光と影が混じり合う空間で
アートの気配を帯びる街をゆく
2025年の秋の芸術祭の頃、本島を歩いてはめぐる
旅をする。行きつ戻りつの旅の行程。行きに通り
がかった建物に沿った板の連なり。それらは影の
ように、水のように、木々のように、波のように。

海の気配を感じる島の風景に

重ねられた作品が持つ質感に
焦点を合わせ、また歩く

建物が受ける光は質を変え

外壁は海の記憶を携える

青いアクリルに映り込むのは、向かいの神社

板にはそこから抜け出したかのように八咫烏が描かれる

板に描かれたシルエットは

神社の木々に連なるように

太陽の光によって影が重なり合うという

建物は海の色のグラデーションを帯びては
時という輝きをまとう

部分が積み重なり作られる全体

ここは咸臨の家という作品で

展示は内部へと続く

かつて咸臨丸に乗り込んだ水夫が暮らした家は

生活のかすかな気配が流れ

過去から現在へと時を超える

残された障子の骨組
素材や形は建物の記憶を今に伝えるもの

赤レンガが語る当時の暮らしや

はがれた土壁に刻まれた時間の流れ

その模様は海に浮かぶ島々のようで
海を渡った咸臨丸の歴史を思う

戸板に重ねられる色は
杉戸がイメージされたものという

並ぶ色のリズムを感じつつ、引き戸にそっと手を添える

戸をくぐる。闇に光が混じる。空間に浮かぶ

色とりどりの板。金や銀の箔にアルミ箔、漆、ペンキで

彩られた空間で、水盤は光を拡散させる

水に光と影は混じり、空間は深まる
記憶の中で、空間に満たされた光

それは外部から内部へと連続し

水盤は光を受け

柔らかく広がった光は空間を反転させる

静かな時間。時が速度を落とし、空間が浮かび
様々な色が、混じり合っては感情に訴えかける

板に描かれた人の絵は、少しの遊び心で、空間に
ちりばめられた色は、過去の記憶とつながり合う
色が生み出す多様さは、心を鮮やかにするようで
多様性をつなぎ、2025年の風景へとつながる
部分、断片が作る全体。小さな集合で表される世界。
記憶のかけらにふれ、過去に思いを重ねる。咸臨
とは君臣が互いに親しみ合うと意味の言葉。身分差
のあった時代に位の上下なく、誰もが平等に目的地
に向かう。そのような名前がつけられた船の物語。
今の世の中の価値観の違い。それを認め合うこと
ができない世界。咸臨の家には杉戸絵、モザイク
タイル画、ステンドグラスをモチーフした連なりが
咸臨的に重ねられているという。形や色、素材が、
混じりあう。空間に静寂が訪れる。水は光を粒子に
分解し水面に映る空間は光をまとい奥行きを持つ。
作品に重ねられた生と死、無と無限、混沌と秩序
へのまなざし。複雑さや多くの困難に満ちた世界に
あらためて思いを馳せる。全体は部分でできている
ことに目を向ければ、多様であることは必然とも
いえる。作品に視点を沿わせ、広げるようにして。
