あくまき」はクセを抑えたマイルドな灰汁(あく)加減で、あくまき特有の灰汁のエグみや独特の匂いが強すぎず、非常に上品でまろやかに抑えられているように感じた。他社の「あくまき」で少し感じた、灰汁の風味がガツンと効いた昔ながらの野趣あふれるタイプが苦手な人でも美味しく食べられるだろう。
他社の「あくまき」と並べて同時に食べていないので他との微妙な違いまでは述べることは出来ないが、吾輩の記憶によると、まずは以前に食べた鹿児島県の2社の「あくまき」は庄内の「灰汁の笹巻き」に比べて灰汁の香りが結構強めに感じたのだ。それらと比べて今回の南国物産の「あくまき」は色や食感は似ていたものの灰汁の独特の香りは抑えられているように感じた。
また、もち米の粒感が程よく消え、非常に伸びが良くツルンとしたなめらかな口当たりに仕上がっていると感じた。
その感じは、庄内のものも含めて他社の「あくまき」とよく似ているが、細かく見ると今回の南国物産の「あくまき」が一番柔らかく、まるで濃い色が着いた高級わらび餅のように感じた。
付属品として「特製きな粉(砂糖と塩の絶妙な配合)」が同封されていて、竹の皮を剥いてそのままかけて食べられたので便利で量も適当であった。


4.他社(梅木商店、迫田食品)との特徴の違い
以前書いた記録と自身の記憶によるものだが、以下は、他社の「あくまき」の特徴だ。
梅木商店(南九州市)
薩摩川内や南九州市の伝統的なスタイルに近く、灰汁の風味がしっかり効いた「昔ながらの素朴で力強いあくまき」で、もち米の弾力と強いコクが特徴だった。
迫田食品(霧島市)
霧島の綺麗な水や素材にこだわったような、非常に透明感のあるもっちりとした食感だった。灰汁の加減も絶妙で、地元ファンも多いとのことだった。
南国物産(鹿児島市)
今回のメーカーだが、仙台駅の催事場で買えたということもあり、このメーカーの「あくまき」は県外への発送やお土産物としても大定番とのことだ。上記の2社に比べると「ツルッとなめらかで灰汁のクセが控えめなタイプ」と言えるだろう。
5.あくまきの歴史と伝統
以前も書いたので簡単に述べるだけにするが、あくまきの歴史は古く、安土桃山時代の関ヶ原の戦いや、朝鮮出兵の際に島津義弘が薩摩武士の携帯兵糧として持参したのが始まりとされている。
強いアルカリ性の灰汁で煮込むことで殺菌され、雑菌が繁殖しにくいため、常温で何日も傷まず持ち歩くことができた。
鹿児島では現在でも男子の健やかな成長と武運長久を祈る「端午の節句(5月5日)」のお祝いに欠かせない縁起物として親しまれており、端午の節句の風物詩となっている。
6.食べ方
さすがに県外向けの商品だけのことがあるようで、先に書いた調合されたきな粉が付属していたり、商品の謂れや食べ方まで書かれた紙片が付属していたので、購入から食べるまでそのままで完結する「親切パッケージ」だと感じた。
南国物産の「あくまき」は、竹皮をむいて包丁で切ろうとすると粘り着くため、「竹皮を細く割いた紐」または「糸」をクルッと巻きつけて引っ張るように切ると綺麗にひとくちサイズにカットできるのだそうだ。

吾輩は紙片に書かれていたように「竹皮の端を5mmくらいの幅に割き、そのひもをあくまきの下からくぐらせ、好みの大きさに交差させて切ると、包丁等を使う手間が省ける」に従ってやってみようと思ったのだが、まず竹皮の包みを写真のように解いてみて、「竹皮の端を5mmぐらいに割くって??」「そのヒモをあくまきの下にくぐらせるって??」の意味がわからなくなって結局吾輩は説明通りには出来なかった。
吾輩は用意していた果物ナイフで一部を削いで皿の上に落としてきな粉をかけてみたのだが、それも面倒になって竹皮の上にあるまま、そこにきな粉をかけて、あとはスプーンで掬って食べた。箸でも簡単に切れるので食べやすいのだった。




つまり他人と分けて食べるならともかく、自分ひとりで食べるなら豪快に1棹そのまま食べてもいいのではないかと思った。
最初はいっぺんに1棹食べてしまうのは多いかなとは思ったものの、吾輩はこの時、食後のデザートとして食べていたのだが、気付くとペロリと1棹を食べてしまっていた。つまりそれほど軽いものなのだった。餅米が原料でもつるりとしたわらび餅状なのでいくらでも軽く食べられるのだった。
7.常温で日持ちする高級わらび餅だ!
これまでの「あくまき」でも「灰汁の笹巻き」でも感じていたことだが、中のもち米にはもはや粒感がなく、しかも透明感のある柔らかいプルンプルンの形態なので、これはもはや高級わらび餅か、それ以上の和菓子だ! と今回も感じたのだった。
説明にも書いていたように、食前1-2時間前に冷蔵庫で冷やして食べるとより美味しいと言う意味がわかった。
吾輩はそうせずに常温で食べてしまったのだが、確かにこの形態でこの食感であれば冷やすとより美味しいはずだと納得した。
そうなればますますわらび餅ではないか!
