ソロ活は、自分を喜ばせるデート
最近、なぜか、「女性の一人旅」という言葉が私の前によくあらわれる。
たとえば、SNSのフィードには、同年代やそれ以上の日本人女性たちが、海外を自由に旅する写真が次々と流れてくる。フォローしているわけでもないのに、どうしてだろう。
思わず文章にも目をとめてしまう。一人旅だからこその苦労もあるだろうに、それ以上に大きな喜びを抱えているのだろうと想像すると、「すごいなぁ!」と心から思う。
無力さを知ったローマの空港で
私は一人旅への願望がない。それをする自由はあるけれど、夫と一緒に旅をする方がずっと楽しい。この春は一人で日本に滞在したけれど、親や友人と頻繁に会っていたから、あれは旅というより帰省に近い。本当の意味での一人旅は、実はしたことがないのだと気づいた。
でも振り返れば、二十代には一人で海外に移り住み、三十代にはまだ小さな息子を連れて母子で何度も旅をした。あの頃は、自分が動かなければ何も始まらない旅ばかりだった。離婚後には恋人と旅行に出かけることも多々あり、楽しくも切ない思い出をつくった。そしてここ数年は、もっぱら夫婦での旅。ありがたいことだが、気づけば私はすっかり“おんぶにだっこ”になっている。
三年前、夫と一緒にイタリアへ行ったとき、手続きの不備で私だけがローマに取り残された。空港で涙がこぼれ、あまりの無力さに身震いしたのを覚えている。(まだ結婚前だったが、一足先にアメリカに戻っていた彼が、遠隔で色々と助けてくれて、その頼もしさにどれだけ救われたことか
アメリカの女友だちのソロバカンス
一方で、ここアメリカの同年代の女友人たちは、この夏それぞれ数か月の“滞在型バカンス”に出かけている。
パリに2か月間アパルトマンを借りて暮らす友人。前回は私も招かれて一緒に過ごしたが、今回はタイミングが合わなかった。別の友人たちは車を運転して北部へ向かい、Airbnbで家を借りてひと月の生活を楽しんでいる。家族や友人を呼ぶこともあるけれど、基本は一人。旅行というより、避暑地の別荘で過ごす感覚に近いのかもしれない。
先月、夫のヨガ仲間たちと朝カフェに出かけたときも印象的な出会いがあった。私と同年代の女性が「8月はグレート・スモーキー山脈でソロハイキングをする」と語り、さすがに周囲を驚かせていた。別の女性はキャンピングカーで全米の国立公園を巡る計画を話してくれた。アメリカの自然や距離感はあまりにスケールが大きく、女性ひとりで行くなんて!と、私はただ圧倒されてしまう。
「一人で旅をする時間って大切よね!」とその場ではみんな声をそろえ、うんうんと頷いていた。
けれど、本当に全員が心から賛同していたのかは、少し怪しい。
おそらく彼女たちは、すでに一人旅を何度も経験しているからこそ「今回も大丈夫」と思えるのだろう。場所を選べば、アメリカは驚くほど安全で、人もフレンドリーでとても親切。意外にも女性にとって一人旅しやすい国なのかもしれない。
でも、私自身ならどうだろう。パリのような街なら楽しめそうだけれど、アメリカの国立公園や長距離の一人ドライブには、まったく気が進まない。
見知らぬ土地を、国籍も年齢も越えて一人で歩く女性たち。その姿を見ていると、私の中に“欠けているもの”がふっと浮かび上がってくる。
そういえば春先に日本に滞在していたとき、一人旅をしている外国人女性とレストランで何度か隣り合わせた。日本なら安心だし、彼女たちにとっては自由で楽しい旅になるのだろうなと感じた。
ソロ活は大切
普段から“ソロ活”をしていないと、いざ一人旅を楽しもうとしても、ハードルは高いのかもしれない。
私も好きな、モーニングページで知られるジュリア・キャメロンの『The Artist’s Way』にも、「アーティスト・デート」という週に一度の“ひとり時間”が必須項目として書かれている。
Artist Date is a once-weekly solo expedition to do something that enchants or interests you──
つまり、自分だけのために、自分を喜ばせる小さな冒険を一人でやる習慣のことだ。(本は以下参照)
最近の私は、この部分をすっかり忘れていたと気づいた。
以前は一人でダンスに出かけていたのに、今は誰かと一緒でなければ足が向かない。ビーチにも一人で泳ぎに来ている人がたくさんいるのに、私はどうしても腰が上がらない。アーティストデートのことも忘れていた。
一人の時間を楽しむのは、もはや今の時代を映す小さなトレンドなのかもしれない。
海外の調査によると、2025年には「一人旅に興味がある」と答えた女性が45%に達し、わずか1年で37%から大きく伸びているという。ソロ旅行者の65〜70%は女性で、特に多いのは20代と50代の世代らしい。
その背景には、ソーシャルメディア上で「#solotravel」が急増し、日常に溶け込みつつあることがある。また、多くの女性が経済的にも精神的にも自立し、“自分のために時間とお金を使える”ようになったことも大きい。
ソロ活は、単独や1人を示す「ソロ」と活動の造語。
05年の流行語「おひとりさま」や、独りを示す「ぼっち」よりも前向きで、既婚・未婚や性別を限定しない言葉として定着している。コロナ禍を経て、お金や時間を自分のために使う、家族や友人がいてもソロ活を楽しむという傾向が強まっている。
と、去年の読売オンラインの記事にあった。
なるほど。
そして遭遇したメッセージ
今朝、地元の女性がSNSにこんな言葉を投稿していた。
「もしあなたが一人なら、どんどん外に出て楽しもう。パートナーがいなくても、友達が忙しくても、映画にも、レストランにも、カフェにも一人で行ける。海外旅行だって一人で楽しめる。だからこそ、遊ぶ相手がいないからといって、一人で家に閉じこもらないで」
その言葉には、たくさんの「いいね」が寄せられていた。
一人で活動する方が、出会いのチャンスは確実に増えるし、感覚のアンテナも鋭くなり、意識の広がり方もまるで違う。
ジュリア・キャメロンは「週に一度のソロ活は discipline(訓練)ではなく、play(遊び)である」と書いている。誰かとではなく「自分」とデートする貴重な時間は、心に新しい風を運んでくれる。
それは私自身も、これまで数えきれないほど体験してきた。けれどここ数年は夫婦単位の行動に偏りすぎていたのかもしれない。だからこそ、これからはもう少し“自分だけの時間”とのバランスを取り戻したいと思う。
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