【フェーズ4-1】 なぜ、選考の中でも対等に確かめ合うのか。生き方としてのエンジニアを、面接の場に立たせる 【ITエンジニアの卵に贈る、就活の書】
この記事は「ITエンジニアの卵に贈る、就活の書」シリーズの一本です。シリーズ全体の目次はこちら(扉記事)からご覧いただけます。
エンジニアを目指す学生のみなさん、こんにちは。クオリティアーツの池田です。
ITエンジニアの卵に贈る、就活の書・フェーズ4-1の記事です。前回のフェーズ4では、応募後の選考の全体像と、新卒選考の8つの局面(書類選考/一次面接/技術面接/三次面接/四次面接/最終面接/財務担当取締役・人事のトップの確認/オファー面談)のフレームをお話ししました。今回はフェーズ4「確かめ合う」の1本目、方向づけとして、なぜ、選考の中でも対等に確かめ合うのかという土台の話をします。
フェーズ2「作る」で1年以上かけて積み上げてきたポートフォリオ、フェーズ3「接続する」で読み込んできた企業ポートフォリオ。これらを持って、いよいよ選考のプロセスに臨みます。ここで大切なのは、選考のプレッシャーの中でも、対等な対話の姿勢を保ち続けること。この視座の土台を、序章からの縦串を辿りながら丁寧に確かめていきます。
新卒の就活中の方はもちろん、第二新卒として他社の面接に臨む場面でも、同じ話が土台になります。
1. この記事の位置づけ:思想の土台の話
この記事では、まだ具体的な面接対策やコーディング面接のテクニックには踏み込みません。フェーズ4-3からフェーズ4-10までの各論に入る前に、なぜみなさんが選考のプレッシャーの中でも対等な対話の姿勢を保つのか、その土台となる考えを共有します。
思想の土台のないまま面接対策のテクニックに入ると、単なるパフォーマンスに寄ってしまいます。土台があれば、テクニックの一つひとつが、姿勢を映す言葉として立ち上がります。この記事は、そのための土台の話です。
2. 選考の場で、学生さんが陥りがちな受け身の構造
面接の場に臨む学生さんの多くが、無意識のうちに持っている感覚があります。「選ばれる側」という受け身の姿勢です。
企業側が上、自分が下の非対称な関係で、上に立つ企業に気に入られるように振る舞う。あらかじめ用意した志望動機を暗唱する。想定質問への模範解答を練習する。企業側の期待に沿う自分を演じる。この一連の振る舞いのなかで、いつも主語は企業側にあります。企業がみなさんを選び、みなさんはそれに応える、という構造です。
この受け身の構造は、みなさんの落ち度ではありません。社会全体が長い時間をかけて積み上げてきた「就活のお作法」で、みなさんはその流れのなかに立たされています。就活情報サイトが「選ばれるための対策」を発信し、大学のキャリアセンターが「選考通過のコツ」を教え、周りの友人も「まず内定をもらう」と言う。無意識のうちに、この物差しで面接に臨むクセがついてしまう。
でも、扉記事「はじめに」で私は書きました。就活は、企業があなたを選ぶ場ではなく、あなたが企業を選ぶ場でもある。この視座は、フェーズ4「確かめ合う」で完成します。選考の中でも、対等な対話の姿勢を保つ。それが、フェーズ4を歩く土台です。
3. なぜ、選考の中でも対等に確かめ合うのか。6つの視点から降ろす
この土台を、6つの視点から丁寧にお話ししていきます。序章からフェーズ3までの縦串を、ひとつずつ辿りながら受け取ります。
3-1. 視点1:プロフェッションの側から降ろす理由
序章-1で、私はエンジニアという職業をプロフェッションとして位置づけました。技術士法、技術士倫理綱領、IEEE-CS/ACM、IEEEの4つの独立した声が、すべて同じ方向を指していました。エンジニアは、公衆の福利に責任を負う、高潔な高度専門職業です。
