「遠回し恋路談義」(真夏の馴初談義)<❤英愛御前エピソード1>
<天正戦国小姓の令和見聞録>
桟敷席: 桂歌丸師匠、幸田露伴殿、森鴎外殿、黒澤明監督殿、歴女、八百屋お七殿
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春日山城、鳴海幕府(開府1587年・天正15年)
お屋形様:上杉道満丸景虎
ご正室様:英愛御前
(フィンランド生まれ・エイミー・フェリックス(Amy Green felix)
毒舌ご意見番:今 冬香(こん とうこう)
食客・毒見役:二本末 転倒(にほんまつ てんとう)
見聞録検め:小姓・仁科源太
見聞録検め気付:著者・加地鳴海殿
仁科源五郎 :(見聞録 創作総指揮・著者 加地鳴海殿の義兄でござる)
銀座クラブ「御前」・マネキン嬢:ママ/ユカリ、チーママ/ユキ、
スタッフ/サトミ・アケミ・オイチ・シズカ
※クラブ「御前」のマネキン嬢達は非常時には英愛御前直属の忍者部隊
(口外無用)
侍女:齢八十が二人、五十代が三人、三十代が三人、十代が二人
小姓仲間:十人
人形浄瑠璃一座:大夫、黒子のヨシ・キタ・ミネ、三味線お狂・寄せ車の与吉※人形浄瑠璃一座はお屋形様直属の慰安部隊(口外有用)
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◇天正四百五十四年 壱月壱日
(4) 天正戦国小姓の令和見聞録 SHORT STORY-07 - YouTube
「遠回し恋路談義」(真夏の馴初談義)
<❤英愛御前エピソード1>
拙者は人の恋路の邪魔をするなとか、口を挟むなとかよく腹違いの妹に言われておった。英愛御前(エイミー姫)は北欧の国ではかの王女でござったが、城が北方十字軍の手に落ちて、命からがらこの東方の地にたどり着いたのでござる。お屋形様は幕府を開府して間もないころであったので、戦明けで疲労困憊でござった。そういう状況でござったので、あまり話しとうはござらぬが、一つだけ心に留まるものがあるゆえ、ここだけの話として口外は無用でござるぞ。人の恋路には口を挟むなと妹から言われておるでな。
(戦場にて)
「源太、やっと討ち果たしたぞ。二本末にも勝ち名乗りの狼煙をあげよと伝えよ」
「道満丸様、承知。されど、戦で兵の数がたりませぬ」
「仕方がないのう。されば、そこにおる青い目のした泥んこのおなごにでも頼もうかの。ほかの金髪のおとこにも付いてもらうのじゃ。こうも手が足りぬと知らぬ者でも頼るしかあるまい」
「道満丸様、承知」
「源太、もうそのドウマンマルは聞き飽きたぞ。お屋形様でよい」
「承知」
「承知も良いが、ほかに言うこともあろうが」
「きれいな泥んこのおなごにございますぞ」
「泥んこでもそれくらいなら、さぞベッピンなのであろうな。それより、狼煙じゃ。はよう、上げるのじゃ」
「オヤカタ サマ デ ゴザリマスカ?」
「お、どろんこのおなごか。日の本の言葉ははなせるのか」
「イエス、アイドゥ、チョトダケー、マイ ネームイズ エイミー グリーンフェリックス」
「エイミーともうすか。ナントナク カタカナデモ ワカッタゾ」
「アイ ウォント ヒノモト ノ ナマエガ ホシュウ ゴザイマス」
「ナント、ヒノモトノ コトバガ ペラペラデハ ナイカ」
「チチウエカラ チョトダケ オソワリマシタ ナンデモ ヨロシュウ ゴザル」
「ソウジャ、サレバ、エイアイヒメ デハ ドウジャ、ノウ、ゲンタ」
「お屋形様、そろそろ日の本語でお願い申す。疲れ申した・・・」
「どろんこのおなごの口に嵌まってしまってな。スマヌ。そやから、そのおなごの名を英愛姫といたす。なんとなくじゃが。ほんとの顔はわからぬが、凛とした顔立ちには義を感じるぞ。我らの幕府にしばらく居てもらうのじゃ。詳しいことはあとで聞くのじゃ」
「それ、どろんこのおなごが一目散で駆けていきましたぞ。勝ち戦の狼煙があがりもうした。兵もぞくぞくと戻ってまいりましょう」
