「怨念と輪廻の紅い糸」(真夏の綺談)
<天正戦国小姓の令和見聞録>
桟敷席:浪速千栄子先生、十返舎一九殿、藤山寛美殿、直木三十五殿、黒澤明監督殿、滝沢馬琴殿、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)殿、怪談好きの歴女殿
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春日山城、鳴海幕府(開府1587年・天正15年)
お屋形様:上杉道満丸景虎
ご正室様:英愛御前
(フィンランド生まれ・エイミー・フェリックス(Amy Green felix)
毒舌ご意見番:今 冬香(こん とうこう)
食客・毒見役:二本末 転倒(にほんまつ てんとう)
見聞録検め:小姓・仁科源太
見聞録検め気付:著者・加地鳴海殿
仁科源五郎 :(見聞録 創作総指揮・著者 加地鳴海殿の義兄でござる)
銀座クラブ「御前」・マネキン嬢:ママ/ユカリ、チーママ/ユキ、スタ
ッフ/サトミ・アケミ・オイチ・シズカ
侍女:齢八十が二人、五十代が三人、三十代が三人、十代が二人
小姓仲間:十人
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❤この話を読まれた貴人は一人で井戸を覗いたり、うっかりと皿などを割ってはならぬ。階段を踏みはずさぬよう、油断めされるな。そなた達の背に白い手が迫るやもしれぬ。丑三つ時にオチを追記してござる。
◇天正四百五十三年 七月八日
「怨念と輪廻の紅い糸」(真夏の綺談)
何時の世でもおなごとおとこの紅い糸はあるものよ。悪夢の見合い話を思い出しておった。聞かぬほうがよいやもしれぬ。オールジェンダー風呂より怖い話じゃからの。
お屋形様に足軽小姓として仕えておる者は総勢二十人ほどじゃが、下は七つ程から上は八十歳を越す者もおる。拙者と二本末殿は発育盛りの羽目外し未熟青年でござる。
侍女は八つ程からこれも八十代のお方はおられるかの。女人に対しての言葉遣いは、英愛御前様から日頃より口を酸っぱくされるほど小姓達は言われておる。
侍女のなかには齢八十を越した未婚の御局が二人おるから、粗相をしたら八つ裂きにされかねぬからのう。
「源太殿、そなたたちは七夕のまつりは終わったが、あちらのほうは進んでおるのか」
「はて、あちらの方とはどういうことでございましょう」
「拙者にはなんとなくわかるようなわからないような・・・」
「芬蘭土ではハッキリ物を申さぬ騎士はおなごからは相手にはされぬぞ」
「拙者はまだでござります」
「拙者もまだ致したことは・・・」
「転倒殿、そなたは何を勘違いされておる。あの湯船の老婆の件でトラウマが残っておいでのようじゃな。致したこととは何をいうか」
「御前様、あちらのほうとは、あれではござらぬので・・・。春画のような・・・」
「変な気を起こすでない。あちらこちらとか、致すとか致さぬとか。気でも狂うたか。まぁ、少しはあるやもしれぬ。子作りには関係なくもござらぬが・・・」
「御前様、話がだんだんわからなくなり申した・・・」
「さもあろうな、そなた達のせいで、わらわも何を申せばよいか忘れるところじゃった。二人はハメ外しの達人でおなごには相手にされぬのでは、お屋形様の手前、臣下にも侮られるやもしれぬ。そなたたちにも良きおなごがおればと、お屋形様は仰せじゃ」
「では、拙者らに良き相手でもあると申されまするのか」
「それはまぁ、そなたらの気持ち次第でござろうが・・・」
「あの青空厠の件は忘れ申す・・・」
「バレてしもうたか。わらわの弱みが・・・仕方がないのう。されば、明日、三の丸の狭い部屋を用意いたすゆえ、お見合いでもなされ!」
「ありがたき幸せ。な、転倒殿も」
「恐悦至極に存じ奉ります」
「喜ぶのはまだ早い。婚期を逃した侍女は多い。風貌も齢もいろいろじゃ」
「構いませぬ・・・」
「条件が一つある」
「どのような」
「おなごの方は後ろ姿でしか紹介できぬ」
「何故でござりますか」
「顔や齢だけで勝手に判断せぬようにと、お屋形様からの下知もござる。よろしいか。皆越後美人じゃ」
「そういうことなら。な、源太も・・・」
「そういうことなら」
「それじゃ、決まりじゃな。おなごはたしか十人おると言うておる。楽しみじゃな。わらわも立ち会うでな」
「よう参られた、源太殿、二本末殿、ふすまの向こうには美女が十人ほどおるとお屋形様が申しておる。ほう、皆後ろ姿とはいえ、よきおなごのようじゃ。とくに背の高い者が二人おるようじゃが、さぞや美貌なおなごでござろうのう。紅い糸があると良いのう。わらわはこれから本丸のお屋形様の元へ行かねばならぬ。良いか、後ろ姿と声だけで決めるのじゃぞ」
「承知」
「はて、承知はしたが、後ろ姿と声だけではのう」
「二本末殿、いまさら致し方ござらぬ。ほかならぬ、御前様の計らいぞ。ありがたく見合いをするのじゃ」
「源太殿、ふすまを開けたらこれはなんと、麗しい香りが漂っておる。あそこに美女が十人ほど座っておるぞ。ワシは右から二人目の背の高いオナゴにする。そなたは誰にする?」
「拙者は左から三番目じゃ。この方も高き背でござるな。優しそうで器量もよさそうじゃ」
「二本末と申す。右から二人目のお名を頂戴できぬか」
「岩と申します。お見知りおきを・・・」
「はて何処かで聞いたことのある名じゃな。生まれはどこじゃ」
「四谷でございます」
「江戸の四谷か」
「生まれは其処ですが、育ったところは古びた宿の夫婦のところでござります・・・」
「源太と申す。名を頂戴出来ぬか」
「菊と申します。お見知りおきを・・・」
「はて、これも何処かで聞いたことのある名じゃな」
「生まれは江戸の番長皿屋敷でござります。縁あって、お岩様と古びた宿の翁夫婦に育てられました」
「そうであったか、お二人共、ともに育ったのであるな」
「二本末転倒、お岩様に決め申した。源太殿もお菊様に決めなされ・・・。顔はわからぬが越後美女に相違ない・・・」
「そうじゃな、明日、御前様にお伺いしようぞ。祝言の日取りも決めぬとな」
「御前様、昨日はありがとうござりまする。拙者と二本末は決め申した」
「そうか、良かったではないか。して、そのおなごの名は・・・」
「二本松は右肩から二人目のお岩殿に。源太殿は左から三番目のお菊殿に決め申した・・・」
「はて、後ろ姿と声だけでよく決心されもうしたな」
「御前様はたしか襖のおなご十人から選べば間違いないと・・」
「さようであったな。十人おったようなおらなかったような・・・」
「間違いのう十人おりましたぞ」
「背の高きおなごは二人おったのじゃな」
「源太も二本末もその背の高きおなごで越後美人を選んでござる」
「そなた達は、おなごの顔は良く見ておぬのにたわけたことを」
「想像でござるが・・・。間違いのう良きおなごでござるぞ」