プロフェッションには、大切な特徴があります。依頼者や雇用者に対する独立性を保つ職業だ、ということです。技術士倫理綱領にもIEEE Code of Ethicsにも、この独立性の姿勢が書かれています。プロフェッションは、選ばれるだけの存在ではなく、自らの職業観に照らして、働き先を選ぶ主体でもあります。
面接という選考の場でも、この独立性の姿勢は失わない。企業側があなたを評価するのと同じだけ、あなたも企業側を評価する。プロフェッションとして働くとは、選考の場でも選ぶ側の主体性を持つことでもあります。
3-2. 視点2:世界基準の側から降ろす理由
序章-2で、世界基準のエンジニアの視座をお話ししました。Engineerは世界の多くの国で独占された名前(一定の資格や登録を持つ人だけが名乗れる呼び名)であり、公衆の福利に責任を負うプロフェッションとして扱われます。
世界基準では、Engineerは会社を選ぶ側の主体として扱われます。転職市場が流動的で、キャリアは自分で設計する。面接は、企業と応募者が対等に対話する場として設計されています。応募者は、自分の技術と職業観に合う場所を選び取るために、面接で相手を見極めます。
日本の就活構造は、この世界基準の姿勢とは、少し違う形を持っています。新卒一括採用、面接での「志望度の本気度」の確認、同調圧力。この日本特有の構造の中に立ちながらも、世界基準の視座を借りて、選考の中でも対等さを保つことができます。
3-3. 視点3:生き方としてのエンジニアの側から降ろす理由
序章-3で、私はこの連載を貫くいちばん大切な思想をお伝えしました。エンジニアとは、職業ジャンルではなく、生き方である。生き方としてのエンジニアと、職業役割としてのエンジニアは、まったく別のもの、ということです。
生き方としてのエンジニアの姿勢は、面接の場でこそ立ち現れます。技術知識の量よりも、技術との向き合い方、公衆の福利に対する姿勢、失敗の受け止め方、学び続ける姿勢。これらは、面接の質問への答えの粒度、逆質問の質、対話全体のトーンに滲みます。
面接官は、技術知識の量だけを観ているわけではありません。この人が、生き方としてのエンジニアの姿勢を持っているかを、対話のなかで感じ取ろうとしています。同じ論理で、みなさんも、面接官の言葉のなかに、その人が生き方としてのエンジニアの姿勢を持っているかを感じ取ることができます。
3-4. 視点4:フェーズ1-3の「有名と良いは別軸」から降ろす理由
フェーズ1-3で、有名な会社と良い会社は別軸で語られるべき、というお話をしました。有名度と、エンジニアとして育つ場所としての良さは、独立した2つの軸でした。
面接の場でも、この視座は活きます。有名度の高い会社の面接であっても、育成環境の質を対等に確かめる。有名度が低い会社の面接であっても、フェーズ2〜3で読み込んできた企業ポートフォリオの厚みで対等に対話する。有名度は、面接での姿勢を変える理由になりません。
フェーズ1-3で立てた3つの問いを思い出してください。
この会社は、技術のことを、社外に発信していますか
この会社の募集要項には、エンジニアの育成についてどこまで書かれていますか
この会社の経営層や部課長は、エンジニアとして今も現役ですか。その証拠は、学生にも見えますか
この3つの問いを、面接の逆質問に変えて投げる。これが、フェーズ1-3で立てた物差しを、フェーズ4の面接の場に落とし込む具体です。特に3つ目の問いは、フェーズ4-6〜4-8の三次〜最終面接で経営層に直接投げる場面が訪れます。
3-5. 視点5:フェーズ2の成果物の側から降ろす理由
フェーズ2で1年以上かけて積み上げてきた成果物は、面接の場に立つための資本です。GitHubのContributionsグラフ、READMEの整ったリポジトリ、Zennの技術ブログ、勉強会での登壇スライド、OSSへのPR、長期インターンの成果、社外コミュニティでのつながり。