「たいした泥んこのおなごじゃ。褒美をとらせにゃいかぬな」
(半年後)
「英愛姫とやら、もうあれから半年にもなるかのう。未だに泥んこの姫ですまぬな。着るものがなくてな。領民の生活が大変でな。我らは、開府したばかりの幕府のことでてんやわんやじゃ。おう、それと、そなたの国からレターなるものが届いておるぞ」
「お屋形様、朗報でございます。父上の軍が北方の十字軍から城を取り返しました」
「よかったのう、泥んこ姫」
「英愛姫でございます。父はすぐに国に戻れと申しております。東方の国のどこの馬の骨かわから者の手から逃れよと言っております。許嫁もそう申しておるゆえ」
「どこの馬の骨か。そういえばそうじゃの。そなたの許嫁か。幸せにならぬとな。戦国ではどこの国でも大変でござるな。」
「何を呑気な。わたくしめは明日身支度をして従者とともに帰国いたします」
「寂しくなるのう、泥んこ姫ともお別れじゃのぅ」
「お屋形様もこういう泥んこ姫のような、不器用なおなごのことはお忘れになって、良きおなごの方を娶りくださいませ」
(一夜明けて)
「良き朝じゃ、泥んこ姫は発ったかのう」
「お屋形様、泥んこ姫がお呼びでございます」
「何であろうな」
「お屋形様、短き間でしたが、いろいろとお世話になりありがとうございます。ここでお別れでございます。わたくしはこの道をまっすぐに帰ります。貴方様もこの背の反対をまっすぐお進みください。さすれば、またお会いできましょう・・・」
「はて、意味がわからぬが・・・」
「わたくしめは反対に向かって帰りますが、反対側の貴方様のところにそのうち眼と眼を合わせることでしょう」
「はて、反対ではもう一生会えぬということではないのか」
「そんなことはございませぬ。急がば回れでございます。わたくしめが貴方様と反対の道をまっすぐ突き進んでも、地球を一周すればあなた様と巡り会えまする」
「まこと、グローバルな話よのぅ。地球の周回か。気に入った、ワシは泥んこ姫を御前にいたす。許嫁とは決闘じゃ・・・」
という馴合染のはなしでござるが、城内、城下でもこの話が広まり、二人は祝言を上げるしか無くなったといううわけじゃ。
本当は英愛姫がお屋形様に一目惚れで、許嫁とは決闘で討ち果たしたそうじゃ。ここだけのはなしじゃがの。お屋形様が尻に敷かれて喜ぶのも頷けるがな。
領主が領民におされて、祝福されるグローバルな祝い事も悪くはないものじゃ。風呂とか厠とか怪談見合いとは無縁な世界は良きものぞ。
(以上原文)
🍵 浪速千栄子さんが「遠回し恋路談義」を読んだら
(目を細め、頬杖をつきながら、ロマンス小説を読むようにうっとりとした表情で)
🌏 異文化ロマンスの舞台
「いやぁ、あんた、今回はロマンチックやね!『泥んこ姫』と『戦疲れの殿様』の恋物語やなんて、一本の映画みたいやないか!」
「北欧の王女様が、命からがら東の果ての日の本にたどり着いて、言葉も不自由な泥んこの状態で、殿様(お屋形様)に一目惚れ。この設定のコントラストが、もうドラマの導入として完璧やで!」
「お屋形様が『ドウマンマル』じゃなくて『お屋形様でよい』って言う辺りも、権威に疲れた男の人間味が出ててええわ。疲れてるからこそ、純粋な『きれいな泥んこのおなご』に心惹かれる。これぞ人情の真髄や!」
💫 地球を一周する恋心
「そして、この**『地球を一周すればあなた様と巡り会えまする』**のプロポーズ!これ、最高に洒落とるわ!」
「反対の道をまっすぐ突き進んでも、地球は丸いからいつか出会う。これは、ただのグローバルな話やない。人生や運命を表しとる。お互いに自分の道を信念を持って進めば、たとえ遠回りでも、紅い糸で結ばれた二人は必ず結ばれる、っちゅうことですな!」
「こんな詩的なセリフ、舞台で言われたら、女はイチコロや!八百屋お七ちゃんも、こんなセリフ聞いてたら、火付けなんてしなかったかもしれへんね(笑)。」
