外為特会の基礎⑧:IMFとの関係
前回に続き、外為特会の話を記載します。以下では下記を前提とします(必要に応じて加筆修正します)。
外為特会の基礎①:外為特会のBSと為替介入|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎②:運用の概要|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎③:外国為替資金証券(為券)について|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎④:日本には非不胎化介入は存在しない?|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑤:為替介入規模の推定|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑥:外貨準備と外為特会の違い|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑦:国債整理基金特会との関係|服部孝洋(東京大学) (note.com)
今回は外為特会とIMFとの関係を整理します。そもそも、日本がIMFに加盟したのが1952年です。そのタイミングで、IMFとの取引は外為特会を経由して行うことになりました。
例えば、特別引出権(SDR)やIMFへの出資も外為特会に計上されています。外為特会のBSでは下記がそれらに該当する部分です。

IMFへの出資金の詳細は、財務書類の注記に、下記のように計算されています。

また、SDRについても下記のように詳細が開示されています。下記をみるとSDRが大幅に増えていますが、2021年に実施されたIMFによるSDRの再配分による効果だとおもいます。詳細は下記を参照してください。
IMF総務会、6,500億ドル規模という特別引出権の歴史的な配分を承認

なお、外為特会を経由してIMFとやり取りすることになった経緯は、河上(2016)では下記のように記載しています。
IMFおよび世銀への加盟にあたり国内の法制上は、まず国際通貨基金協定及び国際復興開発銀行協定について国会の承認が必要であり、また、加盟に際し出資の払い込みその他の各種の義務を履行するため国内法の整備が必要であった。そしてこの国内法整備として国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律(IMF等加盟措置法)が制定された。
IMFへの加盟後日本は必要に応じてIMFとの間で取引を行うことになるが、具体的には円貨あるいは金による他のIMF加盟国通貨の買い入れやIMFの保有する円貨の買戻しが行われることとなる。
こうしたIMFとの間での取引については外国為替管理委員会が為替資金特会の負担において行うこととされ、外為資金特会自体は改正されなかったものの、日本とIMFとの取引は外国為替資金の運営の一環として行われることとなった(p.267)。
このような経緯を踏まえれば、外為特会は円売り為替介入の運用をする特会と整理するのは少しおおざっぱすぎるということがわかります(もっとも、金額をみれば、ほとんど円売り介入で得た資金を運用しているファンドみたいなものではあるのですが)。
SDRと出資金については説明をしましたが、この他にも、政策的に必要があると判断されれば、外為特会がIMFへ貸し出しをすることがあります。有名な事例でいえば、金融危機の時に、IMFに対して、最大1000億ドルの融通という政策を打ちました。詳細は下記の通りです(より詳細を知りたい方は、篠原(2018)「リーマン・ショック 元財務官の回想録」をお勧めします)。
IMFに外為特会より最大1000億ドル資金融通の用意=麻生首相提案 | ロイター (reuters.com)
貸出の内訳をみると、下記の通り、IMF向けの貸出が計上されています。

政府:外為特会から国際協力銀へ3200億円融資-海外投融資支援 - Bloomberg
神田(2021)「図説 ポストコロナの世界経済と激動する国際金融」では次のように説明しています。
外国為替資金特別会計においては、外国為替相場の安定に資するとの観点から、様々な取り組みを行ってきた。
2008年秋以降の世界的な金融・経済危機を受け、IMFの資金基盤を十分に確保し、IMFが加盟国に対して適時かつ効果的に国際収支上の支援を行う目的で、IMFに対する最大1,000億ドル相当の貸付を行った。また、2011年以降の欧州債務問題の深化に対し、IMFの資金基盤強化のため、600億ドルの追加資金貢献を行った(p.140)。
これ以外にも、同書では、アジア通貨危機以降の、通貨スワップの拡大や、JBICヘの外貨貸付も記載されていますが、これらはそれぞれ面白い試みであるため、別途記載しようと思います。特に、下記の図(再掲)をみるとJBICへの貸し出しが大きいことがわかります。

これまでのメモ
外為特会の基礎①:外為特会のBSと為替介入|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎②:運用の概要|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎③:外国為替資金証券(為券)について|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎④:日本には非不胎化介入は存在しない?|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑤:為替介入規模の推定|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑥:外貨準備と外為特会の違い|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑦:国債整理基金特会との関係|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑧:IMFとの関係|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑨:外為特会が有する外貨資産の活用とチェンマイ・イニシアティブ|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑩:為替介入と民間銀行のBSの関係|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑪:為替介入や特会の運用に関する財務省の体制|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑫:外為特会改革と外為特会の積立金制度について|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑬:積立金制度廃止とFBの償還(外為特会改革について)|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑭:外為特会における適切な剰余金(30%ルール)とリスク管理(VaR)の考え方|服部孝洋(東京大学)
外為特会の基礎⑮:2022年の円買い為替介入と不胎化介入について|服部孝洋(東京大学)
