外為特会の基礎⑪:為替介入や特会の運用に関する財務省の体制
これまで外為特会と介入について書いてきていますが、まだまだかけるネタが多く、外為特会だけで新書がかける気がしてきました。最近為替が円安になり、神田財務官のコメントもあったことから、介入についての報道が増えてきました。ここで、まず、為替介入や特会の運用についての財務省の体制を確認しておきます。
まず、これはよく知られていることだとおもいますが、為替介入は、財務大臣-財務官-為替市場課長というラインで実施されます。浅川さんの書籍には、下記のように記載しています。
(為替介入のラインについては)これはしっかり決まっていて、財務大臣、財務官、為替市場課長というラインです。(国際局長は)入っていません。(榊原英資氏が国際金融局長(今の国際局長)時期には介入にかかわっていましたが)その後、変わりました。介入するときには相手方に連絡するのが慣行となっていて、財務官が関与する方がスムーズにいくという背景もあったかな、と思います。
(国際局長は)情報は入りますが、実際の意思決定には加わっていません。一方、外貨準備運用の方は国際局長と資金管理室長のラインで決めます。財務官にも報告は上がってきますが(p.46-47)。
これで概要がわかったとおもいますが、組織について簡単に記載します。財務省の国際局は下記のような体制になっていますが、為替介入や外貨準備については下記の為替市場課が担当しています。

先ほど記載したとおり、浅川さんが「外貨準備運用の方は国際局長と資金管理室長のラインで決めます」としていますが、為替市場課の中には資金管理室があります(国際局為替市場課資金管理室)。したがって、為替市場課は大きく分けて2つの体制に分かれており、為替市場課そのものでは通常の企画ラインや国際収支や相場に関する内容等を把握する一方、資金管理室は特会に関して係が分かれていて、外為特会の運用やその他の機能を担っています(ここでは細かく記載しませんが開示資料やその問い合わせ先などを見るとどの係でどういう機能を担っているかは推測できます)。
為替市場課の規模感は、私の印象ですが(古くなっているかもしれません)為替市場課全体で30名前後、資金管理室で20人弱です。資金管理室は財務省プロパーの職員もいますが、民間からのプロの採用もしています。これは報道されていますが、現在は、JPモルガンにいた棚瀬さんが担当しています(私のnoteでもよく棚瀬さんの本を引用しています)。為替市場課の情報管理は、財務省の中でも特に厳格になされているという印象をもっています。
財務省資金管理専門官に棚瀬氏 民間出身 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
100兆円以上の運用を20名弱で担っているため、少人数でやっているという見方もあるかもしれません。ただ、基本的に外為特会の運用は安全性・流動性が高い資産での運用をしています。浅川さんの書籍では、
外貨準備の運用についてはポイントは主に二つあり、第1にドル建ての資産を中心とする運用を続けるということです。そして第2に安全性と流動性を重視しつつ、その範囲内で収益性にも目配りするということです。現在もこのガイドラインに基づく運用をしています。
外貨準備も当面の間はドル建てを中心に持っているのが適切だと判断しています。安全性や流動性の点で米国債ということになりますが、ガイドラインでは安全性と流動性確保した範囲内で収益性にも配慮しようということになっていますので、政府機関債とか国際機関債、あるいは資産担保証券での運用も一部にあります。
日本は、外貨準備はいざというときに使う介入の原資と考えていますので、不動産のような流動性の低い資産への運用は行いません。安全性という観点から、今のところ株式の運用は行っていません(p.49-50)。
という方針なので、膨大な人数がいるというわけでもないと考えています。
金利のトレーディングをしばしば「マクロトレーディング」というのですが(私は慣れてしまったのですが独特な言い回しだとおもいます)、外貨準備も、個別のクレジットというより、金利や為替変動を意識したマクロ環境に力点を置いた運用が主体であり、膨大な人数の体制が必要であるとは限らないと思います。一部、例えば、外為特会は政策的意義を勘案してJBICへのドル貸出などを行うなど、マクロ環境以外の要素も考慮した運用もやっていますが、こうした場合は開発政策課といった他の課も関係しています。
これまでのメモ
外為特会の基礎①:外為特会のBSと為替介入|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎②:運用の概要|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎③:外国為替資金証券(為券)について|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎④:日本には非不胎化介入は存在しない?|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑤:為替介入規模の推定|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑥:外貨準備と外為特会の違い|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑦:国債整理基金特会との関係|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑧:IMFとの関係|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑨:外為特会が有する外貨資産の活用とチェンマイ・イニシアティブ|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑩:為替介入と民間銀行のBSの関係|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑪:為替介入や特会の運用に関する財務省の体制|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑫:外為特会改革と外為特会の積立金制度について|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑬:積立金制度廃止とFBの償還(外為特会改革について)|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑭:外為特会における適切な剰余金(30%ルール)とリスク管理(VaR)の考え方|服部孝洋(東京大学)
外為特会の基礎⑮:2022年の円買い為替介入と不胎化介入について|服部孝洋(東京大学)
