外為特会の基礎⑩:為替介入と民間銀行のBSの関係

前回に続き、外為特会や介入の話を記載します。以下では下記を前提とします(必要に応じて加筆修正します)。

外為特会の基礎①:外為特会のBSと為替介入|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎②:運用の概要|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎③:外国為替資金証券(為券)について|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎④:日本には非不胎化介入は存在しない?|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑤:為替介入規模の推定|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑥:外貨準備と外為特会の違い|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑦:国債整理基金特会との関係|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑧:IMFとの関係|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑨:外為特会が有する外貨資産の活用とチェンマイ・イニシアティブ|服部孝洋(東京大学) (note.com)

以前、「外為特会の基礎④:日本には非不胎化介入は存在しない?」というエントリーで知人からコメントをもらいました。以前の投稿では、介入に際して、民間の銀行のBSを明示していませんでした。為替介入は実際は、民間の金融機関を通じて行います。そこで、「外為特会の基礎④:日本には非不胎化介入は存在しない?」をより丁寧に記載します(今回は外為特会の基礎④を読んでいることを前提とします。)。

介入前の流れ
まず、前回と同様、外為特会のBSは下記の通りです。

ここで、財務省が円売り介入をするために、外為特会はFB1を発行して、円ファンディングをして、円売り介入をしようとします(ここまでは前回と同じ)。この際、正確には、FB1を発行して、日銀の政府預金で支払われます。つまり、外為特会のBSは下記の通りになります。

一方、日銀のBSはどうなるかというと、下記の通り、FB1を引き受けるので、FB1が資産サイドにたち、負債サイドには政府預金になります。

これは、教科書でいえば、日銀によるいわゆる「政府の銀行」の機能です。下記が日銀のBSの負債サイドですが、政府預金が確認できます。

営業毎旬報告(8月20日現在) : 日本銀行 Bank of Japan (boj.or.jp)

民間銀行を通じて介入
さて、為替介入は、実際には民間の銀行を通じて行われます。そのため、民間の銀行を明示的に記載して議論を進めます。まず、民間の銀行は、下記の通り、預金でファンディングして、円建て資産と外貨資産を持っているとします。

介入後は、外為特会の政府預金を支払い、「外貨資産」を購入するのですが、政府預金を使って銀行に支払うことができないので、日銀を通じて実施します。外為特会のBSは、政府預金を用いて、外貨資産を購入するため、下記のようになります。

この外貨資産は民間銀行から購入しており、日銀を通じて支払われます(これは当座預金を経由で支払います)。したがって、介入後は、民間銀行のBSは、外貨建て資産がなくなり、資産サイドにマネタリーベース(日銀当座預金)がたちます。

日銀は、上記の処理を行うため、日銀内の口座で、負債サイドの政府預金を減らして、当座預金を増やすので、日銀のBSは、下記のように、政府預金がマネタリーベース(当座預金)に代わります。これで介入により、一時的にマネタリーベースが増えました。


以上が、民間銀行を明示的に記載した為替介入の流れです。このままだと、マネタリーベースが増えてしまうので、FB2を発行するという流れは、以下の通りです。おそらく上記の記載で正しいと思うのですが、必要があれば加筆・修正します。
外為特会の基礎④:日本には非不胎化介入は存在しない?|服部孝洋(東京大学) (note.com)

これまでのメモ
外為特会の基礎①:外為特会のBSと為替介入|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎②:運用の概要|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎③:外国為替資金証券(為券)について|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎④:日本には非不胎化介入は存在しない?|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑤:為替介入規模の推定|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑥:外貨準備と外為特会の違い|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑦:国債整理基金特会との関係|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑧:IMFとの関係|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑨:外為特会が有する外貨資産の活用とチェンマイ・イニシアティブ|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑩:為替介入と民間銀行のBSの関係|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑪:為替介入や特会の運用に関する財務省の体制|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑫:外為特会改革と外為特会の積立金制度について|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑬:積立金制度廃止とFBの償還(外為特会改革について)|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑭:外為特会における適切な剰余金(30%ルール)とリスク管理(VaR)の考え方|服部孝洋(東京大学)
外為特会の基礎⑮:2022年の円買い為替介入と不胎化介入について|服部孝洋(東京大学)

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