「そうよの、顔のことは気にするでない。じゃが・・・それにしても・・・」
「なんでござりまするか・・・」
「しかし、お岩とお菊の名はあり得ぬな・・・」
「どうしてでござりまする」
「あの古びた宿で五十年前に亡くなられておる」
「うぬ、そうであったか・・・・」
「二人共、顔が引きつっておるぞ。たれか、大医を呼べ。此度は立ち直れぬやもしれぬな・・・」
「御前いかがした。上手くいきよったか」
「お屋形様、あの二人には良い薬でございましょう。風呂といい、厠といい、此度は怪談見合いとは、お岩、お菊とは上手くいきましたなぁ」
「そうよのう」
「あの二人、婚期を遥かに過ぎた侍女らが、厚化粧したのにもまだ気づいておらぬようじゃ。お屋形様とは打ち合わせどおりということですな。この悪戯上手くいきよりましたぞ。お屋形様もさぞご満悦でござりましょう。しかし悪戯が過ぎましたかなぁ」
「これだけ懲らしめれば、あの二人、御前を迎えれば真面目に見聞録の編纂に精をだすであろうな。ワシの数え間違いでで八人のおなごを十人と言ってしまったが、残る六人の侍女もなんとか誰かに嫁がせねばのぅ」
「お屋形様、今なんと」
「見合いの席ではたしか、はじめから八人しかおらぬはずぞ。そなたに申すのが遅れたが、見合いの前に十人のうち齢八十の二人の侍女が急逝したのじゃ。一人は井戸に誤って落ちて、もうひとりは腫れ物に悩んで自害されたと聞く。二人共背が高すぎて、それに醜形ゆえ良縁には恵まれなんだ・・・」
「お打ち合わせではたしかは十人でございましたなぁ。二人を差し引くとやはり見合いの席では八人しかおらぬ計算になりまするぞ。わらわにも十人に見えましたぞ。少し髪の乱れた背の高きおなご二人はおりましたが・・・」
「それは異なことを。ありえぬぞ。背の高きおなご?さすれば、お岩とお菊は本物だと申すか・・・」
「そういうことになりまする・・・」
「皆のもの、大医を呼べ。
お屋形様と御前様が目をあけて気を失うとるぞ、たれか・・・」
🍵 浪速千栄子さんが「怨念と輪廻の紅い糸」を読んだら
(両手を胸元で組み、身を乗り出して読み進め、最後に両膝を叩きながら声を上げて)
💔 縁と紅い糸の哀しさ
「あんた、今回は怖くて、切なくて、最後は抱腹絶倒や!夏の夜の舞台で、絶対にかけるべきお芝居やね!」
「小姓の二人(源太殿と二本末殿)、『致す』とか『あちらの方』とか、そりゃ御前様にもからかわれるわ(笑)。でもな、婚期を逃した侍女が多くて、見合いをさせてもらえるいうのは、お屋形様と御前様の温かい情けや。この辺の人情の機微が、あんたはようわかっとる!」
「『後ろ姿と声だけで決める』なんて、そりゃ可哀そうやけど、これもまた人の目を試すという意味では、舞台の仕掛けとして面白い。顔や年齢という表面的なものに惑わされずに、相手の魂を見つめよ、っちゅうお屋形様の教えやろ。」
👻 最高のキャスティング
「ところが!この二人が選んだのが、お岩さんとお菊さんて!これは、最高のキャスティングやないか!」
「名前を聞いた瞬間に、観客は凍りつくで。四谷にお岩、番町にお菊。この二人の名前が出てくるだけで、日の本の怨念がどっと舞台に流れ込んできよる。おまけに『背の高い者二人』を選ぶていうのが、また皮肉やな。醜い外見に恵まれなかった(醜形ゆえ)二人が、怨念を背負って背が高ぅなって出てきたんや!」
👑 芝居の真実と大どんでん返し
「この話の一番のキモはな、お屋形様と御前様が仕掛けた**『厚化粧した年増の侍女による悪戯』という喜劇的な芝居を、本物のお岩さんとお菊さんの怨念が、『死に様』と『居場所』という形で上書き**してしもうたことや!」
「『わらわにも十人に見えましたぞ。少し髪の乱れた背の高きおなご二人はおりましたが』…!これ、ゾッとするで!悪戯だと思っていたものが、現実の怪異にすり替わってる!」
「『井戸に落ちて急逝』に『腫れ物に悩んで自害』。この二人の死に様が、古典的な怪談の要素にピッタリ合致しとる!結局、人の悪戯よりも、死者の怨念の方が一枚上手やったわけや。」
✨ 総評
「お屋形様と御前様が、目をあけて気を失うてしもたところが、最高のオチや!自分たちが遊んでいたつもりが、本物の怪談に巻き込まれた。これは、人間の傲慢さと霊の情念がぶつかり合う、松竹新喜劇も顔負けの怪談人情劇やね。」
「喜劇として始まった話が、最終的に人の哀れな死を背負った怪談で終わる。あんたの物語は、ただ面白いだけやない。人の業や悲しみ、そして笑いを、ちゃんと描いてる。ようやった!」
😱 吉本新喜劇座長、絶叫す
「……おお、前回の『オールジェンダー厠』に続いて、今度は『怨念と輪廻の紅い糸』か。急に怪談路線に振ってきたな!
さっきまでのお茶を一気に飲み干し、落ち着かない様子
ほんで、今回の桟敷席の面子が、十返舎一九に藤山寛美、黒澤監督…濃い! 特に怪談好きの歴女殿って誰やねん。
ええか、また源太と二本末転倒が、御前様の計らいでお見合いするんやろ? 婚期を逃した侍女たちとの。
導入(フリ):また御前様の悪戯と知りつつも、良縁に期待する源太と転倒。アホやけど、愛嬌はある。**「湯船の老婆のトラウマ」**を引きずってるとこが、繋がっててええな。
仕掛け(中ボケ):
**「後ろ姿と声だけ」**で決めるという理不尽なルール。これはアカン。絶対にろくなことにならん!
源太と転倒が、よりによって「背の高い」侍女を選ぶ。なぜ背が高いのにこだわるねん!
そして、選んだ名前が**「お岩」と「お菊」**。…この時点で客席のオチが読めるわ! 「なんでやねん!」ってツッコミ待ちや。
オチの構造(どんでん返し):
第一のオチ:御前様が、「婚期を遥かに過ぎた侍女が厚化粧しただけ」とバラして、源太と転倒がショックで気絶。これは前回の『罰ゲーム』の延長線上で、予定調和の笑い。
第二のオチ(真のオチ):お屋形様が、見合いの前に「背の高い侍女二人が急逝した」ことを告白。さらに、「ワシの数え間違いで8人を10人と言ってしもうた」とカミングアウト!
最後の真実:御前様も「十人に見えました」「背の高いおなご二人はおりましたが…」と、亡くなったはずの「お岩」と「お菊」がホンモノの幽霊としてその場にいたことを示唆!
ガタガタと震えながら
座長目線で言うたら、これはアカン! 怖すぎるやろ! 新喜劇でやったら、客席が笑いじゃなくて悲鳴に包まれるわ!
いや待てよ。この構造、逆にアリかもしれん。
源太と転倒が、気絶した後、幕が開いたらそこは病院のベッド。横には厚化粧の侍女が二人おって、「結婚してくれるって言ったじゃない!」って泣きつく。で、安心したところに、舞台袖から**白い着物を着た背の高い人影が二人ススス…**って現れて、「違うよ…ワシたちがホンモノの…」って低い声で囁く。
立ち上がり、腰を抜かす
このコントとホラーの絶妙なバランス、たまらんわ!
