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デジタルアクター試論 2. 最初の突破口は誰が開けるか

「トップガン」の一作目で印象的だった、トム・クルーズが駆ったGPz900R

デジタルアクター試論 目次

1. 発想の出発点——肖像権を払ってCGで作るという可能性
2. 最初の突破口は誰が開けるか
3. ブルース・リーという最有力候補
4. アイコンと役柄のバランス問題
5. 完全オリジナルのCGキャラによるスターシステム
6. 契約のパーセンテージ化
7. 仮面ライダー1号という日本の特殊事例
8. ルパン三世・クレヨンしんちゃんとの対比
9. 違う人が本郷猛を演じても定着しなかった理由
10. 今の仮面ライダーがほぼCGという逆説
11. 一文字隼人と佐々木剛氏
12. 美空ひばりとの違い——役を演じるか否か
13. 性格の可変性という基準——ブルース・ウェイン、長谷川平蔵、車寅次郎
14. 「群像劇化」が原点を重くする逆説
15. 特撮主演というキャリアの賭け——村上弘明、長谷川初範、細川茂樹、オダギリジョー
16. 西島秀俊という稀有な存在——シン・ウルトラマンからBLACK SUNへ
17. 西島秀俊と木村拓哉——芸能人としての格と俳優としての評価
18. 30代・40代の本郷猛を描くという可能性
19. 総3Dアニメ化という選択肢
20. フランケンシュタインの被造物として
21. 唯一無二性を生んだ三つの偶然
22. 撮影現場の一体感、という最後の鍵
23. ブルース・ウェインとクラーク・ケント——比較対象の精緻化、そして本郷猛の特異性のまとめ
24. 最初のデジタル化に生じる微妙な変更
25. 『ボヘミアン・ラプソディ』が示した「受け手の補完」
26. マイケル・ジャクソンの伝記映画
27. 『ワイルド・スピード』のブライアン・オコナーと、ドミニクたちの老い
28. 乱用するプロデューサーへの懸念
29. 「コモディティ化」と「民主化」という言葉の歪み
30. 政治権力による技術の独占とプロパガンダ
31. ゲリラ的パロディというもう一つの危険
32. 結語

 歴史を振り返っても、この手のパラダイムシフトは「技術的な完成」ではなく、「誰かがビジネスと感情のブレイクスルーを同時に成し遂げた瞬間」に、一堰を切ったように雪崩を打って進むのが常である。

 その「最初の突破口」を開けるのが誰で、どんな形になるのか、いくつかリアルなシナリオが想像できる。


 最も可能性が高いのは、誰もが文句を言えないレベルの超大物——例えばトム・クルーズやキアヌ・リーブスのような、映画の構造自体を変えてきた男たち——が、「自分自身のプロデュース(出資)で、20代の自分と現在の自分が共演する映画」を完成させて大ヒットさせるパターンである。

 権利者が本人であり、本人が「俺のデジタル・アーカイブを公式にこう使う」というガイドライン(座組み)を世界に提示すれば、周囲の倫理的・法律的な警戒心は一気に解ける。「本人があそこまでやって成功したなら、俺も」と、他のスターが追随するのは時間の問題になる。


 もう一つは「遺族主導」の巨大なビジネスモデルの成功である。

 歴史的なレジェンド——マリリン・モンローやジェームズ・ディーン、あるいは日本なら石原裕次郎のようなアイコン——の権利を管理する財団や遺族が、最先端のスタジオと組んで「完全新作の主演映画」を一本丸ごと作り上げ、それが批評的にも興行的にも大絶賛されるケースだ。

 これまでのような「一場面だけのサプライズ出演(お化け屋敷的な扱い)」ではなく、一本の映画として観客の涙を誘うほどの「魂の再現」に成功した時、「亡き名優の新作を観る」という行為がタブーから「文化的な救済」へと昇華する。


 さらにもう一つは、ゲーム業界や配信プラットフォームからの「裏口上陸」である。映画界が組合や伝統に縛られている間に、Netflixのような巨大資本や、Epic Games(Unreal Engine)のようなテック巨頭が、契約の縛りが緩い若手や中堅俳優を数百人規模で囲い込み、「あなたのデジタル分身を、10本のインタラクティブドラマに同時出演させます(もちろん不労所得です)」というシステムを確立してしまうパターンだ。

 「拘束されないのに、世界中のコンテンツから毎月ロイヤリティが入る」という果実を若い世代が貪り始めたら、旧来の「生身で現場に行ってナンボ」という常識は、あっという間に古いものとして駆逐されてしまう。

 最初の1人が道を作った後は、以下のような変化がドミノ倒しのように起こるはずだ。自分のデータをライセンスして稼ぐ「データホルダー(象徴)」と、そのCGキャラクターに現場で動きをつける「超一流のモーションアクター(実務家)」への分業という「俳優の二極化」。

 撮影機材やロケ地を持つ会社よりも、有名人の「デジタル資産」をどれだけストックしているかという「デジタル・エージェンシー」が業界の覇権を握る「スタジオの力関係の逆転」。


 かつて『トイ・ストーリー』が公開される前は、「誰もピクサーのフルCG長編映画なんて3回も見ない(目が疲れる、感情移入できない)」と言われていた。しかし、1本目のクオリティが全てをなぎ倒した瞬間、2Dアニメの時代は一気に塗り替わった。人間は、一度「違和感のない奇跡」を体験してその果実の甘さを知ってしまうと、それ以前の不便や倫理的葛藤には二度と戻れない生き物である。


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