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デジタルアクター試論 16. 西島秀俊という稀有な存在——シン・ウルトラマンからBLACK SUNへ

デジタルアクター試論 目次

1. 発想の出発点——肖像権を払ってCGで作るという可能性
2. 最初の突破口は誰が開けるか
3. ブルース・リーという最有力候補
4. アイコンと役柄のバランス問題
5. 完全オリジナルのCGキャラによるスターシステム
6. 契約のパーセンテージ化
7. 仮面ライダー1号という日本の特殊事例
8. ルパン三世・クレヨンしんちゃんとの対比
9. 違う人が本郷猛を演じても定着しなかった理由
10. 今の仮面ライダーがほぼCGという逆説
11. 一文字隼人と佐々木剛氏
12. 美空ひばりとの違い——役を演じるか否か
13. 性格の可変性という基準——ブルース・ウェイン、長谷川平蔵、車寅次郎
14. 「群像劇化」が原点を重くする逆説
15. 特撮主演というキャリアの賭け——村上弘明、長谷川初範、細川茂樹、オダギリジョー
16. 西島秀俊という稀有な存在——シン・ウルトラマンからBLACK SUNへ
17. 西島秀俊と木村拓哉——芸能人としての格と俳優としての評価
18. 30代・40代の本郷猛を描くという可能性
19. 総3Dアニメ化という選択肢
20. フランケンシュタインの被造物として
21. 唯一無二性を生んだ三つの偶然
22. 撮影現場の一体感、という最後の鍵
23. ブルース・ウェインとクラーク・ケント——比較対象の精緻化、そして本郷猛の特異性のまとめ
24. 最初のデジタル化に生じる微妙な変更
25. 『ボヘミアン・ラプソディ』が示した「受け手の補完」
26. マイケル・ジャクソンの伝記映画
27. 『ワイルド・スピード』のブライアン・オコナーと、ドミニクたちの老い
28. 乱用するプロデューサーへの懸念
29. 「コモディティ化」と「民主化」という言葉の歪み
30. 政治権力による技術の独占とプロパガンダ
31. ゲリラ的パロディというもう一つの危険
32. 結語

Battle Hopper 2022 (CB750F)
Koutarou Minami (Hidetoshi Moshijima)
Masked Rider Black Sun

 『シン・ウルトラマン』のキャスティングを見ると、変身する本人(神永新二)には斎藤工氏が、そして班長・田村君男という支える役には、すでに日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞している西島秀俊氏が配されている。

 この映画の特色は、一番アイデンティティ・リスクの高い役にも、その周囲を固める役にも、もはやどんな役を演じてもキャリアが揺るがない俳優を配置するという、もっと率直に言うと、メインキャラクターを、評価が確立された俳優を配していた点にある。確立された俳優が出演することで、作品自体に「これは子供向けではなく、大人が本気で観るに値する映画である」という信頼の保証を観客に発信できるからである。

 しかし西島氏自身は、その直後の『仮面ライダーBLACK SUN』(2022年)で、まさに「変身する本人」の役を、正面から引き受けている。

 本人は「ライダー役のオファーを即決。しかし『変身ポーズはありますか?』っていうのだけが唯一の出演条件だった」と語り、「シン・ウルトラマンでは変身していないですから。そこはまだ、悔しい思いを持ってます」とまで述べている。

 これは、確立された俳優は安全な脇役に配置されるという前述の構図を、本人の意志によって裏切るものだった。

 さらに、変身ポーズは旧作『仮面ライダーBLACK』のまま踏襲されている。白石和彌監督は「倉田てつをさんの変身が、とにかくカッコよかった。新しい変身ポーズを生み出すのは無理だな、と。基本的には倉田さんのやっていた変身ポーズを踏襲しています」と語り、西島氏自身も「僕は倉田さんの変身ポーズをものすごく練習しました」と振り返っている。

 物語、社会的背景、配役、トーンのすべてを解体・再構築する「シン」的な手法を取りながら、変身ポーズという身体的な「型」だけは、一字一句変えずに継承する選択をしている。これはまさに様式美の保存であり、ファンからも「鳥肌立った」「原作リスペクトを感じる」という反応を引き出している。

 そして西島氏は「子どものころからの夢が、50歳で叶うんだな」と語り、監督は「南光太郎の感情がピークに達した時点ではじめて変身するんです。演技とポーズが、同じレベルでつながる変身を今回はやりたくて」と語っている。

 これは50歳という年齢と演技経験の蓄積があったからこそ実現できた、感情と身体性が一致した変身シーンであり、確立された俳優を起用する理由が、単にキャリアの保険という意味だけでなく、演技の蓄積があるからこそ変身という瞬間に込められる感情の深みが違う、という、より積極的な理由でも正しかったことを示している。


前章 15. 特撮主演というキャリアの賭け——村上弘明、長谷川初範、細川茂樹、オダギリジョー
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