第1話 BL 恋はペンタゴン
あらすじ
まさき(178cm、外銀出身の甥っ子を育てるイケメンシングルファザー)は、noteで恋愛マニュアルをバズらせ、Xで「たまゆな」と軽快リプ。
女性と思い込みアポして、会ったらガチムチ男でド肝抜かれ! 次に「まり」こと塊も女性と思い込み、とにかく思い込みが激しい彼は塊からの手書きの詩に心ザワつき、博多でAI画家dannyのサーフカールにクラッ。
七夕の夜、dannyとの逢瀬に塊とたまゆなが乱入! 塊からのラブレターに女性だけ、という恋愛対象が崩れ、「人間が好きだ!」と開眼。
三人とワイワイ、博多の夜は湯気に溶け。ペンタゴンの最後の1角は?
本文
第1章:Xの出会い、運命の待ち合わせ
まさきは、鏡の前でネクタイを軽く緩めながら、自分の顔をチェックした。
外銀で鍛えた鋭い目元、適度に日焼けした肌、ジョギングと週3のジムで維持される引き締まった体躯。身長178cm
悪くない、むしろ上出来だ。甥っ子の悠斗(6歳)がリビングでSwitchに夢中なのを横目に、「よし、今日もイケてるな」と小さく呟く。
彼の人生は順風満帆だった。
外資系銀行を辞め、独立してバイネームで金融コンサルとして活躍。さらには、趣味で始めたnoteでの「女性向け恋愛マニュアル」がバズり、月収にちょっとしたスパイスを加えてくれる。タイトルは『モテる男の思考回路~女心を掴む36の法則~』。
まさき自身、可愛い女性が大好きで、Xではそんな女性たちとの軽妙なリプのやり取りが日課だった。
見た目は芸能人では特に誰かに似てると言われたりはしない。
ただ、男前とは言われるし、街を歩くと女性から声をかけられたりするからイケメンの部類だと思う。
そして、アラサーの今も容色を維持するべく、運動、脱毛、歯のホワイトニングは欠かさない。美容男子というには恐れ多いが、手は抜かない、抜きたくない。これも恋愛マニュアルに記載済みだ。
その日も、いつものようにXを開き、タイムラインを流し見る。
すると、フォロワーからリプが飛んできた。
tamayuna_xx
「まさきさんのnote、最新のやつ読みました!あの『初デートで心を掴む5つの仕草』、めっちゃ参考になります~!」
まさきはニヤリと笑い、キーボードを叩く。
masaki_fin
「たまゆなさん、ありがとー!5つの仕草、実践したら報告してね😉
どんな可愛い子使いこなしてるか、どんな相手か色々気になるな~」
「たまゆな」――このハンドルネーム、なんだかやたら可愛い。
プロフィール画像は白いウサギのイラストで、自己紹介には「のんびり生きてます。甘いものと本が好き。noteがんばりたい。」とある。可愛い。字面が可愛いとはこの事。
品のいいOLさんかな?
いや、ふわっとしたカフェ巡り系の女子大生かも。まさきの妄想は膨らむ一方だ。
リプのやり取りは軽快に続き、フォロワーたちも「この二人、なんかいい感じじゃんw」と茶化す始末。
ある夜、まさきはグラスの赤ワインを片手に、ふと呟いた。
masaki_fin
「たまゆなさんとリアルで話してみたいな~。絶対楽しいよね、こういう気の合う人って😊」
相手に気づかれなくてもいい、気づかれたらラッキーという、
まさき得意の【エアリプ】だ。
もちろんタグ付けなんてヤボはしない。
すると、すぐに通知がピコン。
DMだ。送信者は…たまゆなさん!?
「お疲れ様です、たまゆなです。突然すみません。まさきさんのnoteやXの運用、
めっちゃ勉強になるんです。もしお時間あれば、お会いしてお話聞けませんか? 恋愛マニュアルのコツとか、色々相談したいです!
まさきの心臓がドクンと跳ねた。
え、マジで?
可愛い名前、品のいい文面、これは…期待しかない! 即座に返信し、週末の代官山のカフェで待ち合わせを決めた。
当日、まさきはカジュアルなジャケットに白シャツ、さりげなくロレックスをチラ見せしてカフェに到着。身体がハイブランドだから俺は。このくらいシンプルな出立がいいんだよ。引き算の美ってやつ、などとくだらない脳内会話をしながら。
テラス席を予約し、アイスラテを飲みながらXをチェックする。
たまゆなさんから「もうすぐ着きます!」とピコンとまたDMが来て、胸が高鳴る。
どんな子かな。ふわっとしたワンピースの清楚系? それとも、ショートカットの活発な子?石原さとみさんみたいな?
突如スマホ画面が暗くなるくらいの大きな影と気配を感じて、
視線を上げた瞬間、まさきの時間が止まった。
ふわっとしたワンピースでもショートカットの女子でもない。そこにいたのは、
身長190cmはあろうかというガチムチの男。
黒のタンクトップから盛り上がる胸筋と二の腕は、ジムで死ぬほど鍛えた証。
女の子のふくらはぎくらいある、腕。全然、白うさぎじゃないじゃんか、どちらかといえば黒いゴリラじゃんか。
短く刈られた髪、鋭い眼光、そして…なぜか手に持つ小さな花束。いや、実際にはかなり本数があるがとても小さく見えるのだ。
「…え、誰?」
男がまさきの視線に気づき、ニカッと笑う。
歯がキラリと光る。
ゆっくり近づいてくるその姿に、まさきは思わず後ずさりそうになる。圧がすごい。風圧でよろめきそうだ。
男が何も構わずテーブルに着き、低い声で言った。
「まさきさん、ですよね? たまゆなです。会いたかったよ、初めまして!」
まさきのアイスラテが、テーブルの上で静かに汗をかき始めた。夏の始まりと、これから始まる出来事の始まりを告げるように。
続く。
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