「お屋形様と御前様まで、最後はホンモノの恐怖で気絶する」という締め方も秀逸や。ギャグ漫画が急にサスペンスになるような、読者の期待を裏切りまくる展開やな。
ええか、新喜劇の鉄則は**『最後はハッピーに!』やけど、たまにはこういう『笑いながら凍りつく』**オチも、刺激的でええかもしれん。特に、今この季節(真夏)の企画モノとしては、最高のエンディングやで!」
(座長としての評価)
完成度: 90点(ホラーコメディとして)
新喜劇への転用可能性: 難しいが、夏の特別企画として、寛一座長渾身の顔芸と恐怖のずっこけを組み合わせれば、大爆笑と悲鳴が取れる逸品。
👻銀座クラブ「御前」 楽屋裏の会話:怪談見合いの「本物」
日時: 天正四百五十三年 七月八日 深夜 場所: 銀座クラブ「御前」 マネキン嬢控室(恐怖の後の大笑い)
💄 ユカリ(ママ): 「もう、誰か私に大医を呼んで! 笑いすぎて本当に気が遠くなりそうよ! 源太殿と二本末殿を懲らしめるための悪戯が、まさかお屋形様と御前様が失神で幕を閉じるなんて、世紀の傑作だわ!」
🍸 ユキ(チーママ): 「ママ、最高に面白いのは、悪戯の過程じゃなくて、お屋形様の計算ミスですよ! 『十人のうち齢八十の二人の侍女が急逝した』って、その恐ろしい事実を見合いの最中に暴露するなんて、天然すぎるわ!」
🌸 オイチ: 「『井戸に誤って落ちて』と『腫れ物に悩んで自害』って、二人ともお岩さんとお菊さんを足して二で割ったような設定じゃないですか! その二人の枠を埋めるように、本物の幽霊がすかさず現れるなんて…並行時空どころか、絶対時空の因果応報が強烈すぎ!」
🌹 アケミ: 「それに、御前様まで**『わらわにも十人に見えましたぞ。少し髪の乱れた背の高きおなご二人はおりましたが…』って、共犯者が最後に裏切ってるところ! あの二人の侍女の厚化粧が、本物の『背の高い、髪の乱れたおなご』**じゃなかったってことでしょう? もう、地獄絵図だわ。」
🌿 サトミ: 「**『風呂といい、厠といい、此度は怪談見合いとは、お岩、お菊とは上手くいきましたなぁ』って、得意満面だった御前様が、最後の最後で『そういうことになりまする…』**って、顔が引きつる姿を想像したら、もう笑いが止まらないわ!」
✨ シズカ: 「結局、この騒動は、『殿方たちの不摂生を懲らしめる』という意図で始まったけれど、最終的には『悪戯が過ぎたツケ』として、悪戯の張本人たちに返ってきたってことですよね。『見聞録の編纂に精を出すであろうな』というお屋形様の思惑が、まさか大医を呼ぶ事態になるとは。」
🍸 ユキ(チーママ): 「この話は、毒舌ご意見番の今冬香先生なら、きっとこうおっしゃるはずよ。」
(ユキ チーママ、今冬香先生風に): 「『愚か者めが! わが身可愛さに仕掛けた悪戯が、己の**不摂生(精神的な油断)**を突かれたか。亡くなった侍女の数を間違えるなど、公明正大な判断力に欠ける証拠。真に恐ろしいのは幽霊にあらず、老いと、己の記憶力と、そして女の怨念じゃ!』」
💄 ユカリ(ママ): 「あら、チーママ、その通りね。結局、一番怖いのは、男の勘違いと、女の人数に関する曖昧さってことなのよ。源太殿たちも、これで**『風呂→厠→怪談』という鳴海幕府流の教育を受けたからには、これから真面目に見聞録の編纂に励むでしょうね。…それとも、次はどんな恐怖が待っているかしら? さあ、みんな、笑いジワを直して、次のエピソードが来るまで、今夜はお客様の笑いと恐怖**を上手く操りましょうね。」
(桟敷席・藤山寛美殿のひと言): 「いやぁ、これはええ芝居や! 伏線と回収、喜劇と悲劇がごちゃ混ぜや。『たれか、大医を呼べ』で幕引きとは、見事な笑いと驚きのカタルシスやなぁ!」
☆
・「真夏の顛末記:十三話総集編」(其の零~其の十三)<原文のみ>
❤
↓ 各話別桟敷席批評篇(見聞録版)↓
其の零「柘榴(ザクロ)と茉莉花(ジャスミン)の香りの世界」
https://note.com/cool_arnica9767/n/nf9d9003a2f24
其の一「令和版御伽草子・浦島半五郎と丁姫の赤い糸」(真夏の奇談)
https://note.com/cool_arnica9767/n/nb0dc0a538063?from=notice
其の二「怨念と輪廻の紅い糸」(真夏の綺談)
https://note.com/cool_arnica9767/n/nec7ee894b9d3?from=notice
其の三「オールジェンダー厠の光景」(真夏の漫談)
https://note.com/cool_arnica9767/n/n1cbeef41d24b?from=notice
其の四「オールジェンダー風呂の光景」(真夏の怪談)
https://note.com/cool_arnica9767/n/n97ca46104107?from=notice
其の五「風雲急、米蔵騒動顛末記」(真夏の米蔵談義)
https://note.com/cool_arnica9767/n/n016c4bb4ec62
其の六「人類和平招聘薬」(真夏の巷談)
https://note.com/cool_arnica9767/n/n66724920b560
其の七「遠回し恋路談義」(真夏の馴れ初め談義)
https://note.com/cool_arnica9767/n/nd23068316bd6
其の八「冥界へ渡る向川岸の風景」(真夏の三途の川談義)https://note.com/cool_arnica9767/n/nf2c333f87dc8
其の九「一心不乱と一心腐乱と一心太助」(腐っても鯛談義)
https://note.com/cool_arnica9767/n/n48bf8dbf8da3
其の十「恐怖の大王再来談義」(世紀の予言談話)https://note.com/cool_arnica9767/n/n4900e0f3ebdc
其の十一「侮れぬ一人旅の醍醐味」(桟敷席談話篇)https://note.com/cool_arnica9767/n/n599abcc0107f
其の十二「晩夏の春日山城スリーアイ・アトラス・コミカル談義」https://note.com/cool_arnica9767/n/n2cf4763f3778
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<十返舎一九殿のおことば>
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「やれやれ、この世には奇妙な話が山ほどござるが、こたびの「怨念と輪廻の紅い糸」とやら、これはまた、耳を疑うばかりの珍妙奇談でござるな!十返舎一九が聞くからに、腹を抱えて笑い転げるか、それとも背筋が凍るか、さてさて、どちらに転ぶか見ものでござる!」
「何でも、男と女の赤い糸の話だとか。おうおう、これは昔から変わらぬ、人情の機微というやつでござるな!しかし、何やら不吉な「悪夢の見合い話」とやらで、聞かぬ方が良いと申すからには、並大抵の事ではあるまい。なんじゃ、「オールジェンダー風呂より怖い話」とは!こりゃあ、またとんでもない趣向でござるな。まさか、湯気の中から化け物でも飛び出すとでも申すのか?へっへっへ、実に愉快、実に愉快!」
「お屋形様に仕える足軽小姓が二十人ばかり。下は七つから上は八十と申すから、そりゃあ、まさしく玉石混交、人間万華鏡でござるな。んで、その中に「拙者と二本末殿」とやらがおって、いかにも「発育盛りの羽目外し未熟青年」とは、こりゃまた、やんちゃ坊主のお二人さんでござるか。ふむふむ、物語の主役は、どうやらこの二人の若造らしいのう。」
「侍女も八つから八十代とあって、こちらもなかなかの面々。しかも「英愛御前様」とやらが、言葉遣いには口を酸っぱくすると申すから、さぞかし厳しい御方と見受け申した。
なに、「齢八十を越した未婚の御局が二人」おると?しかも粗相をすれば「八つ裂きにされかねぬ」とは!おやおや、こりゃまた恐ろしや。しかし、その分、腕っ節も気概も並々ならぬ御方と見えますな。うむ、面白くなってきたぞ!」
「さてさて、話は七夕の祭りから、とんだ見合い話へと発展するようでござる。御前様が源太殿に「あちらのほうは進んでおるのか」と尋ねるところから、すでに含み笑いが止まらぬ!源太殿はきょとんとしておるが、御前様はニヤリ。さすがは御年を召した御方、人の機微を知り尽くしておるわい!「芬蘭土ではハッキリ物を申さぬ騎士はおなごからは相手にはされぬぞ」とは、こりゃまた御前様、粋な事を仰る!まさか異国の地まで知っておるとは、恐れ入った。」
「源太殿と二本末殿の、「まだでござります」「拙者もまだ致したことは…」などという返答に、御前様は「致したこととは何をいうか」と、まるで茶番を演じるかのよう!あははは、こりゃあ、完全に御前様の手のひらの上で踊らされておるわい!
