「Solaria 2nd Stage 第十一話|覚醒」

「Solaria 2nd Stage 番外編|はじまりの音」
「Solaria 2nd Stage 第一話|星降る約束」
「Solaria 2nd Stage 第二話|ぎこちない光」
「Solaria 2nd Stage 第三話|はじまりの朝」
「Solaria 2nd Stage 第四話|揺れるスタートライン」
「Solaria 2nd Stage 第五話|見えない距離」
「Solaria 2nd Stage 第六話|すれ違うリズム」
「Solaria 2nd Stage 第七話|雨に溶ける声」
「Solaria 2nd Stage 第八話|雨の再会」
「Solaria 2nd Stage 第九話|重なりはじめる音」
「Solaria 2nd Stage 第十話|東京南地区予選」
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「第十一話 | 覚醒」
春の風が、やわらかく吹いていた。
星ヶ丘学園の桜は、いまがちょうど満開で——
空を埋めるように咲き誇っている。
風に揺れるたび、光がきらめく。
まだ何も終わっていない、
そんな気がした。
■ 静かなズレ

ダンス室に、音楽が流れている。
けれど——
どこか、噛み合っていなかった。
「……もう一回」
ひなたの声は、いつもより少し低い。
誰も反論しない。
ただ、もう一度動き出す。
足が合わない。
タイミングがズレる。
目線も、揃わない。
(なんで……?)
さくらは、息を整えながら思う。
予選を突破したはずなのに。
本選に進めるはずなのに。
——なのに、前よりも遠い。
■ 現実

休憩。
誰も、すぐには口を開かなかった。
「……ねえ」
最初に話したのは、しおりだった。
「本選は、五人で出られる」
淡々とした声。
「それは、分かってる」
全員が、わかっていること。
だからこそ、誰も言えなかったこと。
「でも——」
しおりは、一度言葉を切る。
「完成させる時間が、足りない」
空気が、止まった。
「卒業式が終われば、私たちは“部員”じゃなくなる」
「時間も、揃わない」
「今のままじゃ——」
その先は、言わなかった。
言わなくても、伝わってしまうから。
ゆいが、小さく笑う。
「……私たちが残ると、“迷い”になるよ」
優しい声だった。
でも、それが一番残酷だった。
さくらは、何も言えなかった。
言葉が出てこない。

「だから——」
しおりが、静かに結論を置く。
「本選は、三人で行きなさい」
その一言で、
すべてが、決まってしまった気がした。
■ 屋上

夕焼けが、校舎を染めている。
五人並んでいるのに、どこか遠い。
誰も、話さない。
風の音だけが、流れる。
「……これで、良かったのかな」
さくらが、ぽつりと呟く。
答えは、返ってこない。
ひなたも、何も言わなかった。
ただ、空を見ていた。
それが——
いちばん、怖かった。
■ 終わりに向かう時間
次の日。

ゆいは、楽譜を整理していた。
一枚一枚、大切に揃えていく。
しおりは、部室の鍵を机に置く。
音が、小さく響く。
それだけで、
すべてが終わる気がした。
■ 呼び出し
放課後。
五人は、呼ばれていた。

学園長室。
扉の前で、誰も動かない。
「……行こ」
ひなたが、そう言った。
■ 学園長室
重い空気。
「あなたたちのステージを、見ました」
学園長の声は、静かだった。
誰も顔を上げられない。

「正直に言いましょう…」
一拍。
「当然の事ですが規則上、3年生は卒業後の部活動は認められていません」
——やっぱり。
誰もが、そう思った。
視線が落ちる。
その時だった。
「——ですが」
別の声。
理事長だった。
空気が、変わる。
「例外を作る価値があると、私は判断しました」
誰も、理解できなかった。
「あなたたちは——」
一瞬、言葉を選ぶように間が入る。
「“部活動”ではなく、“誰かの未来を動かしている”」
その言葉が、ゆっくりと落ちてくる。
「よって、特例として認めます」
「卒業後も——」
「水瀬さんと白石さんの二人は大学2年の夏休みまでスクールアイドル部の部員としての活動を」
■ 時間が止まる
誰も、動けなかった。
「……え?」
さくらの声が、震える。
ゆいの頬に、涙が落ちた。
しおりは、何も言えずに立ち尽くす。
ひなたが——
一拍、置いて。
「やったじゃん!!!!」
その瞬間。
すべてが、弾けた。

「え、え、ほんとに!?」
「うそでしょ……!」
「やば……やばい……!」
笑って、泣いて、
ぐちゃぐちゃになって、
でも——
確かに、繋がった。
■ 再起動

音楽が流れる。
ダンス室。
動きが、揃う。
目線が、合う。
呼吸が、重なる。
迷いが、ない。
「もう一回!」
ひなたの声が、響く。
今度は、誰よりも強かった。
■ 翌朝の屋上
青い空。
五人が並ぶ。
今度は、ちゃんと同じ方向を見ている。
「これで——」
ひなたが言う。
「やっとスタートだね」
さくらが、少し笑う。
「うん」
「まだ、終わってなかった」
風が吹く。
桜が舞う。
その先に、
“未来”があった。
■ 暗いスタジオ

ノイズ
とわが弦を鳴らす
「Solaria……」
しのん(軽く笑う)
「あのグループ?」
とわ
「関係ない」
きょうか(小さく)
「音で分かる」
めい(スティック回しながら)
「叩き潰せばいいんでしょ?」
一瞬の静寂
とわ
「最後に残るのは——」
ギター一閃
「私たち」
暗転
第十一話 覚醒 (終)
▶ Solaria 2nd Stage 第十二話|
― 君がいるから ― へ続く
