外為特会の基礎①:外為特会のBSと為替介入

今回は、外為特会のBSと介入について簡単に整理しておきます。下記の内容を前提とします。

外為特会とFBの発行について|服部孝洋(東京大学) (note.com)


まず、外為特会のBSは下記の通りになります。大きな構図としては、外為特会は、FBで短期借り入れをしており(円建て)、その運用として、資産サイドに外貨の有価証券を持っています。FBは1年以下の資金繰りを行う証券であるため、FBを繰り返し発行し、ロールしながらファンディングしているイメージです。短期調達・短期運法という観点では、外為特会は銀行の運用に似たイメージかもしれません。

外為特会のフローを見たものが下記の通りです。上述のとおり、FBでファンディングして、外貨建て資産で運用しているため、収入としては有価証券の運用益であり、歳出としてはFBによるファンディングの利払いがあります。その結果生まれた利益は、一般会計に繰り入れる、あるいは、外為特会の運用資金である外為資金とする、ということになります。

為替介入がBSに与える影響
上記を前提に、為替介入を考えます。意外と、外為特会のBSについて記載が少ない気がしますが、伊藤先生の「日本の通貨当局による為替介入の分析」の図表が非常にわかりやすいので、下記をベースを説明します。以下から日銀の存在を明示的に記載します。

まず、介入前の外為特会のBSをみます。外為特会のBSをシンプルにしており、FB(為券)で調達していて、外貨資産を資産側に持っているとします。

外為特会のBS

次に日銀のBSになります。日銀は外為特会のファンディングを助けており(FBを直接引き受けしており)、日銀の資産サイドにFB(為券)を持っています(外為特会のファイナンスに日銀の直接引き受けは認められています)。日銀はその他は通常の資産・負債を持っていて、資産サイドに「他の短期債券」「長期債」があり、負債サイドに「日銀券」+「準備預金」(あわせてマネタリーベース、MB)があります。

日銀のBS

円売り為替介入
上記を前提に、外為特会が「円売り」為替介入をしたとします。為替介入の資金を得るため、外為特会はFBを発行して、日銀がそれを直接引き受けます。外為特会は、円建てで資産と負債に同額計上されますが、外為特会は資産サイドの円建て資産を為替市場で売却することで、円売り介入をします(したがって外為特会のBSには外貨建て債が計上されます)。結果、外為特会は、下記の通り、負債サイドにFBが増え(△為券)、資産サイドに、△外為資産(介入)が増えます(下記の外為特会のBSの通りです)。

外為特会のBS

ちなみに、為替介入とFBの発行額は下記の通りです。下記をみると、介入のタイミングでFBの残高が増加していることが確認できます。

2022-zentaiban.pdf (mof.go.jp)


一方、日銀のBSは、円売り介入のための発行したFBを直接引き受けるため、BSの資産サイドにFBが増えます。一方、日銀はその支払いのため、当座預金に数字を書き込むだけなので、準備預金が増えます(△準備預金)。したがって、為替介入の結果、MBが拡大しますが、このように、MBが増える介入を不胎化されない介入(unsterilized intervention)といいます。

日銀のBS


一方、MBを増やさない介入を「不胎化介入(Sterilized intervention)」といいます。先ほどように円売り介入をした場合、MBが増えてしまうので、FBを引き受ける一方、例えば、日銀がそれまで資産サイドに持っていた「他の短期債券」を売却します。これにより、下記のように、MBの変化を無くすことができます。

日銀のBS

ここではMBを一定にするため、日銀の「他の短期債券」を売却するケースを考えましたが、棚瀬さんの書籍(「国際収支の基礎・理論・諸問題」)では財務省がFBを発行することで吸収すると説明しています。

財務省が円売り介入に用いる円資産を常に事前にFBを発行して調達するのであれば、本来の意味での非不胎化介入は起こりえないが、円売り介入を速やかに行わざるを得ないケースでは、日銀がFBを一時的に引き受けることになる。このケースで円売り介入によって銀行システムに供給された円資金が放置(図中②)されれば非不胎化介入となるが、これは財務省(政府)がマネーを創出していることに他ならないため実際には不可能であり、円資産は新たなFBの発行により可及的速やかに吸収されることとなる(図中③)。そこで得た円資金によって当初日銀が引き受けたFBは速やかに償還される(図中④)ため、プロセス全体でFBの発行残高は介入額とマッチする(p.107)。

円買い介入の場合:FBの償還
円買い介入の場合、外為特会が外貨資産を保有しているところ、それを売却して円を買う、という介入になります。円買い介入の結果、下記の通り、介入額と同額、資産と負債に円建ての資金が両建てで立ちます。

外為特会のBS

前述のとおり、FBは短期的に円建てでファンディングしているわけなので、円建て資産を使ってFBを償還することができます(下記の図のとおり、外為特会のBSが小さくなります)。特別会計ガイドブックにも、「逆に円買い・外貨売り介入の場合には、外貨建て債券の売却等により外貨を調達し、外国為替市場における為替介入により外貨を売却し、円貨を購入します。為替介入で得た円貨は政府短期証券の償還に充当されます」としていますし、日経の記事でも、財務省は「基本的には過去の借金の返済に回す」とコメントしています。

外為特会のBS

為替介入の金庫「外為特会」 外貨準備の元手は国の借金 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

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これまでのメモ
外為特会の基礎①:外為特会のBSと為替介入|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎②:運用の概要|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎③:外国為替資金証券(為券)について|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎④:日本には非不胎化介入は存在しない?|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑤:為替介入規模の推定|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑥:外貨準備と外為特会の違い|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑦:国債整理基金特会との関係|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑧:IMFとの関係|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑨:外為特会が有する外貨資産の活用とチェンマイ・イニシアティブ|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑩:為替介入と民間銀行のBSの関係|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑪:為替介入や特会の運用に関する財務省の体制|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑫:外為特会改革と外為特会の積立金制度について|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑬:積立金制度廃止とFBの償還(外為特会改革について)|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑭:外為特会における適切な剰余金(30%ルール)とリスク管理(VaR)の考え方|服部孝洋(東京大学)
外為特会の基礎⑮:2022年の円買い為替介入と不胎化介入について|服部孝洋(東京大学)

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