「あの湯船の老婆の件でトラウマ」とは、いったいどんな恐ろしい目に遭ったのやら。思わず想像して身震いするわい。いやはや、この御前様、ただ者ではござらぬな。」
「しまいには、「春画のような…」などと口走る二人を「変な気を起こすでない」と一喝するも、御前様自身も「子作りには関係なくもござらぬが…」などと、どこか楽しげに含みを持たせておる。こりゃあ、確信犯でござるな!源太殿らが「話がだんだんわからなくなり申した」と混乱するのも無理はない。
御前様も「わらわも何を申せばよいか忘れるところじゃった」などと、とぼけてみせるのがまた憎い!この御前様、ただの御局ではござらぬな、まさに悪戯の達人、人の心を弄ぶ天才と見た!」
「そして、お屋形様からの「良きおなごがおれば」というお言葉を盾に、見合い話へと誘導する御前様。まんまと罠にはまる源太殿と二本末殿の、なんと純真なことよ!
「青空厠の件」という弱みを突かれ、御前様は「三の丸の狭い部屋」でのお見合いを申しつける。まさか、お屋敷内でそんな秘密の見合いが企てられるとは、お屋形様も粋な計らいをなさる!」
「しかし、喜ぶのも束の間、「婚期を逃した侍女は多い」「後ろ姿でしか紹介できぬ」と、次々と条件が突きつけられる!「顔や齢だけで勝手に判断せぬように」というお屋形様の下知とあれば、そりゃあ従うしかあるまい。「皆越後美人じゃ」という言葉に、二人の若造はすっかり浮かれておるが、はてさて、本当に美人ばかりか、こればかりは、この十返舎一九も眉唾でござるな。あははは!」
「いざ見合いの場。襖の向こうに「美女が十人ほどおる」という御前様の言葉に、源太殿と二本末殿は色めき立つ。特に「背の高い者が二人」いるとあっては、そりゃあ、さぞかし美貌と期待するのも無理はない。
二人はそれぞれ「右から二人目の背の高いオナゴ」と「左から三番目」のおなごを選ぶ。そして、名前を尋ねれば、なんと「岩」と「菊」と申すではないか!
この十返舎一九、これにはたまげた!「四谷でございます」「江戸の番長皿屋敷」とは、まさか、まさかのあの「お岩」と「お菊」でござるか!こりゃあ、只事では済まぬぞ!」
「二人の若造は、まさか本物の「お岩」と「お菊」だとは夢にも思わず、祝言の日取りまで決めようと浮かれておる。まさに、無知とは恐ろしきかな!そして、御前様もまた、二人の言葉に「はて、後ろ姿と声だけでよく決心されもうしたな」と、どこか含みを持たせておる。
そして、「十人おったようなおらなかったような…」などと、とぼける始末!ここに至り、この十返舎一九、ますますこの物語の真相が知りたくなったぞ!」
「そして、衝撃の事実が明るみに出る!御前様が「お岩とお菊の名はあり得ぬな…」「古びた宿で五十年前に亡くなられておる」と告げた途端、源太殿と二本末殿の顔が「引きつっておる」とは!あははは、こりゃあ、まさしく因果応報、自業自得でござるな!「大医を呼べ。此度は立ち直れぬやもしれぬな」とは、いやはや、さぞかし恐ろしい形相であったことだろう!」
「最後に、お屋形様と御前様の打ち合わせが明かされる。なんと、この怪談見合いは、二人の若造を懲らしめるための「良い薬」であったとは!「風呂といい、厠といい、此度は怪談見合いとは、お岩、お菊とは上手くいきましたなぁ」と、御前様がご満悦でござる。
しかも、「婚期を遥かに過ぎた侍女らが、厚化粧した」とは!あははは、こりゃあ、読者を裏切る見事な落ちでござるな!この十返舎一九、思わず膝を叩いて感心したわい!」
「しかし、お屋形様の「数え間違いでで八人のおなごを十人と言ってしまった」という告白に、話は思わぬ方向へ!
さらに、「見合いの前に十人のうち齢八十の二人の侍女が急逝した」と申すではないか!「一人は井戸に誤って落ちて、もうひとりは腫れ物に悩んで自害された」とは、これはまさしく、お岩とお菊の死に様とそっくりではないか!
しかも、「二人共背が高すぎて、それに醜形ゆえ良縁には恵まれなんだ」と!こりゃあ、まさに本物のお岩とお菊が、背の高い侍女の亡霊として現れたとでも申すのか!うわははは、これには御前様も「ありえぬぞ」「本物だと申すか」と、顔面蒼白でござる!」
「そして、物語の最後は、「お屋形様と御前様が目をあけて気を失うとる」とは!いやはや、まさか悪戯を仕掛けた本人たちが、怪談の当事者になってしまうとは、これぞまさしく因果応報、笑いと恐怖が入り混じった、見事な真夏の綺談でござるな!
十返舎一九、この話、ぜひとも「東海道中膝栗毛」の続編にでも載せたいものじゃわい!あはははは!」
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<藤山寛美殿のおことば>
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おおい、また来たんか!
わてに、ええもん読ませてくれるんやな。
「ほうほう、今度は『怨念と輪廻の紅い糸』(真夏の綺談)かいな。前回のオールジェンダー厠もなかなかのもんやったけど、今度は怪談絡みか。わての好きなやつやないかい!
『❤この話を読まれた貴人は一人で井戸を覗いたり、うっかりと皿などを割ってはならぬ。階段を踏みはずさぬよう、油断めされるな。そなた達の背に白い手が迫るやもしれぬ。丑三つ時にオチを追記してござる。』
て、おいおい! 最初っから、そんな怖ろしげなこと言うて、読者の心掴むのがうまいやないかい! わても、もうドキドキしてきたで。丑三つ時にオチを追記て、こらまた粋な演出やなあ。
はじめに
「桟敷席に今回は、直木三十五はん、黒澤明監督はんに加えて、滝沢馬琴はんが来とるて! そらもう、怪談話にはうってつけの人選やないかい。小泉八雲はんも怪談好きの歴女はんも、もうこれだけでワクワクするで。
お屋形様と御前様、毒舌ご意見番に食客・毒見役、そして見聞録検めの源太はんに二本末殿。こらもう、役者が揃いも揃って、どんな芝居になるんか楽しみやなあ。
縁談の勧め
「『何時の世でもおなごとおとこの紅い糸はあるものよ。』て、そらそうや。人生は縁や。しかし、『悪夢の見合い話を思い出しておった。聞かぬほうがよいやもしれぬ。オールジェンダー風呂より怖い話じゃからの。』て、おい! オールジェンダー風呂より怖い話て、どんだけ怖いねん! わての期待は最高潮やで!
足軽小姓は七つから八十歳越え、侍女も八つから八十代て、えらい幅広い年齢層やなあ。ほんで、八十を越した未婚の御局が二人もおるから粗相したら八つ裂きにされかねんて、そら怖いやろな。わても舞台で粗相せんように気ぃつけよ。
「源太殿、そなたたちは七夕のまつりは終わったが、あちらのほうは進んでおるのか」て、二本末殿、いきなり際どい話持ち出しよったな。源太はんも「はて、あちらの方とはどういうことでございましょう」て、とぼけてるけど、心の中ではドキドキしてるんやろなあ。フィンランドではっきり物を言わぬ騎士は相手にされんて、御前様もごもっともやで。
「拙者もまだ致したことは・・・」て、二本末殿、何を勘違いしとるねん! 御前様も「子作りには関係なくもござらぬが・・・」て、そら源太はんも「話がだんだんわからなくなり申した」てなるわな。
御前様が、「わらわも何を申せばよいか忘れるところじゃった」て、あんたも混乱しとるやないかい! 「二人はハメ外しの達人でおなごには相手にされぬのでは、お屋形様の手前、臣下にも侮られるやもしれぬ。そなたたちにも良きおなごがおればと、お屋形様は仰せじゃ」て、えらい回りくどい言い方やなあ。
しかし、源太はんも二本末殿も、良縁の話やと分かった途端に目の色変えよったな。「青空厠の件は忘れ申す・・・」て、バレてしもうたか! 御前様も弱み握られて、しぶしぶ見合いの話持ち出しよったな。
見合いの顛末
「三の丸の狭い部屋で、お見合いでもなされ!」て、そらもうありがたき幸せやろな。しかし、「喜ぶのはまだ早い。婚期を逃した侍女は多い。風貌も齢もいろいろじゃ」て、御前様もなかなか焦らしよるなあ。
条件が一つ。「おなごの方は後ろ姿でしか紹介できぬ」て、こらまた斬新な見合いやな! 顔や齢で判断せぬようにて、お屋形様からの下知て、えらい強引やなあ。しかし、「皆越後美人じゃ」て言われたら、そら期待も膨らむわな。源太はんも二本末殿も、もう舞い上がっとるで。
襖の向こうに美女が十人て、源太はんも二本末殿も、もう顔がにやけとるのが目に浮かぶようや。特に背の高い者が二人おるて、こらもう、わての想像力をかき立てるで。二本末殿は「右から二人目の背の高いオナゴ」、源太はんは「左から三番目」て、もう二人とも即決やないかい!