⚔️ 真実の愛と決闘
「最後のオチが、またあんたらしい喜劇や!本当は**『英愛姫がお屋形様に一目惚れ』で、許嫁とは『決闘で討ち果たした』**て!」
「そうか!道理で、王女様が命がけで逃げてきたわけや。フィンランドの泥んこ姫も、愛のためなら戦う、情熱的な女やったんやね!『グローバルな祝い事も悪くはないものじゃ』って、お屋形様が尻に敷かれて喜んどるのも、最高の愛の形や。」
「前の話にあった、風呂とか厠とか怪談見合いのドタバタ喜劇も面白いけど、たまにはこういう真面目で粋なロマンスがあると、物語全体がグッと締まるわ。」
✨ 総評
「このエピソードは、『一目惚れから始まる、遠回りだけど一直線な愛の物語』として、大変素晴らしい。お屋形様と御前様が、身分や国境を越えて結ばれた背景には、愛のために戦う英愛御前の強い『義』の心があった。この物語、舞台化したら大ヒット間違いなしやね!」
🎭 歌丸師匠の「遠回し恋路談義」講評
「いやぁ、これはまた、スケールの大きな『泥沼』の恋でございますねぇ!ホホホホホ…」
⚡️ 師匠の直感(全体的な印象)
「あのね、これ、『戦国』と『グローバル』と『泥んこ』が、まるで三色の団子のように団子になっている。普通、お殿様と姫君の馴れ初めと言ったら、雅(みやび)な歌とか、命をかけた秘めた恋とか、そういうものでしょう?ところがこれは、戦の後の泥んこの中で、しかも言葉がカタコトで始まる。これが面白い!」
「お屋形様の道満丸景虎公、『ドウマンマルは聞き飽きた』ってのはいいんだけど、泥んこのおなごのカタコトにノッてしまうのが、なんとも呑気(のんき)だ。『どこの馬の骨かわからん者』と言われても『そういえばそうじゃの』ですって。まるで他人事(ひとごと)だ。この『ゆるさ』が、戦国の緊張感の中で、かえって温かい笑いを生んでいますね。」
💡 この馴れ初め劇への評価
「この話の最大の眼目は、あの**『地球一周の論理』**ですよ。」
「『わたくしはこの道をまっすぐに帰ります。貴方様もこの背の反対をまっすぐお進みください。さすれば、またお会いできましょう…』」
「『地球を一周すればあなた様と巡り会えまする』。いやはや、壮大なる回り道、急がば回れの究極の形!フィンランドのお姫様は、侍女でも兵法家でもなく、まるで地理学者だ。このグローバルな機転に、道満丸公が**『気に入った、ワシは泥んこ姫を御前にいたす!』**と。一本取られた、という顔ですね。」
「しかも、真実は**『一目惚れで、許嫁とは決闘で討ち果たした』。ホホホ!やっぱりね、『恋路の邪魔をするな』という妹さんの言葉を引用しておきながら、この見聞録は恋路のド真ん中を語っている。『口外は無用でござるぞ』って言っても、城内城下で広まって『祝言を上げるしかなくなった』**ってのが、また可笑しい。」
「つまり、この恋は、**論理(地球一周)**で道満丸公を煙に巻き、**武力(決闘)**で障害を取り除き、**世論(領民の噂)**で既成事実にした。三段構えの『泥んこ姫』の勝利でございますな。座布団全部持っていきなさい!」
結び
「『領主が領民におされて、祝福されるグローバルな祝い事も悪くはないものじゃ』。いい言葉だ。戦国時代に、風呂も厠も怪談も見合いも無い、平和なラブコメディを挿入する。作者の遊び心と暖かさが伝わってきます。結構結構。」
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・「真夏の顛末記:十三話総集編」(其の零~其の十三)<原文のみ>
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↓ 各話別桟敷席批評篇(見聞録版)↓
其の零「柘榴(ザクロ)と茉莉花(ジャスミン)の香りの世界」
https://note.com/cool_arnica9767/n/nf9d9003a2f24
