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ネトフリの『セイレーンの誘惑』が面白かった♡



Netflixのドラマ『セイレーンの誘惑(原題:Siren)』を一気見した。

全5話と見やすいし、舞台はアメリカの裕福な白人たちが集うプライベート・アイランド。そんな狭さが面白そう。
出演者はジュリアン・ムーアとケヴィン・ベーコン。私にとっては馴染み深いスターたちだけど、いまや彼らもネトフリに出る時代。軽い気持ちで見始めた。

タイトルにある「セイレーン」とは、ギリシャ神話に登場する魔性の存在。
美しい歌声で船乗りたちを惑わせ、破滅へと引きずり込む──抗えない魅力の象徴だ。

この物語の中で、その“セイレーン”にあたるものは何なのか。
その正体を知りたくなった。



最初に惹かれたのは世界観。

島に立つ豪邸は、明るいパステルカラーでコーディネートされ、まるで雑誌から抜け出たような洗練された空間。

バルコニーからも海が一望できる。けれど、島からはそう簡単には出られない。絶景のすぐそばには、足を踏み外せば命取りになるような崖がある。この空間の“美しさ”は、まるで檻のようにも見える。

パーティに集まった人々は、リリー・ピュリッツァーの服で華やかに装っていた。目が覚めるほど明るくて品のある「白人上流社会」の象徴ともいえるファッション。

そんな中、ひとりだけ古びた黒い服をまとい、タバコをふかしながら“外部の女”が登場する。明らかに場違いだし、品位もない。なのに、とても魅力的で、物語をかきまわしていく。このキャスティングは見事だと思う。



物語は、島での週末に起こるちょっとした“ドタバタ”の連続。
登場人物たちの人生が次々とひっくり返っていく。

なかでもメインとなるのは、50代の女性と、若い姉妹。当然、私は前者の視点で観てしまう。彼女が抱える感情に、ああ……もう遅いんだ。と、心が掴まれた。

これはある意味「老害」だ!年齢を重ねた者が、怒りや不満を処理できず、無自覚に他人を不幸にしてしまう姿。たとえどんなに親身にふるまって、ニッコリ微笑んでいても、胸の奥に沈んだ感情は、知らず知らずのうちに波となって周囲を飲み込んでしまう。

彼女はすべてを手にしているように見えた。でも、いちばん大事なもの──自分自身の中心を、どこかに置き去りにしてしまっていた。

そしてある日、自分の足元をすくうのは、他の誰でもない、自分がまいた種なのだ。

……すごく分かる気がした。
パラレルワールドには、そんなふうに老いていく私が、どこかにいるのかもしれない。



「自分の機嫌を自分で取る」というのは、もはや礼儀ではなくサバイバルだと思う。

若ければ許されることも、歳を重ねるごとに“毒”として周囲に漏れ出す。
本人にその自覚がないのが、なお恐ろしい。

実はそう感じたのは、先週ランチをした女友達の話が重なったから。彼女はひとまわり下の世代で、明るくて愛される人。でも、そんな彼女にしては珍しく、今の職場で苦しんでいた。原因はひとりの“お局”。自分のミスを他人に押しつけ、周囲にストレスを撒き散らすような存在らしい。そんな愚痴を聞いたあとで、楽しい話題で盛り上がった。

そして一昨日、彼女から連絡が来た。
「ねえ、あの上司、突然クビになったのよ」

その上司は、出社早々、私物をまとめさせられ、建物から出るように言われたらしい。これがアメリカの、容赦ないほど突然の解雇の様子。まるで映画のワンシーンのようで、さすがに少し気の毒になった。

でも、彼女は、職場の空気が一変したと喜び、なんと昇格の話まで来たという。この展開が、ドラマと重なる。


自分の感情を自分で整えられなくなったとき、人は無意識に“誰かを傷つける存在”になる。

このドラマのお局的な50代女性は、感情的になって毒を吐き散らしているわけもないが、胸の内にため込んできたものが周囲に漏れ出している。ネガティブ感情や不安や怒りとともに生きるのはごく自然なことであっても、それをどうするかで人生の方向性は変わっていく。

彼女の場合、地位や財政というものがある。
まるで魅力に見せかけて人を惑わせるセイレーンのように。
つまりこのドラマで描かれている誘惑とは、地位、権力、財力、そうした“社会的な力”の方であり、パワーバランスの揺れがメインとなっている。

自分のご機嫌くらい、自分で取れなくなったとき。

そのとき、私たちは甘い声を出すセイレーンになるのかもしれない。
気づかぬうちに、誰かの舟を、難破させてしまっているのかもしれないし、ごまかしがきかなくなったときに自分も溺れてしまうのだ。


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