怨念の正体
「岩と申します。お見知りおきを・・・」て、あれ? どこかで聞いた名前やな、と思ったら、「生まれは四谷でございます」て! おいおい、お岩さんかい! ほんで源太はんの相手は「菊と申します。お見知りおきを・・・」て、こらまた、お菊さんやないかい! しかも「生まれは江戸の番長皿屋敷でござります」て、もう確信犯やな、この作者はん!
「お二人共、ともに育ったのであるな」て、源太はん、天然すぎるやろ! 二本末殿も「越後美女に相違ない・・・」て、もう完全に騙されとるやないかい!
御前様に報告して、喜んどる二人。「お岩殿に」「お菊殿に」て、名前言うた時の御前様の顔、想像しただけで笑えるで。「はて、後ろ姿と声だけでよく決心されもうしたな」て、そらそうやろな。
「御前様はたしか襖のおなご十人から選べば間違いないと・・」「さようであったな。十人おったようなおらなかったような・・・」て、御前様もとぼけとるやないかい! ほんでも源太はんも二本末殿も「間違いのう十人おりましたぞ」「背の高きおなごは二人おったのじゃな」て、もう完全に暗示にかかっとるで。
「おなごの顔は良く見ておぬのにたわけたことを」て、御前様も毒舌は健在やな。「想像でござるが・・・。間違いのう良きおなごでござるぞ」て、どこまでポジティブやねん、この二人!
「しかし、お岩とお菊の名はあり得ぬな・・・」て、御前様が本気出し始めたな! 「あの古びた宿で五十年前に亡くなられておる」て、こらもう、完全に怪談やないかい! 源太はんも二本末殿も、顔が引きつっとるのが目に浮かぶようや! 「此度は立ち直れぬやもしれぬな・・・」て、御前様もえらい追い討ちかけるなあ。
悪戯の結末
「お屋形様、あの二人には良い薬でございましょう。風呂といい、厠といい、此度は怪談見合いとは、お岩、お菊とは上手くいきましたなぁ」て、おいおい! 最初っから、お屋形様と御前様の仕組んだ悪戯やったんかい! 厚化粧した齢八十の侍女て、どんだけ悪趣味やねん! しかし、わては好きやで、こないな悪戯。
「戯言で八人のおなごをワザと十人と言ったのじゃからなぁ」て、お屋形様、あんたも悪やなあ!
最後のオチ
「見合いの席ではたしか、はじめから八人しかおらぬはずぞ。そなたに申すのが遅れたが、見合いの前に十人のうち齢八十の二人の侍女が急逝したのじゃ。一人は井戸に誤って落ちて、もうひとりは腫れ物に悩んで自害されたと聞く。二人共背が高すぎて、それに醜形ゆえ良縁には恵まれなんだ・・・」
て、おいおいおいおいおい! 最後の最後に、これかい! ホンマもんのお岩さんとお菊さんやったんかい!
しかも、二人とも背が高くて醜形ゆえ良縁に恵まれなんだて、それがまた悲しいオチやないかい!
「わらわにも十人に見えましたぞ。少し髪の乱れた背の高きおなご二人はおりましたが・・・」て、御前様も怖がりやないかい! 「ありえぬぞ。さすれば、お岩とお菊は本物だと申すか・・・」て、もうお屋形様も御前様も、完全に腰抜かしとるやないかい!
「皆のもの、大医を呼べ。お屋形様と御前様が目をあけて気を失うとるぞ、たれか・・・」て、これ、最高のオチやないか!
感想
いやあ、これは傑作や! 前回も面白かったけど、今回は怪談要素も加わって、さらに磨きがかかっとるなあ。まさか、お岩さんとお菊さんがホンマもんやとは、わては最後まで騙されたで。
この話は、人間が思い込みで物事を判断することの滑稽さと、ちょっとした悪戯が思わぬ方向へ転がっていく面白さがぎゅっと詰まっとる。
舞台でやったら、客席は笑いと悲鳴の渦やろなあ。源太はんと二本末殿のドタバタぶりも、御前様とお屋形様の茶目っ気も、登場人物みんなが生き生きとしとる。
加地鳴海はん、あんたはほんまに物語を作るのがうまいなあ。わても、また次の話が楽しみやで。
どうですやろ? 藤山寛美も、この話には拍手喝采モンやと思いますで!
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<直木三十五殿のおことば>
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直木三十五、怪談見合いを語る
おう、またぞろ妙な話を持ってきやがったな。今度は「怨念と輪廻の紅い糸」だぁ? なんだい、真夏の綺談たぁ、おめえさん、よっぽど暇を持て余してんだな。オールジェンダー風呂より怖い話ってんだから、そりゃあ、聞く前から背筋が寒くなるぜ。
お屋形様だの足軽小姓だの、七つから八十だの、侍女も八つから八十だの、随分と幅があるじゃねぇか。おいおい、そんな耄碌(もうろく)した爺さん婆さんまで、若ぇ衆と一緒に風呂に入ってるってのかい? そいつぁ、とんだ混浴だな。
それに、八十越えの未婚の御局(おつぼね)が二人もいるってぇんだから、そりゃあ、粗相でもしたら骨まで食われちまうぜ。ご愁傷様だ。
で、七夕の祭りが終わって、どうも「あちらのほう」が進んでるかどうかって話になったわけだ。
おいおい、御前様もずいぶん遠回しな言い方するじゃねぇか。フィンランドじゃ、はっきり言わねぇ騎士は相手にされねぇって? そりゃあ、ごもっとも。男は黙って肝っ玉を据えときゃいいんだ。
春画のような、子作りに関する話だなんて、おいおい、おめえさんたち、とんだ妄想族だな。まだ致してねぇってのは、そりゃあ、そうだろうよ。こんな話してちゃあ、女には相手にされやしねぇ。
「お屋形様の手前、臣下にも侮られるやもしれぬ」ってぇのは、これまたご大層な話だ。お屋形様もずいぶん気を遣ってくれるじゃねぇか。良き女がおればってか。そいつぁ、ありがたい話だ。
しかし、あの「青空厠の件」ってぇのは、なんだい? おいおい、とんでもねぇ秘密を握られてるんじゃねぇか、おめえさん方。御前様の弱みだと? どんな弱みなんだか、知らねぇが、こいつぁ、とんだ弱みを握られて、お見合いをさせられる羽目になったってわけだ。
三の丸の狭い部屋で、婚期を逃した侍女たちとのお見合いか。しかも、顔や年で判断させねぇために、後ろ姿しか見せねぇってんだから、とんだ縛り付きだ。越後美人だって? それは、口八丁手八丁の御前様の嘘八百じゃねぇのか?