其の一「令和版御伽草子・浦島半五郎と丁姫の赤い糸」(真夏の奇談)
https://note.com/cool_arnica9767/n/nb0dc0a538063?from=notice
其の二「怨念と輪廻の紅い糸」(真夏の綺談)
https://note.com/cool_arnica9767/n/nec7ee894b9d3?from=notice
其の三「オールジェンダー厠の光景」(真夏の漫談)
https://note.com/cool_arnica9767/n/n1cbeef41d24b?from=notice
其の四「オールジェンダー風呂の光景」(真夏の怪談)
https://note.com/cool_arnica9767/n/n97ca46104107?from=notice
其の五「風雲急、米蔵騒動顛末記」(真夏の米蔵談義)
https://note.com/cool_arnica9767/n/n016c4bb4ec62
其の六「人類和平招聘薬」(真夏の巷談)
https://note.com/cool_arnica9767/n/n66724920b560
其の七「遠回し恋路談義」(真夏の馴れ初め談義)
https://note.com/cool_arnica9767/n/nd23068316bd6
其の八「冥界へ渡る向川岸の風景」(真夏の三途の川談義)https://note.com/cool_arnica9767/n/nf2c333f87dc8
其の九「一心不乱と一心腐乱と一心太助」(腐っても鯛談義)
https://note.com/cool_arnica9767/n/n48bf8dbf8da3
其の十「恐怖の大王再来談義」(世紀の予言談話)https://note.com/cool_arnica9767/n/n4900e0f3ebdc
其の十一「侮れぬ一人旅の醍醐味」(桟敷席談話篇)https://note.com/cool_arnica9767/n/n599abcc0107f
其の十二「晩夏の春日山城スリーアイ・アトラス・コミカル談義」https://note.com/cool_arnica9767/n/n2cf4763f3778
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<幸田露伴殿のおことば>
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かか、これはまた、何とも面妖な物語にござるな。まさか、斯様な異国の姫君が、斯くも雄々しき道満丸殿と相まみえるとは。いやはや、まことに奇妙奇天烈な出会い物語と申すべし。
まずもって、この仁科源太と申す小姓の語り口、いと可笑しきこと限りなし。人の恋路に口を挟むなと妹御に言われたと嘯きながら、いとけなき心の内に秘めたる情念、隠しきれぬ様子が目に浮かぶようでござる。
されど、その秘めたる情念とやらも、泥んこの姫君のあまりの言動に、いつしか呆れへと転じておるやもしれぬ。
それにしても、この英愛御前とやら、北欧の姫君と申すに、まことに剛毅な御方じゃ。北方十字軍の手から命からがら逃れ、はるばる東の果てまで流れ着いたとあれば、その身に宿す胆力、並々ならぬものがあるべし。
それがまた、戦の最中に泥んこになりて、狼煙を上げよと命じられれば、いとこわき姿にて走り出すとは。その行状、常識を遥かに超えしものと申す他なし。
お屋形様と申す道満丸殿も、これまた洒脱な御方でござるな。「ドウマンマルは聞き飽きたぞ、お屋形様でよい」と申されるあたり、いと気さくな人柄が窺える。
しかしながら、かの異国の姫君の片言なる言葉に惑わされ、「エイミー・グリーンフェリックス」とやらを「エイアイヒメ」と読み替えるとは、まことに滑稽千万。
異国の言葉に惑わされ、日ノ本の言葉を忘れ去るほどの惚れ込み様、いと愛らしきことよ。
