銀河フェニックス物語<出会い編> 第一話 永世中立星の叛乱 (50)
・第一話のまとめ読み①~(10) ②~(20) ③~(30) ④~(40)
・ (41) (42) (43) (44) (45) (46) (47) (48) (49)
ベランダに立つと教皇は軽く右手を挙げゆっくりと宣言した。

「ラール勅令を発する。一つ、ラールシータは永世中立を堅持する」
「な、何?」
私は身を乗り出した。
話が違う。
民衆は静かに聞いている。
教皇の勅令は続いた。
「一つ、国民議会の発足を了承する」
群衆から歓喜の声が上がった。拍手が巻き起こっている。
「一つ、一律税については再検討する。以上」
群衆が一斉に叫んだ「ラールの御心のままに」と。
どういうことだ?
教皇が右手を民に向けて軽く振った。
その時、私は気が付いた。
思わず銃をモニターに向けた。
「中佐、何をなさるつもりですか」
補佐官が私を止める。
彼は私がテレビに映る教皇を撃とうとしたと思ったようだが、違う。
「レイターフェニックスだ」
「え?」
「教皇の後ろにレイターフェニックスが立っている」
私は銃で示した。
ラール八世の後ろに、無表情の警護官二人が影のように寄り添っている。一人はレイターフェニックス。
そして、もう一人は私が接触しようとしてできなかった元王室近衛隊のオルダイ・バルボラ隊長。
元近衛隊長と連邦軍の皇宮警備が教皇ラール八世の警護をしていた。

七十二ノ丸駅前公園の夜を思い出す。
転々と拠点を移す反王室グループと接触し、資金援助による一律税廃止という手土産を使って交渉をしようと考えていた。
あの時、レイターフェニックスが現れたせいで計画が狂った。
いずれにせよあそこでレイターフェニックスの息の根を止めていれば、こんな結果にはならなかったのだ。
全ては七十二ノ丸公園で対応を誤ったのが原因。私の責任だ。
* *
ラール八世の教皇勅令が終わった。
アドゥールはその様子を神殿内の会議室で見ていた。オルダイが連邦軍の諜報部員と一緒にラール八世の警護から戻ってきた。
私が愛したオルダイは昔と変わらず凛々しかった。胸の奥に痛みが走る。
「お疲れさまでした」
「ああ」
「あなたの勝ちね」

かつて私とオルダイは一緒にラール王室を守ろうと必死だった。
学生時代から知り合いだった私たちは共通の目的を歩むうちに恋愛関係となった。
王室支配に綻びが出ているという認識は二人の間で一致していた。
でも、私は王室の権威を高めようとし、彼は民に連携を求めた。
気がつくと喧嘩ばかり。
彼が近衛隊長を辞めて私たちの関係は修復ができなくなった。
「あなたの勝ちね」
というわたしにオルダイが応えた。
「勝ちも負けもない。全てはこれからだ」
学生の頃から正義感の強い人だった。私はそこに惹かれていたのだけれど。
「私はアリオロンと、あなたは銀河連邦と手を結んだ」
オルダイは不機嫌そうな顔をした。
「力は借りたが手を結んだ訳じゃない」

「じゃあ重力制御装置の管理権はどこにあるの?」
私は知っている。
ここにいる連邦の諜報部員がパスワードを変更し、そのパスワードをオルダイにも明かしていない事を。
結局、すべて銀河連邦の管理下にある。
「・・・」
オルダイは黙ってしまった。利用されていることに彼も気付いているのだろう。
「この諜報部員が重力制御の権利をわたしたちに返してくれる保証はあるの?」
連邦軍の男に聞こえるように言った。
「諜報部員っての止めてくんねぇかなあ。俺、レイター・フェニックスだってば」
初めて会った時から軽い人だと思っていた。
諜報部員のイメージからかけ離れている。
でも、この人が私たちが練ってきたアリオロン同盟への加盟を阻止した。(51)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」