一般に餅米を使った菓子類は常温保存で冷蔵庫保存は禁止だ。どうしても保存したければ冷蔵よりも冷凍だ。これはでんぷんの美味しさの品質を保つためで、ご飯でもパンでも同じことだ。
しかもこのわらび餅、真空パックされていることもあるが、常温で数か月も日持ちするのだ。
庄内の「灰汁の笹巻き」でも真空パックされた長期保存できるものが売られていたが、食べる前にはパックごとではあるが茹でなければならなかった。
庄内の方は一手間かかるのだが、そのホカホカした笹巻きにきな粉をかけて食べるのはとても美味しいのだった。
しかし今回の南国物産の「あくまき」は、まず常温保存が可能で、しかも開封後直ちに食べられるのだ。さらに茹でるのではなく、反対に冷やして食べることもおすすめされているのだ。
このことで、鹿児島県の「あくまき」は庄内の「灰汁の笹巻き」よりも多く水を含みプルンプルンの度合いが高く、柔らかい状態になっているということが言えそうだ。
鹿児島県の「あくまき」については製法を詳しく知らないのだが、吾輩が体験している庄内の「灰汁の笹巻き」よりも、「あくまき」は濃い灰汁を使うとか、浸漬させる時間が長いとか、はたまた灰の種類が違うとか、餅米の品種が違うとか、何か相違点があるはずだと想像している。今後追究してみるつもりだ。
8.中国潮州伝来の可能性
鹿児島県の「あくまき」も山形県庄内の「灰汁の笹巻き」も、それぞれが郷土の食文化で伝統食品だ、と言うことになっていて、吾輩もそれには異存はない。
しかし、最近吾輩はタイのバンコクに同じような「灰汁の笹巻き」を作っている菓子屋を見つけた。(このことはすでに庄内笹巻きの記事に簡単に追記してある。以下を参照。)
「灰汁の笹巻き(あくまき)は中国伝来の可能性大」 (「灰汁の笹巻き購入会」の最終章に追記)288(2026.08.09追記)
そこはThai-Chinese、つまり何代も前の太古の時代に中国から移住してきた、いわゆる華僑が経営しているお菓子屋さんだ。
現地での灰汁の笹巻きの名前はカオ・トム・ダンKhao Tom Dang(ข้าวต้มด่าง)だ。
※資料によるとギーチャーン(กีจ่าง)または カノムチャーン(ขนมจ่าง)と呼ぶ場合もあるらしい。
我々が鹿児島の「あくまき」や庄内の「灰汁の笹巻き」が伝統食と言うように、タイのその店でももはやタイの伝統食と言えるほどの歴史を持っているのだ。そしてその歴史は日本の鹿児島の「あくまき」や庄内の「灰汁の笹巻き」よりももっと長そうなのだ。
彼らの過去の祖先を辿ると、どうやら中国潮州が先祖のようで、つまり中国潮州ではもともと「灰汁の笹巻き」があったことになり、現に中国潮州には今もあるという情報を得ている。
もともと言語もそうだが、日本は歴史的に中国の文化の影響を存分に受けて来ているので、日本の伝統食もずっと以前は中国に端を発するということは珍しくはないはずだ。
「灰汁の笹巻き」については古い順番で言うと中国潮州がおそらく最初で、そこで誕生した可能性が高く、そこからタイなどの東南アジア華僑圏に伝わり、その後に日本にも伝わったと考えられる。
山形大学で食文化を研究している某教授は、鹿児島県宮崎県を含む南九州地方の「あくまき」と山形県庄内地方の「灰汁の笹巻き」の関連性をこれまで考えて来たようだ。日本ではその2か所(静岡にも似たものあるが製品製法としては異なるので数えない)が地理的に飛び飛びにあるので、どういう経緯でそうなったのかという疑問を吾輩同様に持っていた。
その教授は今のところ、望み薄ながら北前船説や加藤清正の一行が持ち込んだなどの説があるようだとの見解を示しているようだが、どれにも決定的な証拠がなく結論が出ていない状態だ。
そこで吾輩は今、「灰汁の笹巻き」中国潮州伝来説を推しており、その証拠集めを行っている最中だ。
つまり鹿児島と庄内は別々で、それぞれに過去に潮州出身の中国人により製法がもたらされたという考えだ。さらに証拠を集める必要があるが、日本国内にもたらされたのは自然発生でも、鹿児島→庄内でも、庄内→鹿児島でもなく、中国→鹿児島、中国→庄内と考えられる、というのが吾輩の「説」だ。
現在得られている情報では、タイではバンコクの中華街(Yaowarat)にあるお菓子屋さんだ。吾輩が見つけたこの華僑のお菓子屋さんだけでなく、バンコクから約260km離れたコラート(Korat)正式名称ナコーンラチャーシマー(Nakhon Ratchasima)の街中の市場でも日常売られているとの情報も得ている。
つまりタイの場合、バンコク中華街だけではなく、地方都市の市場にも普通にあるのだ。
ということは、タイ全土に広がっている可能性がある。
