外為特会の基礎⑯:外貨準備の定義

以前、外為特会の基礎について記載しましたが、今回はその続編です。

外貨準備を勉強していて、おそらく初学者が疑問に持つ点の一つは、外貨準備が、日銀と財務省の両方の資産(の一部)を合算して計算しているという点です。日銀のウェブサイトでは下記のように説明されています。

外貨準備とは、通貨当局が為替介入に使用する資金であるほか、通貨危機等により、他国に対して外貨建て債務の返済が困難になった場合等に使用する準備資産です。
わが国では、財務省(外国為替資金特別会計)と日本銀行が外貨準備を保有しています。

外貨準備とは何ですか? : 日本銀行 Bank of Japan

外貨準備は具体的に下記の通り、財務省のウェブサイトに開示があります。
外貨準備等の状況(令和7年9月末現在) : 財務省

そもそも外貨準備はどのように定義されているかというと、IMFのマニュアル(BPM6)で外貨準備が定義されており、それに基づいて各国で、それに該当する資産を合算しているという点です。

日本でなぜ外貨準備がこれだけ大きいかというと、1990年代から2000年代に実施した大量な円売り介入の結果なわけですが、よく考えれば、為替介入の権限自体が各国で異なり、日本は財務省がその権限をもっていますが、中央銀行が持っているところもあります(詳細は白川方明氏「金融政策」の第14章を参照)。そのように考えれば、外貨準備が財務省と中央銀行の有する資産で構成され、かつ、日本では財務省の有する外為特会における資産が多い、というのは必然的なわけです。

BPM6では、ざっくりいえば、monetary authorityが持っている外貨流動性を外貨準備と定義しており、さらに、どのような資産が入るか、入らないか、という点を細かく定義しています。そして、財務省は、IMFの定義に基づき、下記のように記載をしているわけです。

https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/reference/official_reserve_assets/data/0709.html

一方で、外貨準備はmonetary authorityが有する外貨流動性ですから、流動性があると言えないものは含まれません。また、IMFによると「 In accordance with the residence concept, reserve assets, other than gold bullion, must be claims on nonresidents」とあり、居住者に対する金以外の貸付は一般的に外貨準備に該当しないとあります。このような観点で、財務省が有する外為特会の資産すべてが外貨準備というわけではありません。

その代表例として、JBICへの貸出金があります。下記のように、注意深く財務省のウェブサイトをみると、「外貨準備およびその他外貨資産」と記載があり、「その他外貨資産」があることが分かります(さらに注記をみると、それが主にJBICへの貸出であることもわかります)。

https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/reference/official_reserve_assets/data/0709.html

外貨準備の基礎文献として参考になるのは、棚瀬さんが書いた下記の文献です。こちらの書籍の第3章5節に、外貨準備の記載があります。こちらの冒頭を読んでもらうと、IMFのガイドラインに則っていることなどが確認できます。また、棚瀬本には、政府が外貨準備を持っている例として日本のほか、英米も指摘しています。

今回はこの程度ですが、必要に応じて加筆修正します。下記のメモも参照いただければ幸いです。

これまでのメモ
外為特会の基礎①:外為特会のBSと為替介入|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎②:運用の概要|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎③:外国為替資金証券(為券)について|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎④:日本には非不胎化介入は存在しない?|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑤:為替介入規模の推定|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑥:外貨準備と外為特会の違い|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑦:国債整理基金特会との関係|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑧:IMFとの関係|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑨:外為特会が有する外貨資産の活用とチェンマイ・イニシアティブ|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑩:為替介入と民間銀行のBSの関係|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑪:為替介入や特会の運用に関する財務省の体制|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑫:外為特会改革と外為特会の積立金制度について|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑬:積立金制度廃止とFBの償還(外為特会改革について)|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑭:外為特会における適切な剰余金(30%ルール)とリスク管理(VaR)の考え方|服部孝洋(東京大学)
外為特会の基礎⑮:2022年の円買い為替介入と不胎化介入について|服部孝洋(東京大学)

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