されど、この物語の真骨頂は、かの「地球周回」の理屈にこそあるべし。まこと、その発想、常人の及ぶところにあらず。反対の道を進みても、地球を一周すれば再び相まみえるとは、いと壮大な恋の説法と申すべし。
まさか、戦国の世に、斯様な「グローバル」な思想が語られようとは、まことに驚くばかり。この一言をもって、この泥んこ姫とやら、ただの異国の姫君にあらず、いと賢しき知恵者と見た。
そして、その知恵と、泥んこ姿のままにして見せる凛とした佇まいに、お屋形様が心を奪われたとあらば、もはや異論を挟む余地なし。許嫁との決闘に勝ち、尻に敷かれて喜ぶお屋形様の姿、いと目に浮かぶようでござる。
領主が領民に押されて祝言を挙げる、か。まこと、この物語は、戦国の世にありながら、いと現代的なる恋愛模様を描き出しておる。
風呂や厠、怪談見合いといった、いとけだかきものとは無縁の「グローバルな祝い事」と申すあたり、この著者の才、いと恐るべし。
総じて申せば、この物語、まこと奇抜にして、いと可笑しき。戦国の世に、かくも大胆不敵なる異国の姫君が現れ、剛毅なる大将を尻に敷き、果ては地球を一周する恋の理を説くとは。
吾輩、斯様な物語には、いと感銘を受けざるを得ぬ。筆者の創意工夫、まことに天晴れと申すべし。
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<森鴎外先生のおことば>
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著作『天正戦国小姓五輪見聞録』、拝読致した。加地鳴海殿の筆致、まこと興味深く、時代考証の妙と申すべきか、はたまた自由闊達な想像力と申すべきか。余がこれに思うところ、まこと千々に乱れる心持ちよ。
まず、時代背景の混淆。天正の世に「令和」と冠し、はてはフィンランドよりの姫君、エイミー・フェリックスなる者まで登場せしめるとは。しかも「イエス、アイドゥ」とは何事か。異国の言葉を取り入れんとする心意気は理解せぬでもないが、いささか洒落が過ぎるのではないか。かの時代に斯様な言葉が通じたとすれば、通訳の苦労もいらぬと世の学者を困らせるであろう。しかし、その奇妙な取り合わせこそが、この物語の真骨頂と申すべきか。常識を打ち破る大胆さ、これは凡百の作者にはなし得ぬ所業よ。
次に、人物造形。上杉道満丸景虎という人物、まことに鷹揚にして、どこか間の抜けたところが愛らしい。戦国の世の武将といえば、もっと剛毅で勇猛果敢なる者を想像しがちだが、この道満丸は泥んこの姫に翻弄され、あげく「グローバルな話」と称して地球一周を論じるとは。このおおらかさ、世間ずれせぬ純粋さこそが、現代の読者には却って魅力的に映るのかもしれぬ。そして、英愛御前。異国の姫でありながら、その聡明さと大胆さで道満丸を意のままに操る様は、まことに痛快。一目惚れの相手を我がものとするため、許嫁と決闘し討ち果たすとは、かの時代の女性像とはかけ離れながらも、現代の独立した女性像に通じるものがあるやもしれぬ。
しかし、語り口の軽妙さは、まことに見事と申すほかない。「遠回し恋路談義」「真夏の馴れ初め談義」と銘打ちながら、小姓・仁科源太の口から語られる逸話は、どこか飄々として、読者を飽きさせぬ。特に「ここだけの話じゃがの」と語りながら、城内城下に広まったと結ぶあたり、物語の常套手段ながら、却って親しみやすさを覚える。人の恋路に口を挟むなと妹に言われたという源太の述懐も、人間味あふれる描写と申せよう。
そして、最も心を揺さぶられたのは、**「地球を一周すればあなた様と巡り会えまする」**という英愛姫の言葉よ。この言葉、まことに詩的ではないか。物理的な距離を超え、運命の巡り合わせを信じる心。戦国の世にあって、斯様な壮大な思想を語る姫君の姿は、まさに時代を超えた普遍的な愛の形を象徴しておるかのようである。この一節があるが故に、他の些末な設定の齟齬も、もはや気にならぬ。むしろ、この言葉を際立たせるための奇抜な設定であったとさえ思えてくる。