これらは、面接の場で、対話の素材として使えます。
志望動機を語るとき、フェーズ2で作ったものと結びつけて具体的に語る
自己PRで、フェーズ2で積み上げてきた経験を、自分の言葉で語る
ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)で、フェーズ2の各論の一つを厚く語る
技術面接で、コーディング課題への取り組み方に、フェーズ2で培った思考プロセスが滲む
逆質問で、フェーズ2で触れてきた技術と関連する質問を投げる
フェーズ2の努力は、フェーズ4の面接の場で報われます。成果物を持っている学生さんは、対等な対話の場に、堂々と立てます。
3-6. 視点6:フェーズ3の企業ポートフォリオの側から降ろす理由
フェーズ3で丁寧に読み込んできた企業ポートフォリオは、面接の場での対話の素材になります。JDに書かれていた技術スタック、技術ブログで読んだ記事、有価証券報告書の数字、経営層のnoteの発信、カジュアル面談で聞いた話。
これらを面接の場で持ち込むことで、対話の質が段違いに上がります。
「御社の技術ブログの、直近3ヶ月のこの記事について、実装の裏側を詳しく聞かせてください」
「有価証券報告書に書かれている平均勤続年数から、御社の育成環境の厚みを感じたのですが、実際どうでしょうか」
「CTOの直近のnoteで、技術投資の判断理由を読みました。その判断に至るまでの経営層内の議論を、伺ってもいいでしょうか」
企業ポートフォリオを読み込んで面接に来る学生さんに対して、企業側も真剣に応答してくれます。フェーズ3で積み上げてきた読み込みは、面接という選考の場で、対話の質を根本から変えます。
4. 対等な確かめ合いとは、何か
ここまで、6つの視点から降ろしてきました。言葉を、2行に絞っておきます。
対等:企業と学生の関係は、選考の場でも上下ではなく横並び
確かめ合い:企業も学生も、互いの姿勢を確かめる相互性
対等な確かめ合いの場では、双方が正直に自分を差し出します。学生さんはフェーズ2で積み上げた成果物と、フェーズ3で読み込んだ企業ポートフォリオを持って対話する。企業側は、技術文化・育成環境・経営の姿勢を、面接官の言葉を通して差し出す。互いの姿勢が並んで、対等に照合される。それが、フェーズ4の面接の姿です。
5. プレッシャーの中で、姿勢を保つために
対等な対話の姿勢は、頭で分かっていても、選考のプレッシャーの中では失われがちです。素材を持ち込む・丁寧に聴く・その日のうちに振り返る。この3つは、フェーズ4総論で扱いました。
ここでは、方向づけの記事として1つだけ足しておきます。姿勢を保つのに、気合いは要りません。要るのは、手元にある材料です。フェーズ2で積み上げた成果物と、フェーズ3で読み込んだ企業ポートフォリオ。この2つを持って座っている限り、対話は対等になります。逆に、手ぶらで座ると、どれだけ心構えを整えても受け身になります。
6. 8つの局面への地図:対等な対話が問われる8つの場面
フェーズ4総論で提示した8つの局面を、方向づけの視点から、もう一度置き直します。8つの局面は、対等な対話を、8つの具体場面に落とし込んだものです。なお、それぞれの局面に出てくる相手が何をしている人なのかは、次のフェーズ4-2で1本まるごと使って扱います。ここでは、局面ごとに相手が入れ替わることだけ押さえてください。
フェーズ4-3 書類選考:紙とURLの上に、作ってきたものと調べてきたことを書き記す
フェーズ4-4 一次面接:人事・若手エンジニアとの対話で、志望動機・自己PR・ガクチカを自分の言葉で語る
フェーズ4-5 技術面接 (二次面接):テックリード・リーダー層との技術対話で、生き方としてのエンジニアの姿勢を映す
フェーズ4-6 三次面接 (部課長層):入社後、日常的に指揮命令系統として所属する相手との対話。後半面接の中でも最も本気で臨むべき面接