しかも日本のように端午の節句などという季節限定ではなく、情報によると年中製造され売られているのだ。
これらの情報は、吾輩のタイ在住時からの研究仲間で若き農学博士のやつの話からだ。
今、そいつに写真も含め、さらなる情報収集を依頼している最中であり、吾輩もそのうち現地に行って調査する予定だ。
新しいことがわかったら何らかの形で吾輩が日本で発表するつもりだ。
9.吾輩の、「あくまき」「灰汁の笹巻き」中国潮州伝来説
今も証拠収集中なので証拠不十分な状態であり、あくまで「仮説」の段階だが、吾輩はほぼ間違いのないことだと踏んでいる。
鹿児島県や山形県庄内が「あくまき」や「灰汁の笹巻き」を郷土の伝統菓子と呼ぶのは、その地域でのそれなりの歴史があるので一向に問題はないのだが、「発祥の地」や「ルーツ」となると話は別で、中国潮州発祥と言わざるを得ないというところなのだ。
こう書いてきて、それなら「あくまき」も「灰汁の笹巻き」もはたして和菓子なのか? 日本の伝統食で伝統文化になるのか? ということになるかもしれない。
しかし、「あくまき」も「灰汁の笹巻き」も日本に定着して充分長い年月が経過しており、しかも地元で愛され製法を次世代に伝授し保護していこうという動きがあるので、もはや日本の伝統食と言ってももちろん差し支えはないとは思う。
10.タイでの「灰汁の笹巻き」の食べ方
興味深いところはタイでの食べ方だ。
タイにも炒り大豆を粉末にする日本の「きな粉」に相当する食べ物はあるが、日本ほど多く使われていないようで、タイでの「灰汁の笹巻き」の食べ方は、黒糖がけ、黒糖や白砂糖のシロップかけ、はたまたそこに「かき氷」をかけた食べ方もするらしい。
タイ語でサイ・ナムケン(氷をかけるという意味)と言うかき氷がけのデザートは多いのは暑いタイだからこそ、と思うのだが、まさか「灰汁の笹巻き」にまでかき氷をかけるとは! と、吾輩は驚いた。かけたらかけたでおいしいだろうと想像はできるが、日本ではまず誰からもその発想は出てこないだろうというところだ。
そのタイの農学博士仲間が言うには、「灰汁の笹巻き」は子供の時からこれまで普通に食べてきたお菓子のひとつで、かき氷をかけて食べる食べ方も普通だと言った。逆に日本では2箇所しかなくて、食べ方は大豆の粉(きな粉)や黒蜜で、しかも本来は年間を通じて1週間程度の製造と喫食だと言うと反対に驚いていた。
そいつは先に書いたコラートの出身で、バンコクの大学を卒業してから現在はそのコラートの実家に在住だ。
そんなバンコクの中華街から離れた人でも子供の時から日常の普通のお菓子のような形で食べているという事実について、ともかく吾輩は驚いたのだ。
何も日本の「鹿児島県」「山形県庄内」に限った食べ物ではないということだ。
タイでは周知のとおり華僑はすでに全国に散らばり、現在Thai(Siam)-Chinese文化と言われるようにタイ文化自体がすでに中国文化と融合している。人種もタイ族と華人が混ざっている。そしてその歴史的背景を踏まえた上で現在のタイ国家が成立している。
※タイ現地からのリポートはこちら
つまり「灰汁の笹巻き」がタイ全土で作られ、どこの市場やお菓子屋で容易に手に入っても不思議ではないのだ。
地域を超えて広まらず、未だに限られた地域の郷土菓子のような形で存続している日本が、タイに比べて閉鎖的なように思える。
単純に美味しい! 食べたい! いつも食べたい! と思う人が多ければもっと広がってもいいような気がするのだが、日本の場合は歴史は長いものの依然として局所的なお菓子なのだ。
一方、タイでは日本と異なり、「灰汁の笹巻き」は全国的にメジャーなお菓子なのだ。
11.タイの「灰汁の笹巻き」調査
その「灰汁の笹巻き」王国、いや、天国とも言いたい気持ちの「タイ国」現地で、吾輩はそのうち直に買って食べてみて製造者に話を聞いてみるつもりだ。(吾輩は英語はもとよりタイ語も出来る)
何はともあれ、まずは食べてみたい。日本の鹿児島や庄内とどう違うのか? 固さはどうか? 風味は?
そしてきな粉も持参して現地の人に食べてもらって感想を訊く。
タイでは氷をかけるなどいろいろなタイの美味しい食べ方があるとのことだが、是非そのあたりも経験したい。
従って、吾輩はタイ現地に行くしかないのだ。
但し、その結果をこの「和菓子」シリーズに書くかどうかは不明だ。タイではすでに「灰汁の笹巻き」がタイの伝統菓子になっているようで、間違っても日本の伝統食、ましてや「和菓子」などと思って「灰汁の笹巻き」を食べている人はいないからだ。
つまり、タイで「灰汁の笹巻き」を食べる時点で、それはすでにして「和菓子」の領域を離れているのだ。
(おわり)