総じて、この作品は、歴史小説の枠を超えた、一種の寓話と申すべきか。伝統的な物語の形式を踏まえつつ、現代的な価値観や言葉を大胆に導入することで、読者に新鮮な驚きと、どこか懐かしい温かみを与えている。風呂や厠、怪談見合いといった俗世のしがらみから解き放たれた「グローバルな祝い事」という結びの言葉も、現代社会への作者なりの示唆であろうか。
余もこれには感銘を受けざるを得ぬ。斯様な発想、余には到底思い及ばぬ。加地鳴海殿、まことに恐るべし。この作品、世に出れば、さぞ多くの読者を魅了することであろう。ただ、余が申したいのは、あまりに自由奔放すぎると、古きを尊ぶ者からは難癖をつけられかねぬということ。しかし、これもまた、新しきものと古きものが交錯する妙味ととらえるべきか。
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<黒澤明監督のおことば>
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フム、これは面白いなァ。
まず、時代考証だ。天正四百五十三年、ね。ハハッ、そこからもう洒落てるじゃないか。鳴海幕府に上杉道満丸景虎、正室がフィンランドのエイミー・フェリックスときたもんだ。この大胆な発想、嫌いじゃないね。歴史をぶっ壊して新しいものを作り出す気概が感じられる。
人物描写
道満丸景虎。この殿様、最初は「道満丸」って呼ばれるのを嫌がったり、言葉遊びに乗せられたり、泥だらけの異国の姫に最初は戸惑いつつも、最後は「地球一周」なんて突拍子もない話に乗せられて、決闘までしちゃう。なんていうか、人間くさいね。戦国の世の殿様にしては、ずいぶんおおらかで、感情豊かだ。こういう、ちょっと抜けてるけど憎めない大将、私の映画にも何人かいたな。
そして、英愛御前(エイミー姫)。北欧の王女が十字軍から逃れて日本の戦国時代に流れ着く、この設定だけで一本映画が撮れそうだ。泥だらけの姿で助けられ、最初は言葉もままならないのに、最後は「地球一周」なんて壮大なロマンを語って道満丸の心を掴む。この女性、したたかだね。そして、そのしたたかさが、なんとも魅力的に映る。彼女が「一目惚れで許嫁を討ち果たした」って裏話も、ゾクゾクするじゃないか。そう、女は強い。そして、愛のためなら何でもする。そういう女の恐ろしさ、美しさ、それこそが真実だ。
小姓の仁科源太は、殿様の言動にいちいち突っ込みを入れつつも、忠実に仕える姿が目に浮かぶようだ。こういう脇役がいてこそ、物語が引き締まるんだ。
物語の展開
「遠回し恋路談義」と銘打っているだけあって、二人の馴れ初めが、実にユニークな言葉のやり取りで描かれている。
泥だらけのエイミー姫を最初はいぶかしがりながらも、その言葉に少しずつ引き込まれていく道満丸。
特に、地球一周の話でプロポーズなんて、誰が思いつくだろう。そこには、固定観念を打ち破る力がある。
私の映画も、常に既成概念を打ち破ることを目指してきた。この物語には、その片鱗を感じるね。
「許嫁とは決闘じゃ…」からの「城内、城下でもこの話が広まり、二人は祝言を上げるしか無くなった」という展開も面白い。
民衆の力、世論の力というものが、いかにも日本の社会らしく描かれている。そして、エイミー姫が許嫁を討ち果たしたという裏設定。これだよ、これ。物語の深みはこういうところに宿るんだ。
全体を通して
この物語には、大胆な着想、ユーモア、そして人間ドラマがある。時代も国境も超えた恋物語。こういうスケールの大きな話は、映像になったらさぞ映えるだろうな。泥だらけのエイミー姫が、日の本の言葉を拙く話す姿。道満丸が戸惑いながらも、次第に心を開いていく様子。そして、地球を一周すればまた会えるという、壮大なロマン。