襖の向こうに美女が十人。ほう、背の高い者が二人いるってか。さぞや美貌なおなごだろうって? おいおい、おめえさんたち、とんだ楽天家だな。後ろ姿と声だけで決めるってぇんだから、そいつぁ、とんだ博打だぜ。
で、二本末は右から二人目の「お岩」だと? 源太は左から三番目の「お菊」だと? おいおい、どこかで聞いた名だって? 四谷だの、番町皿屋敷だのってぇんだから、こいつぁ、とんだ因縁(いんねん)だな。同じ翁夫婦に育てられたってぇんだから、とんだ腐れ縁だぜ。
「顔はわからぬが越後美女に相違ない」って、おめえさんたち、とんだ間抜けだ。そいつぁ、とんだ悪夢の見合い話になりそうだぜ。祝言の日取りまで決めようなんて、とんだ気が早いな。
ところがどっこい、御前様、とんだことを言い出しやがった。「お岩とお菊の名はあり得ぬ」だって? 五十年前に古びた宿で亡くなられてるってぇんだから、そいつぁ、とんだ怪談だ。おめえさんたち、とんだ狐につままれた気分だろうよ。顔が引きつってるってんだから、そりゃあ、あたりめぇだ。
「風呂といい、厠といい、此度は怪談見合いとは、お岩、お菊とは上手くいきましたなぁ」って、おいおい、お屋形様と御前様、とんだ悪趣味な悪戯だぜ。八十越えの侍女に厚化粧させて、幽霊に見せかけたってぇんだから、こいつぁ、とんだ悪趣味だ。しかも、もともと八人しかいなかったのに、十人いるって嘘ついたってんだから、とんだ詐欺だ。
しかし、急逝した侍女が二人いて、そいつらが背が高くて醜形だったってぇのは、とんだ偶然か、それとも、とんだ因果応報か? そして、「お岩とお菊は本物だと申すか…」ってぇんだから、こいつぁ、とんだ恐怖の結末だぜ。
お屋形様と御前様が気を失うってぇんだから、そりゃあ、そうなるわな。とんだご乱心だ。この話、おめえさん、どこまで本当なんだい?
この話の続きが気になるぜ。おめえさんたちは、この後どうなったんだい?
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<黒澤明監督のおことば>
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黒澤明、この「怨念と輪廻の紅い糸」を読んでみたぞ。
この「怨念と輪廻の紅い糸」とやら、面白うございましたな。これはまた、何とも奇妙な、それでいて人間臭い物語だ。私が好む題材とは少々毛色が違うようにも見えるが、いや、待てよ。
この滑稽さの奥に、人の愚かさ、思い込み、そして何より、抗いがたい「運命」というものが蠢いているではないか。
まず、冒頭の掴みが良い。「何時の世でもおなごとおとこの紅い糸はあるものよ。悪夢の見合い話を思い出しておった。聞かぬほうがよいやもしれぬ。オールジェンダー風呂より怖い話じゃからの。」この語り口。
いかにも老練な語り部が、煙管でも燻らせながら、にやにやと含み笑いをしている様が見えるようだ。観客を引き込む導入としては上々。
足軽小姓の源太と二本末か。発育盛りの羽目外し未熟青年、と。なるほど、若さゆえの愚かさ、世間知らず、そして欲。これが物語の原動力になっている。
侍女頭の英愛御前様の小姓たちへの言葉遣いの指導、そして八十を越した未婚の御局の存在。このあたりの設定が実に効いている。
特に御局の件は、後々の展開を予感させる、実に巧みな伏線だ。粗相をしたら八つ裂きにされかねぬ、と。このあたりのユーモアのセンスも悪くない。
七夕の祭り、そして「あちらの方」という婉曲な表現。この言葉遊びが、若者たちの純粋な(あるいは不純な)欲望と、年長者の含みのある思惑とを対比させている。
転倒殿の「致したこととは何をいうか」という勘違い、そして春画の話。これは笑いを誘う。だが、この笑いの裏に、男たちの性に対する稚拙な好奇心と、それを見透かす御前様の老獪さが見て取れる。
「芬蘭土ではハッキリ物を申さぬ騎士はおなごからは相手にはされぬぞ」という一言も良い。
異国の例を出すことで、物語の世界観に広がりを持たせると同時に、若者たちの煮え切らなさを際立たせている。
お屋形様が若者たちに良きおなごが居ればと気遣うあたりも、時代背景を思わせる。そして、青空厠の件で御前様の弱みが露呈し、それがきっかけでお見合い話が進むという展開。
これがまた、何とも人間臭い。偉ぶっているようで、どこか抜けている御前様という人物像が、このエピソードで一気に立ち上がってくる。
「婚期を逃した侍女は多い。風貌も齢もいろいろじゃ」という御前様の言葉。ここで読者は、何か怪しい気配を感じ始めるだろう。
そして「おなごの方は後ろ姿でしか紹介できぬ」という条件。これはもう、疑いの目で見ざるを得ない。
顔や齢だけで判断させぬという建前はもっともらしいが、何か隠している、という予感が募る。
越後美人という言葉も、また一筋縄ではいかない含みがある。
見合いの場面。源太と二本末が、後ろ姿と声だけで相手を選ぶ。背の高い者が二人いるという描写。ここで、読者の予想は膨らむ。まさか、とは思うが、この種の物語では往々にして、その「まさか」が起こるものだ。
二本末が選んだ「お岩」、源太が選んだ「菊」。この時点で、読者は鳥肌が立つだろう。まさか、あの「四谷怪談」と「番町皿屋敷」か、と。
そして、極め付きは御前様の反応だ。「後ろ姿と声だけでよく決心されもうしたな」という含みのある言葉。さらに、「十人おったようなおらなかったような」という曖昧な記憶。
そして、お岩とお菊が五十年前に亡くなっているという衝撃の事実。このあたりの畳み掛けは、見事としか言いようがない。
だが、この物語の真骨頂はここからだ。お屋形様と御前様が仕組んだ、若者たちへの「悪戯」だった、という真相が明かされる。
風呂といい、厠といい、怪談見合いといい、若者たちを懲らしめるために仕組んだという。この設定は面白い。
人の悪意、あるいは悪戯心もまた、人間を動かす原動力だ。
だが、この「悪戯」にも、またさらに深い「真実」が隠されていた、というどんでん返しが秀逸だ。
見合いの前に、背の高い高齢の侍女二人が急逝した、というお屋形様の告白。井戸に落ちた者、自害した者。そして、御前様にも十人に見えた、という証言。これは、もう「怪談」そのものだ。
「さすれば、お岩とお菊は本物だと申すか・・・」という御前様の狼狽ぶり、そしてお屋形様と御前様が気を失うという結末。
これには一本取られましたな。人間の想像力、思い込み、そして実際に起こった不気味な出来事とが複雑に絡み合い、最終的には誰もが予測しなかった結末へと辿り着く。
この物語は、単なる滑稽話でもなく、単なる怪談でもない。人間の思い込みや願望が、現実と混じり合った時に生まれる「幻」のようなものを描いている。
そして、その幻が、最終的には現実の人間を恐怖に陥れる。まるで、人の心の中に潜む「闇」を、ユーモラスな筆致で炙り出したかのようだ。
私がもしこれを映画にするならば、この見合いの場面は、きっと後ろ姿の侍女たちの顔に、微かな影や歪み、あるいは老いの皺が、一瞬だけ浮かび上がるような演出をするだろう。そして、お岩と菊の語り口には、どこか古びた、幽霊のような響きを忍ばせる。最後の御前様とお屋形様が気を失う場面は、派手な効果音よりも、静寂の中に響く二人の呻き声、そして風の音で、観客の恐怖を煽るだろう。
「怨念と輪廻の紅い糸」か。紅い糸は、縁を結ぶだけでなく、時として、恐ろしい因縁をも結びつける。人の世の因果応報、そして、抗えない運命。これを滑稽な形で描いた、見事な綺談でございました。
■追記したあとの寸評
おい、あんた。あんたが付け加えたという「瞬きのシーン」と「背中の紅い影」。これは、人間というものの奥底に潜む、どうしようもない業(ごう)と、避けられぬ宿命というものを、より鮮烈に、容赦なく描くための、実に肝になる要素だ。
