外為特会の基礎②:運用の概要
前回に続き、外為特会について記載します。東大の図書館に行って、いわゆる国際金融の書籍を色々見ましたが、そもそも、外為特会については最低限の記載であるという印象を持ちました。そこで私が理解していることについてメモをつくっていきます。以下では下記を前提とします(随時アップデイトしていきます)。
外為特会の基礎①:外為特会のBSと為替介入|服部孝洋(東京大学) (note.com)
前回は外為特会のBSが為替介入でどう動くのか、ということを議論しましたが、今回は、外為特会の運用についてどれくらい開示されており、どのような特徴があるかということを記載します。
まず、外為特会の主な運用先は外貨建て資産になりますが、その内訳は下記の通りであり、その8割は外貨証券であり、その規模が約120兆円であることがわかります。
外国為替資金特別会計の外貨建資産の内訳及び運用収入の内訳等 : 財務省 (mof.go.jp)

したがって、外貨証券の運用が気になるわけですが、そもそも外為特会の詳細については、為替市場に対して影響を与えることから、非公表となっているものが少なくありません。例えば、特別会計ガイドブックでは、「通貨構成については、為替市場に影響を与えるおそれがあることから、引き続き非公表」としています。その一方で、
「外国為替平衡操作の実施状況」や「外貨準備等の状況」の公表、決算書及び特別会計財務諸表による財務状況の開示、外貨建て資産の運用利回りの公表を行っており、さらに平成20年11月からは、各年度末における保有外貨証券の満期別構成割合および国債・非国債の構成割合を公表している。
としており、その開示状況は「他のG7諸国と比較しても遜色ない水準」と評価しています。
通貨の内訳
前述のとおり、この点は非公表です。しかし、その多くはドル建て、米国債だと考えられています。その根拠としては、大臣や元財務官のコメントが挙げられます。藤井(2014)では、
金融市場や為替市場への影響を考慮して外貨資産の内訳は公表されていない が、谷垣財務大臣(当時)が「米ドル建ての資産が相当なウェートを占めている、なかんずく米国債の割合が大きくなっている」と国会で答弁し、また、行天豊雄・元大蔵省財務官が「買ったドルは…現状では大半が米国の国債に投資されている。」 と述べていることから、外貨資産の運用において米国債の占める割合が多いことを窺い知ることができる。近時では米国・長期国債 10 年物の金利が 2.5~3%程度と比較的高い水準にあり、同時に運用資産の規模が大きいことなどから、外貨証券と外貨定期預け金に係る運用収入だけでも2兆円程度に上り、外為特会の運用収入の9割以上の収益を占めている。
外国為替資金特別会計剰余金の発生と一般会計繰入 (sangiin.go.jp)
としています。
外貨証券の満期別構成割合
前述のとおり、外貨証券の満期別構成割合については開示があります。下記が直近ですが、1~5年が42.6%、5年超が42.6%ということで中長期債で運用しているということがわかります。

外国為替資金特別会計の外貨建資産の内訳及び運用収入の内訳等 : 財務省 (mof.go.jp)
下記がその推移になりますが、2011年度は1~5年が58.8%であり、5年超が28.3%であることから、金利リスク量を上げていったということがわかります。


外貨証券の国債・非国債の構成割合
外貨証券の構成ですが、下記の通り、76%が国債による運用です。その推移をみても70%以上は基本的に国債で運用をするという運用状況です。


上記をまとめると、100兆円を超える規模の運用に関し、円建ての短期のファンディングをし、米ドル建ての中長期債で運用していることは、米金利や為替のボラティリティを考えれば、なかなかしびれる運用をしているという感じがします。もっとも、そもそも円高対策として介入をしてきた結果、外為特会のBSが拡大してきた経緯を踏まえれば、その制度上、円ファンディング、外貨運用という構図にならざるを得なく、その制約を踏まえれば、安全性・流動性ともに高いと思われる中長期の米国債で運用してきたことは、外為特会という枠組みで考えれば、保守的な運用を行ってきたと整理できるのではないかと感じました。

この他にもいろいろ論点があるので、もう少し記載します。
これまでのメモ
外為特会の基礎①:外為特会のBSと為替介入|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎②:運用の概要|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎③:外国為替資金証券(為券)について|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎④:日本には非不胎化介入は存在しない?|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑤:為替介入規模の推定|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑥:外貨準備と外為特会の違い|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑦:国債整理基金特会との関係|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑧:IMFとの関係|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑨:外為特会が有する外貨資産の活用とチェンマイ・イニシアティブ|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑩:為替介入と民間銀行のBSの関係|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑪:為替介入や特会の運用に関する財務省の体制|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑫:外為特会改革と外為特会の積立金制度について|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑬:積立金制度廃止とFBの償還(外為特会改革について)|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑭:外為特会における適切な剰余金(30%ルール)とリスク管理(VaR)の考え方|服部孝洋(東京大学)
外為特会の基礎⑮:2022年の円買い為替介入と不胎化介入について|服部孝洋(東京大学)