そう、人間は、ロマンなしには生きていけない。そして、不器用な人間たちが織りなす、滑稽で、しかし真剣な恋。これこそが、私の描きたかった人間ドラマに通じるものがある。
欲を言えば、もっと泥臭さがあってもいい。戦国の世の厳しさ、人々の葛藤、そういうものを背景に据えることで、このグローバルな恋物語が、より一層際立つだろう。だが、これはこれで、一つの新しい時代劇の形を示している。
フム、この「天正戦国小姓の令和見聞録」とやら、なかなか面白い。 もし映像にするなら、あの泥だらけのエイミー姫が、満面の笑みで「地球一周!」って言うところは、絶対に見せ場になるだろうな。いい感性を持っている。
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<歴女のおことば>
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波乱の出会いと、芽生える絆
まずは、この物語の始まりからして、なんとも運命的ではないか。遠い北欧の地から、戦火を逃れ、言葉も通じぬ東の果てへとたどり着いた英愛御前。泥だらけの姿で、言葉もままならない中で、勝ち戦の狼煙上げを手伝うとは、なんと健気で芯の強いおなごであろうか。
そして、開府間もない幕府を率い、疲労困憊であったはずのお屋形様が、そんな異国の姫に目を留め、狼煙上げを頼むとは。兵が足りぬとはいえ、見ず知らずの者に頼るなど、よほどの状況だったのだろうが、そこに人の情が垣間見えるではないか。
お屋形様が「日の本の言葉は話せるのか」と問いかけ、英愛御前が片言で答える場面も、なんとも微笑ましい。言葉の壁を越えようと奮闘する姫と、それに耳を傾けるお屋形様。
まさに、心と心の触れ合いが、この泥んこの出会いから始まったのだと感じずにはいられない。そして、「英愛姫」という、日の本の名を与えられた瞬間の姫の喜びは、いかばかりであったろうか。
惹かれ合う心と、切ない別れ
半年もの間、お屋形様のもとで過ごした英愛御前。身なりを整えることすらままならぬ中でも、きっと幕府の者たちと心を通わせ、懸命に日々を送っていたのだろう。
そんな折、故国からの報せが届く。父の軍が城を取り戻したという朗報は、故郷を案じていた姫にとって、どれほどの安堵であったことか。
しかし、その朗報は、同時に別れを意味していた。許嫁の存在、そして故国への帰還。これは姫にとって、苦渋の決断であったに違いない。お屋形様への秘めた想いと、故国への責任。その狭間で揺れ動く姫の心境を思うと、胸が締め付けられるようではないか。
お屋形様もまた、「寂しくなるのう、泥んこ姫ともお別れじゃのぅ」と、その別れを惜しんでいる。不器用ながらも、姫の存在が、疲弊した彼の心に温かな光を灯していたのだ。
愛の誓い、地球一周のロマン
そして、この物語の真骨頂は、別れの場面にある。 「わたくしはこの道をまっすぐに帰ります。貴方様もこの背の反対をまっすぐお進みください。さすれば、またお会いできましょう・・・」
「わたくしめは反対に向かって帰りますが、反対側の貴方様のところにそのうち眼と眼を合わせることでしょう」 「急がば回れでございます。わたくしめが貴方様と反対の道をまっすぐ突き進んでも、地球を一周すればあなた様と巡り会えまする」
なんとロマンチックな言葉であろうか! 一見すると意味不明な、しかしその実、壮大な愛の告白ではないか。地球が丸いという当時の人々にとっては驚くべき知識を交え、決してあなたから離れない、必ずや再び巡り会うという、姫の強い意思と深い愛情が、この言葉に凝縮されている。
そして、この姫の言葉を聞いたお屋形様もまた、「まこと、グローバルな話よのぅ。地球の周回か。気に入った、ワシは泥んこ姫を御前にいたす。許嫁とは決闘じゃ・・・」と、とうとう秘めた想いを爆発させるのだ。この一連の流れは、まさに心と心が通じ合った瞬間であり、見事な恋路の成就ではないか!
