ニボシの恩 その弐
ヒデサトはテリトリーをどんどん広げ、あちこちの部屋へ自由に出入りする様になりました。ヒデサトの自由と反対に父は病状が重くなり2階の部屋で静かに過ごすことが増えました。それに合わせた様にヒデサトも
2階の部屋へよく行くようになりました。父もヒデサトが来ることを怒らなくなりました。
父とヒデサトは仲良くなったと安心していた頃、父は時々かなり激しい痛みを訴える様になっていました。
立ち上がろうとして痛みで苦しんでいる父は四つん這いのまま動けなくなっていました。その時ヒデサトは父の顔の近くに行き、苦しむ父の側から離れようとはしませんでした。
父は
「こいつは何しにきたんだ?」と聞くので
「心配して見に来たんでしょ」と答えました。
父はその後、何も言わずただヒデサトを見つめていました。
ヒデサトがいることで少しでも癒されて痛みが和らげばいいのに……
そう思っていた矢先、父は最後の入院生活に入り7月初旬父は鬼籍の人となりました。約半年の父とヒデサトの生活は終わりました。
父の葬儀の合間にヒデサトの様子を見に家に帰りました。臨終から葬儀の間、甘えん坊のヒデサトを1人でお留守番させていました。帰ったらすごく甘えて離してくれないだろうと思って家に入ると、ヒデサトは鳴きもせず
ただ、じっと私の側にいてくれました。
葬儀が終わり父の祭壇を用意している時から、ヒデサトは遺骨の側から離れません。時には近くに行って臭いをかいでいました。猫の習性からすれば、目新しいものに対して匂いをかぐ行動は良くあることですが、それだけではないような気がしてならなかったのです。
その日から、納骨までの百箇日まで私がお経をあげる隣には、
必ずヒデサトの姿がありました。祭壇には猫の好きな房やヒモが沢山あるのに、いたずらをすることは一度もありませんでした。
百箇日の最終日の100日目。明日は納骨という日。家であげるお経はこれが最後という時になって、ヒデサトは祭壇のある部屋へ行こうとしません。
それまで毎日側にいたのに、今日に限ってどうしたのだろう?と思って
「ヒデサト。あなたが会えるのは今日で最後なんだよ。ニボシの恩はどうしたの?」
と言うとヒデサトはいきなり走り出して、父の祭壇の前に座り読経が終わるまでその場所に座り続けていました。
納骨の前の四十九日にも不思議なことがありました。
お寺の方や親戚も集まり法要をした時のことです。来客が苦手なヒデサトは隠れてしまって出て来ません。猫だし人見知りだから仕方ないと思って、
そのままにしていました。
ところが法要が始まり僧侶の読経が始まったとたん、ヒデサトは走って来て祭壇のすぐ前、僧侶の真横に陣取り寝転がりました。お寺の方も驚いて
ヒデサトを見ておられましたが、ヒデサトはいたずらするでもなく法要が終わるまでじっとその場所に座っていました。
ヒデサトが人見知りすることを知る人達は突然の出来事に思わず声を上げていました。偶然の出来事かと思っていましたが、この後の納骨日も、新盆など父の法要の時には必ずヒデサトの姿がありました。
奇跡的な出会い
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