黒澤明が描く人間の業と宿命
まず、この物語の冒頭にある「人間は拙者を含めて、自分の本性を存ぜぬうちに表の常識を解こうと致すが、無意識の心は皆同じように宿ってござる」という一文。ここに、この話の、いや、人間というものの真実がある。
この「無意識」や「本性」というものこそ、俺が長年、映画で描いてきた人間の弱さ、愚かさ、そして、それでもなお存在する、
どうしようもない美しさだ。加地殿の語りも、ただの語りじゃ済まさん。人間の業を暗示する、重厚で、聞く者の魂に響くような語り口になるだろうな。真夏の奇談という言葉も、単なる怪談じゃない。人間の心が、真夏の太陽のように熱を帯び、理性というものが、いとも簡単に溶け出してしまう様を、象徴的に描くものとして捉える。
瞬間の闇:半五郎の瞬き
さあ、肝心の場面だ。半五郎がお丁の入浴を覗き見するくだり、あんたが加えた「瞬きの音」。これをどう見せるか。
俺ならば、半五郎がうとうとと眠りにつこうとする、その一瞬の静寂を、極限まで引き伸ばし、画面に緊張感をみなぎらせる。月の光が障子に影を落とし、お丁の衣を剥ぐ姿が、ゆっくりと、しかし確かな存在感を持ってシルエットで浮かび上がる。この時、カメラは容赦なく半五郎の顔に寄るんだ。彼のまぶたが、ゆっくりと、しかし確実に開閉するのを捉える。
そして、その「瞬きの音」を、まるで雷鳴のように、あるいは、腹の底から響く心臓の鼓動のように、観客の全身に響かせる。それは、半五郎の理性が崩壊し、禁忌へと足を踏み入れる、その瞬間の、決定的な、そして取り返しのつかない音だ。彼の心の奥底で、何かが決壊する音が、観る者の心にも直接響くように演出する。
その瞬きと同時に、湯船の影に別の影が被さる。この影は、単なるシルエットじゃない。俺なら、それは半五郎の内面に巣食う、汚れた欲望、あるいは彼自身が知らぬ間に背負わされてしまった「業」の象徴として描くだろう。暗闇の中で蠢く、得体の知れない塊だ。半五郎が自制心を失い、その一部始終を目にする。
その時の彼の表情は、恐怖、好奇心、そして絶望が入り混じった、観客に人間の弱さ、そして愚かさを深く、そして痛烈に問いかける、強烈なものになるはずだ。
背中に刻まれた業:紅い影
そして、翌朝の対話だ。お丁が半五郎に「あなた様の背をみればわかります」と告げるシーンは、この物語の核心、「罪の刻印」として描かれるだろう。
俺はこの「紅い影」を、半五郎が犯した過ち、そしてそれによって負わされた宿命の証として、極めて象徴的に、そして視覚的に力強く表現する。お丁が指摘する瞬間、半五郎の背中にカメラがゆっくりと、しかし容赦なくズームインしていく。最初は微かだが、次第に鮮明になる「紅い影」。それは単なる赤じゃない。それは血の色であり、慚愧(ざんき)の色であり、そして、どんなに洗っても、決して拭い去ることのできない「業」の色だ。この影は、物理的な痕跡としてではなく、半五郎の魂に深く刻まれた、決して癒えることのない傷として、観る者の心に焼き付かせる。
「月の明かりでわたくしのあらわな姿が、紅い影となって焼き付いておりまする」というお丁の言葉と共に、半五郎の背中が熱くなり、羽が生えてくる描写は、俺ならば、人間の変容、あるいは宿命の象徴として、力強く、そしてどこか悲劇的に描く。
羽は、美しく舞い上がるものではない。むしろ、半五郎を縛り付け、新たな宿命へと誘う、重く、そしてどこか異形な翼として描かれるだろう。半五郎が鶴に、お丁が亀に戻るという展開も、単なる変身物語じゃない。人間の欲望と、それによってもたらされる宿命的な「赤い糸」の物語として、深く、そして力強く描くはずだ。
最後の龍宮城の描写も、単なる幻想的な場所じゃない。女性ばかりの閉鎖的な、ある種の「楽園」でありながら、同時に半五郎にとっての「檻」となるような、皮肉な場所として描くだろう。浦島太郎の祖父という設定も、単なる昔話の繋がりとしてじゃない。人間の「業」というものが、いかに世代を超えて受け継がれていくかということを、深く、そして厳かに描くための、重要な伏線として使うだろうな。
黒澤明がこの物語を撮るならば、それは、人間の本性、罪、そして避けられぬ運命を、哲学的に、そして力強い映像美で描き出した、紛れもない傑作となるはずだ。
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<滝沢馬琴先生のおことば>
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おぉ、これはこれは……。加地鳴海殿の筆致、まこと以て恐るべきものよな。わし滝沢馬琴、この「天正戦国小姓の令和見聞録」とやらを読み進むにつれ、背筋に冷や汗が流れ、肝が縮む思いを致したわい。
まず、冒頭の注意書きに度肝を抜かれた。
「この話を読まれた貴人は一人で井戸を覗いたり、うっかりと皿などを割ってはならぬ。階段を踏みはずさぬよう、油断めされるな。そなた達の背に白い手が迫るやもしれぬ。丑三つ時にオチを追記してござる。」
と来たものよ! これぞまさしく怪談の妙味、読者の心を掴んで離さぬ仕掛けよな。
わしもこれまで数多の奇談怪談を書き綴って来たが、これほどまでに露骨に、それでいて巧みに恐怖を煽る文言は、なかなかに見られるものではない。読まぬわけにはゆかぬ、読めばその先に恐ろしきものが待つと知っていても、好奇心に駆られて頁を繰ってしまう、斯様な魔力があるわい。
さて、物語の舞台設定も面白い。「春日山城、鳴海幕府(開府1587年・天正15年)」とな。上杉道満丸景虎なるお屋形様に、フィンランド生まれの英愛御前様とは、随分と趣の異なる組み合わせよ。
異国の妻が日本の世にどう馴染むのか、興味津々であったが、この御前様、なかなかどうして、ただの異国のおなごではないわい。
毒舌ご意見番の今冬香殿、食客・毒見役の二本末転倒殿と、個性豊かな面々が揃っておる。
そして何より、見聞録の語り手である小姓・仁科源太殿と、転倒殿の若者二人のやり取りが、実に滑稽で、それでいて不気味な展開へと読者を誘うのじゃな。
「怨念と輪廻の紅い糸」(真夏の綺談)と題された話の始まりは、源太殿の「悪夢の見合い話を思い出しておった。聞かぬほうがよいやもしれぬ。オールジェンダー風呂より怖い話じゃからの。」
という一言。これまた、読者の想像力を掻き立てるではないか。一体全体、オールジェンダー風呂とは如何なるものか、そしてそれよりも怖い話とは如何ほどのものか、と。
物語が進むにつれて、英愛御前様が源太殿と転倒殿の行く末を案じ、見合いの話を持ちかけるところが、そもそもの発端よな。しかし、この見合い、一筋縄ではゆかぬ。
「おなごの方は後ろ姿でしか紹介できぬ」 「顔や齢だけで勝手に判断せぬようにと、お屋形様からの下知もござる。」
と来た! いかにも怪しげな設定ではないか。しかも、越後美人じゃと謳いながら、その実態は闇の中。
読者としては、この時点で何やら仕掛けがあると感じずにはいられぬ。わしならば、ここで既に背筋がゾッとしたであろうな。
そして、見合いの席での、源太殿と転倒殿の呑気なやり取りが、さらに不気味さを増す。
「ワシは右から二人目の背の高いオナゴにする。」
「拙者は左から三番目じゃ。この方も高き背でござるな。」
と、嬉々として相手を決める二人。まさか、この後に待ち受ける恐怖を知らずに、であるから、余計に物悲しさが募るわい。
「岩と申します。お見知りおきを・・・」「四谷でございます」
「江戸の四谷か」 「菊と申します。お見知りおきを・・・」
「江戸の番長皿屋敷でござります。」
このあたりで、わしは思わず「はっ!」と声を漏らしてしもうたわ。まさか、まさか、かの有名な幽霊の名を出すとは!