フェーズ4-7 四次面接 (CTO・本部長層):技術戦略とキャリア観を、対等に語る対話
フェーズ4-8 最終面接 (社長・役員層):部課長・CTO・社長・役員との対話で、フェーズ1-3の3つの問いを実践する
フェーズ4-9 財務担当取締役・人事のトップ:技術投資を決める財務担当取締役と、評価制度を設計する人事のトップが、エンジニアかどうかを確かめる
フェーズ4-10 オファー面談:内定後の条件確認で、フェーズ3-2の給与欄の裏取りを完了させる
どの局面でも共通して効く物差しは、総論で置いたとおりです。制度は一日で作れますが、使った人数は作れません。
8つの局面を歩くとき、みなさんは対等な対話の主体として立ちます。企業側が差し出した姿勢に対して、みなさんもフェーズ2〜3で積み上げてきたものを差し出す。互いの姿勢を、対等に照合する。この姿勢を、次のフェーズ4-2で相手の地図を手に入れたうえで、フェーズ4-3の書類選考から始めていきます。
7. 8つの局面の一貫性は、社内の日常の一貫性
シリーズ全体を貫く上位原則を、方向づけの視点から確認します。その会社は、エンジニアをプロフェッションとして育つ環境を持っているか。
総論で書いたとおり、この原則は8つの局面すべてに、同じ形で現れます。ひとつの局面だけを整えることは、社内の日常が別だと難しいのです。8局面の一貫性は、社内の日常の一貫性の上に立っています。
だから、みなさんが局面ごとに見てきたものは、バラバラの印象ではなく、1つの会社の姿の断面です。フェーズ4-11で、それを1枚に束ねます。
まとめ
本記事では、なぜ選考の中でも対等に確かめ合うのか、その土台を6つの視点から降ろしてきました。
プロフェッションの視座からは、選考の場でも独立性の姿勢を保つことが求められます。世界基準の視座からは、Engineerは選考の場でも会社を選ぶ側の主体です。生き方としてのエンジニアという視座では、面接の対話にその人の生き方の姿勢が滲みます。フェーズ1-3の視座からは、有名度と育成環境は別軸であり、そこから立てた3つの問いを面接の逆質問に変えていきます。フェーズ2の成果物という視座からは、積み上げてきた成果物が面接の対話の素材になります。フェーズ3の企業ポートフォリオという視座からは、読み込んできた企業ポートフォリオが、面接の対話の質を根本から変えます。
そして、選考のプレッシャーの中で姿勢を保つ3つのコツ(対話の素材を持ち込む/丁寧に聴く/面接ごとに振り返る)で、姿勢を整えます。
次のフェーズ4-2では、実践に入る前に、選考に出てくる人たちの地図をお渡しします。見ている時間軸、何に責任を負っているか、思考の層。この3つのモノサシで、目の前の相手の視座を読むお話です。
エンジニアの卵のみなさんへ、エール
思想の土台の話をたくさんしました。抽象的に感じた方もいると思います。でも、この土台があるのとないのとでは、フェーズ4-2以降の受け取り方が、まったく違ってきます。
今週、なにか一つ、始めてみてください。応募を決めた企業のうち、1社を選んで、フェーズ2で積み上げた成果物のうち、どれを面接で話題にできるかを書き出してみる。フェーズ3で読み込んだ企業ポートフォリオから、面接の逆質問に変えられる話題を1つ選んでみる。フェーズ1-3で立てた3つの問いを、その会社に対して自分で答えてみる。どれか1つで、本記事の1歩目です。
そして、フェーズ4-2で、相手の地図を手にしてお会いしましょう。
一緒に歩きましょう。ボン・ボヤージュ。素敵な旅を。
次の記事はフェーズ4-2「面接に出てくるのは、どういう人たちか。役職を知り、3つのモノサシで相手の視座を読む」です。
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