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【一部始終】第一話 ~序~

あらすじ

小説家を目指す大学生、野々村悠希ののむらはるきは、大学にもアルバイト先にもうまく馴染めず、暗い気持ちで日々を送っていた。
ある日、アルバイト帰りに見つけた『占い』の看板。
そこで出会った不思議な占い師は、水晶に悠希の役に立つ映像を映し出す。
占いの対価は、悠希の大切なもの。
差し出すものが悠希にとって価値があればあるほど、悠希にとって役に立つ映像に変わるのだという。
最初は半信半疑だったが、悠希は行き詰まるたびに占い師のもとへ足を運ぶようになる。
通うたび成功を収めていく悠希だが、やがて、占いのせいでどんどんと追い詰められていく──。


本編

 本が好きだった。
 友達と外で走り回るより、家族と出かけるより、妹とおままごとするより、家で一人、本を読んでいる時間の方が好きだった。
 気が弱く、泣き虫な僕を、本だけは何も言わずに受け入れてくれた。
 活字は僕に静かに寄り添い、僕の知らない魅力的な世界へ連れて行ってくれる。
 本を読めば宇宙にだって行けたし、海賊にだってなれたし、名探偵にだってなれた。
 僕はたくさんのことを本に教わりながら成長した。
 本を読むたび、僕の世界はどんどん広がっていった。
 あるときから、僕は小説を書くようになった。
 ノートの片隅で落書きとして始まった文字の塊は、中学生になった頃には起承転結を意識したお話に変化した。
 出来上がった小説は、誰にも見せずに机の中にしまい込んだ。
 誰かに見せるのは恥ずかしかったし、僕の世界を否定されたくなかった。だから大事に、僕だけが思い返せるように、机の中に寝かせておいたのだ。
 同級生に、漫画を描いている男の子がいた。
 その漫画の出来は、はっきり言って僕の小説よりも全然面白くなかったけれど、そいつはその漫画のお陰で、クラスの人気者になった。
 羨ましい、と思った。
 それでも僕は、小説を公開することはしなかった。
 ただその同級生の人気に、密かに嫉妬心を燃やすだけ。
 そのとき僕は誓ったのだ。
 僕だって、いつかは。
 このとき、僕には将来の夢が出来たのだ。
 小説家になるという、生涯の夢が。


二話目以降


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