衆に祝福された愛の形
「本当は英愛姫がお屋形様に一目惚れで、許嫁とは決闘で討ち果たしたそうじゃ。ここだけのはなしじゃがの。お屋形様が尻に敷かれて喜ぶのも頷けるがな。」
貴方は最後にこのように語られたが、それは姫の情熱的な一途さを表しているのではないか。一目惚れした相手のために、自らの運命を切り開く。その強さと覚悟こそが、英愛御前の魅力なのだ。そして、お屋形様が彼女に尻に敷かれているというのも、彼が姫の賢明さや気高さを心底認めている証拠であろう。
領主が領民に祝福され、グローバルな祝言を上げる。それは、単なる個人的な縁談ではなく、異文化間の理解と融和を示す、素晴らしい出来事だ。戦国という厳しい時代にあって、このように温かい物語が生まれたことに、歴女としては心から感動せずにはいられない。
この「遠回し恋路談義」、泥んこ姫の純粋な愛情と賢明な機転、そしてお屋形様の懐の深さが織りなす、なんとも心温まる馴れ初めであったな。人の恋路に口を挟むな、と貴方を諭した腹違いの妹御も、きっとこの話を聞けば、心を震わせるに違いない。
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<八百屋お七のことば>
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八百屋お七は、江戸時代初期に実在したとされる少女で、恋しい寺小姓に会いたい一心で放火し、火あぶりの刑に処せられたと伝えられています。その悲劇的な物語は、多くの浄瑠璃や歌舞伎の題材となり、一途で純粋な恋の象徴として語り継がれてきました。彼女の行動は、理性よりも感情が先行する、激しくも純粋な愛の表れです。
「まあ、なんて、夢のようなお話だこと。北の国のお姫様が、こんなにも遠い、戦国の世まで、たった一人の男に会いに来た、というのかい。あたしと、同じだね。あたしも、ただ、会いたくて、会いたくて、それだけで、生きていたから。」
「この、エイミーというおなごは、ずいぶんと、賢いんだねえ。『地球を一周すれば、また会える』なんて、そんなに、遠い、遠い、話を知っているなんて。あたしの世界は、ただ、あの寺の、あの門の内側だけだったから。あたしは、ただ、あの寺の鐘の音に、彼の姿を重ねていただけだから。ああ、もし、あたしが、そんな遠い話を知っていたなら、どんなに、どんなに、よかっただろう。」
「この物語の二人は、ちゃんと、結ばれたんだね。領民にも、みんなにも、祝福されて。あたしは、恋しい人に会いたい一心で、火をつけて、そして、火あぶりになった。あたしの恋は、誰にも祝福されなかった。だから、この物語の二人が、幸せになるのを見ていたら、あたし、なんだか、嬉しいような、でも、苦しいような、そんな気持ちになるんだ。」
「このお屋形様も、いい人だね。お姫様が泥んこでも、そのまま、愛してくれたんだ。あたしも、泥んこになって、火をつけて、でも、あたしの恋は、誰にも、受け入れてもらえなかった。この物語は、あたしが、叶えたかった夢を、全部、見せてくれている。だから、あたしは、このお話が、大好きだ。このお話を読むと、なんだか、心が、温かくなるんだ。」
「この続きも、ぜひ、読ませておくれよ。この二人の幸せな物語が、これからも、ずっと、続いていくのを、あたしは、見守りたい。そして、いつか、あたしの恋も、こんな風に、誰かに、祝福される日が、来るんじゃないか、って、そう、夢を見たいから。」
