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社員を雇ったのに、なぜ社長はもっと忙しくなるのか



「社員を雇えば、少しは楽になると思っていました」
人を雇っている経営者とお話ししていると、こんな言葉を聞くことがあります。

仕事が増えてきた。
一人では対応できなくなってきた。
そこで社員を採用した。

これで、自分の仕事も少し減るだろう。
そう考えるのは自然なことです。

ところが、実際には逆のことが起こります。
社員を雇ったのに、社長は以前より忙しくなっている。
そんな会社は、決して珍しくありません。

独立したばかりの頃は、全部自分でやっていた

デザイン会社。
Web制作会社。
動画制作会社。
広告会社。
設計事務所。
造園会社。
コンサルティング会社。
こうした専門サービスの会社では、社長自身が「職人」として独立したケースが少なくありません。

最初は一人です。

自分で営業する。
お客様と打ち合わせをする。
自分で制作する。
見積書を作る。
納品する。
請求する。
何か問題が起きれば、自分で対応する。

大変ではありますが、ある意味ではシンプルです。
自分が判断して、自分が動けば仕事が進むからです。

そして、仕事が増えてきます。

一人では対応できなくなり、
「そろそろ人を雇おう」
と考えるようになります。

ここまでは順調です。

人を雇えば、自分の仕事が減ると思っていた

社員が一人増えれば、自分の仕事がその分減る。
そう考えます。

例えば、今まで自分が10の仕事をしていたとします。
社員に3つ任せれば、自分の仕事は7になる。
そんなイメージです。

ところが、実際にはそう簡単にはいきません。
社員に仕事をお願いするためには、まず説明しなければなりません。

「これは、こうやってください」
「このお客様の場合は、ここに気をつけてください」
「終わったら、一度見せてください」

仕事を渡したら終わりではありません。
途中で質問が来ます。

「社長、この場合はどうしましょう?」
「こちらで進めてもいいですか?」
「お客様からこんな要望が来ています」

今まで自分一人で仕事をしていた時には存在しなかった仕事が、次々と増えてきます。

社員が増えると、新しい仕事が生まれる

人を雇うと、社長には新しい仕事が発生します。

社員への指示。
質問への回答。
進捗の確認。
出来上がった仕事の品質チェック。
社員の教育。
ミスやクレームが起きた時の対応。

場合によっては、採用や評価、給与、人間関係の問題まで加わってきます。

つまり、
「自分がやっていた仕事」が減る一方で、「人を動かす仕事」が増えるのです。

ところが、多くの社長はここで一つの問題を抱えます。

人を動かす仕事は増えた。
でも、自分がこれまでやってきた仕事を手放していない。

その結果、
職人の仕事+管理する仕事
を両方抱えることになります。

これでは忙しくなって当然です。

「最後は社長」が積み重なっていく

例えば、デザイン会社。

実際の制作はスタッフがするようになった。
でも、最後のチェックは社長。

Web制作会社。
担当者がお客様とやり取りをしている。
でも、重要な提案は社長が出る。

造園会社。
現場は社員に任せている。
でも、見積もりや提案、難しい判断は社長。

コンサルティング会社でも同じです。
資料作成はスタッフ。
日程調整もスタッフ。
でも、顧客との重要な打ち合わせは全部社長。

一つひとつを見ると、それほど大きな仕事ではありません。

「ちょっと確認してほしい」
「5分だけ相談したい」
「最後に社長に見てほしい」
しかし、これが一日に何度も入ってきます。
社長の時間は細切れになります。

そして気がつけば、
「社員を雇う前より忙しい」
という状態になるのです。

社員が悪いわけではありません

ここで、
「うちの社員は、なかなか任せられない」
と考える社長もいます。

もちろん、社員の能力に課題がある場合もあるでしょう。
しかし、それだけではありません。

社員を雇ったのに社長が忙しい会社には、もう一つ大きな問題があります。

それは、
社長自身の役割が変わっていないことです。

一人で仕事をしていた時には、
「自分が成果を出す」
ことが仕事でした。

ところが人を雇った瞬間から、それだけでは足りなくなります。

今度は、
「社員が成果を出せるようにする」
という仕事が加わります。

これは、まったく別の仕事です。

自分が優秀なデザイナーであることと、人を育てられることは別です。
自分が優秀な職人であることと、仕事を任せられることも別です。
自分ができることと、社員ができるようにすることは違います。

ここに、多くの職人社長が最初にぶつかる壁があります。

社員を増やす前に、社長の仕事を変える

人を雇えば、自動的に会社になるわけではありません。
社員が増えれば、自動的に社長の時間が増えるわけでもありません。

社長自身が、
「これまで自分がやっていた仕事のうち、何を手放すのか」
を決めなければならないのです。

ところが実際には、
「これは自分がやった方が早い」
「まだ任せるのは不安だ」
「お客様に迷惑をかけられない」
と、以前と同じ仕事を続けてしまう。

そこに社員を管理する仕事だけが上乗せされます。

これが、
社員を雇ったのに、社長がさらに忙しくなる理由の一つです。

人を雇うということは、単に人数を増やすことではありません。
社長自身の仕事を変えることでもあるのです。

最後に、一つだけ考えてみてください。

社員を雇う前と比べて、
あなたが「やらなくなった仕事」は、何ですか?
社員は増えた。
売上も増えた。
会社も大きくなった。

それなのに、自分がやる仕事がほとんど変わっていないとしたら。
あなたはまだ、社長という肩書きを持った「職人」のままなのかもしれません。

次回は、
「自分でやった方が早い」が、なぜ会社の成長を止めるのか。

職人から管理職へ移る時、多くの社長がぶつかる壁について考えていきます。


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世の中のタイムマネジメント本は、会社員向けばかり。
あえて経営者、起業家向けに書きました。
私のコンサル事例も7つあります。

シリーズ一覧

第1回
社員を雇ったのに、なぜ社長はもっと忙しくなるのか
https://note.com/takashima_time/n/n7a659b652070

第2回
「自分でやった方が早い」が、会社の成長を止める
https://note.com/takashima_time/n/nfc30deaeeaed

第3回
仕事を任せたのに、なぜ最後は全部社長に戻ってくるのか
https://note.com/takashima_time/n/n1eadd84f00ea

第4回
社長の頭の中にしかない「完成基準」
https://note.com/takashima_time/n/n43124ac251e1

第5回
一番仕事ができる社員が、明日辞めたらどうなりますか?
https://note.com/takashima_time/n/n8740f54bcc96

第6回
社長の技術・センス・経験を「個人技」で終わらせない
https://note.com/takashima_time/n/nd17bfefcb7e8

第7回
職人社長から経営者へ――あなたは何に時間を使っていますか?
https://note.com/takashima_time/n/n1e5f53436bbf

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