【あとがき副音声】名前のない感情につける、言葉を探している #3
双葉社 文芸総合サイト・COLORFULで連載中のエッセイ、『明日死んでもいい、そう思えるほどに今日を生きたくて。』の最新話が更新となりました。
第3話は、【モノローグと残響】。
叶えたかったけど、届かなかった夢。かつて人生を賭けたものに、静かに背を向けて歩き出す、その心の機微を綴りました。
もしよかったら、コメントやメッセージやSNS等で、感想をお寄せ頂けるととても嬉しいです。
noteでは、連載公開の度にあとがきを残しています。よければ連載を読んで頂いた後、副音声的な気分でこちらも覗いていってみてくださいね。
「モノローグと残響」執筆後記
連載をどう進めていくのか、なんて正直今もよくわからないのだけど、例えば事前に先々までエピソードの順を組んでいるのかというと、まるでそんなことはない。私の場合、毎回一体自分が何を書こうとしているのかわからないまま突入することが多い。よし書くか、と携帯を握りしめ(私は原稿を基本的にiPhoneのメモ帳で書いている)、キーワードを頭の中に羅列する。それにまつわるエピソードを思い出したりしながら、インスピレーションが広がりそうな出来事や思想を手繰り寄せる。
今回のお話は、音楽について。連載中のどこかで書きたいなと思っていたテーマだ。ただ、最初から難航するであろうことが自分でもよくわかっていた。なぜならそれは、私がかつて自分の人生を捧げた(と思っていた)ものだから。きちんと掘り下げないと陳腐な話になってしまいそうなので、それなりのカロリー消費が予想された。どこに着地したいのかも不確かなまま、時にAIに励まして貰いながら何度も言葉を濾し、心のずっと奥の方に閉まっていた感情を取り出す。じりじりと、ひとつずつのエピソードを咀嚼して飲み込むように腑に落としながら進めたため、もの凄い時間とエネルギーがかかってしまった。
孤独の静けさに逃避したい時には、今でもクラシックピアノを聴く。ピアノの音色にしか開けない私の中の帳があって、その向こうにある感情を、私は長いあいだ傍観してきた。今回この話を書いたことで、ようやくその正体を掴めた気がしている。
まだ名前のついていない複雑な感情を掬い取ってくれる、言葉を探す作業。言葉にならない最中は、自分の書き手としての未熟さを突きつけられるようで苦しいが、しっくりくる言葉がはまった時には、その感情を手放せたかのような開放感がある。きっと書くことは、許すことで、癒すことで、認めること。感情という形のないものに、形のある言葉を当てはめようとする行為自体が無謀ではあるが、時にそれが自分の、そして誰かの心をも抱きしめてしまうから、苦しいと思いながらも、きっと私は書くことをやめられないのだろう。
タイトルにあるように、これは私が私自身と真っ直ぐに向き合ったモノローグ=独白である。それが、もしも読んでくださった誰かの残響と重なることができるのなら、それほど嬉しいこともない。
第4話の公開は、2月6日(金)。ぜひ本編もあとがきも、読んで頂けると嬉しいです。
▼連載もくじ
【第1話】名前を生きる | 〈本編〉・〈あとがき〉
【第2話】続きのない物語 | 〈本編〉・〈あとがき〉
【第3話】モノローグと残響 | 〈本編〉・〈あとがき〉
【第5話】マヨネーズ入りのスクランブルエッグ | 〈本編〉・〈あとがき〉
【第6話】キテンゲと金曜日の午後 | 〈本編〉・〈あとがき〉
【第7話】同じ物語の違う登場人物 | 〈本編〉・〈あとがき〉
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