しかも「お岩様と古びた宿の翁夫婦に育てられました」「縁あって、お岩様と古びた宿の翁夫婦に育てられました」と来たものじゃから、読者としてはもう、疑念を抱かずにはおれぬ。この作者、只者ではないわい。
そして、極めつけは英愛御前様の言葉よ。
「あの古びた宿で五十年前に亡くなられておる」 この一言で、物語は一気に怪奇の淵へと突き落とされる。
源太殿と転倒殿の表情が引きつる様は、目に浮かぶようじゃな。
そして、物語の結びがまた恐ろしい。 「あの二人、侍女らが齢八十で厚化粧したのにもまだ気づいておらぬようじゃ。お屋形様とは打ち合わせどおりということですな。この悪戯上手くいきよりましたぞ」 、
と安堵したかのような英愛御前様とお屋形様の会話。
しかし、その直後の衝撃的な事実!
「見合いの席ではたしか、はじめから八人しかおらぬはずぞ。そなたに申すのが遅れたが、見合いの前に十人のうち齢八十の二人の侍女が急逝したのじゃ。一人は井戸に誤って落ちて、もうひとりは腫れ物に悩んで自害されたと聞く」
これにはわしも肝を冷やし、背中の毛が逆立ったわ! 戯言で十人と言ったはずが、本当に十人に見えた、しかも亡くなったはずのお岩とお菊がそこにいた、とは! これぞまさしく、怪談の真髄、人間心理の綾を巧みに操った見事な筋書きよな。
わし滝沢馬琴、この物語を読んで、作者の想像力と筆力に感嘆するばかりよ。怪談に不可欠な「怖さ」を随所に散りばめ、読者を飽きさせぬ工夫が凝らされておる。
特に、幽霊を直接登場させずとも、その存在を匂わせ、恐怖を煽る手腕は見事としか言いようがない。
また、登場人物たちの会話も、それぞれの人柄がよく表れており、特に源太殿と転倒殿の暢気さが、怪談の不気味さを一層引き立てておる。
このような物語、わしならば、さらに細部にわたる描写を加え、読者が登場人物たちの恐怖をより一層肌で感じるような工夫を凝らすであろうな。
たとえば、井戸に落ちた侍女の最期を、より詳細に、より生々しく描いたり、腫れ物に苦しむ侍女の苦悶の表情を克明に描写したりすることで、その「怨念」がより読者に伝わるように、と。
また、お岩とお菊がどのような姿で現れたのか、具体的な描写を避けることで、読者の想像に委ね、より一層の恐怖を掻き立てることも可能であろう。
しかし、この物語の最大の魅力は、その結末にある。
「お屋形様と御前様が目をあけて気を失うとるぞ」という最後の描写は、まさに「怪談」そのもの。
語り手までもが恐怖に打ちのめされるという幕引きは、読者に深い余韻を残す。 加地鳴海殿、まこと恐るべき才の持ち主よ。
この物語、世に出れば、多くの読者を震え上がらせることであろうな。わし滝沢馬琴、大いに感銘を受け申した。
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<小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)先生のおことば>
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小泉八雲先生のご感想
ああ、なんという怪しくも面白き物語でござりましょうか!これぞまことに、人々の心の奥底に潜む「恐ろしきもの」と「滑稽なるもの」を巧みに織り交ぜた、見事な綺談でござりまする。加地鳴海殿の才筆、恐るべしと申すほかございませぬな。
「怨念と輪廻の紅い糸」と題されたこの話、まさしく夏の夜の怪談に相応しき一篇でござった。舞台は春日山城、鳴海幕府。開府が天正十五年と申されますれば、史実と虚構が入り混じる、なんとも興味深い設定にござります。上杉道満丸景虎様、そしてフィンランド生まれの英愛御前様といった御仁がご登場なされるだけでも心躍るものにござりますが、物語を彩る面々がまた、実に個性豊か!
小姓の仁科源太殿と二本末転倒殿は、わんぱく盛りの「羽目外し未熟青年」とのこと。彼らの率直な物言いや、時に見せるおかしな勘違いは、読者の笑いを誘いますな。
そして、その二人の若者をときに窘め、ときに導く英愛御前様の、芯の通った、それでいてどこかユーモラスな言葉遣い。さらに、毒舌ご意見番の今冬香殿、食客にして毒見役の二本末転倒殿(こちらは先の小姓と同一人物でござるかな?それとも同名の方か?)、そして物語の語り手である小姓・仁科源太殿に、この見聞録の真の著者たる加地鳴海殿。これだけの魅力的な登場人物が揃えば、物語が面白くならぬはずがございません。
特に印象深いのは、英愛御前様と二人の小姓との、まるで漫才を見ているかのような軽妙洒脱な会話でござりました。
「芬蘭土ではハッキリ物を申さぬ騎士はおなごからは相手にはされぬぞ」といった御前様の言葉は、異国の文化を感じさせつつ、二人の若者を鼓舞するようでいて、実はお見合い話へと誘う伏線であったとは!
「オールジェンダー風呂より怖い話じゃからの」という一言も、読者の期待を嫌が応にも高め、その後の展開への橋渡しとなりますな。
そして、物語の核心である**「怪談見合い」へと誘われる展開は、まことに巧妙でござる。御前様が仕掛けた「後ろ姿と声だけで決める」という条件は、読者の想像力を掻き立て、いかなる美人たちが現れるのかと思わせる。
しかし、ここで「越後美人」と謳っておきながら、まさかその実体が「お岩」と「お菊」であるとは!この落差こそが、この物語の真骨頂でござりましょう。
源太殿と転倒殿が、それぞれ「岩」と「菊」という名を聞いて、どこか聞き覚えがあると感じながらも、その正体には気づかぬ鈍感さ。
読者は彼らの滑稽さに笑いながらも、やがて来るであろう恐ろしい真相に、期待と不安を抱かずにはいられません。
そして、「四谷」や「番長皿屋敷」といった、日本人が古くから親しんできた怪談の地名をさりげなく差し込むことで、物語は一気に幽玄なる深みへと誘われまする。
「あの古びた宿で五十年前に亡くなられておる」という御前様の告白によって、真実が明らかになった時、小姓たちの顔が引きつり、ついには気を失う。この反応は、読者の共感を呼びますな。
そして、最も見事であったのは、この怪談見合いが、実はお屋形様と御前様による「懲らしめ」であったという顛末。
風呂や厠での戯言に及んだ小姓たちを、真面目に見聞録の編纂に精を出させるための「良い薬」として仕組まれたものとは、恐れ入りました。
しかし、物語はここで終わりませぬ。最後の最後に明かされる、さらなる真実。「見合いの席ではたしか、はじめから八人しかおらぬぞ。十人のうち見合いの前に齢八十の二人の侍女が急逝したのじゃ」というお屋形様の衝撃的な告白は、読者を再び恐怖の淵へと突き落とします。
お屋形様の戯言が、皮肉にも真の怪異を引き起こしてしまった。つまり、源太殿と転倒殿が見初めた「お岩」と「お菊」は、まことの幽霊であったということにござります!
この最終的なひねりによって、物語は単なる滑稽な話に終わらず、怪異が日常のすぐ傍らに潜んでいること、そして人間の認識の曖昧さが、時に予期せぬ恐ろしい結果を招くことを鮮やかに描き出しておりまする。
お屋形様と御前様までが、その事実に気づいて目を剥き気を失うという結末は、この怪談の真髄を極めたものと申せましょう。
語り手のみならず、登場人物までもが恐怖に打ちのめされるという趣向は、読者に更なる驚きと深い余韻を与えるものにござります。
加地鳴海殿の筆致は、まるで水墨画のように淡くも深遠な世界を描き出し、読者をその世界へと引き込む魅力に満ちておりまする。
言葉の選び方、情景描写、そして登場人物の心情の機微に至るまで、細やかな配慮がなされており、それがこの物語に奥行きと情感を与えております。
まことに結構な話を聞かせていただきました。これは後世に語り継がれるべき、新たなる奇談でござりましょう。願わくば、この物語が、かの幽玄なる世界から抜け出し、人々の心に深く刻まれることを願ってやまぬ次第でござりまする。この素晴らしい物語に触れ、拙者の心は深く揺さぶられました。
もしや、加地鳴海殿は、この他にも、何か人々の心を捉える新たな怪異を紡いでいらっしゃるのでござりましょうか?
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<怪談好きの歴女のおことば>
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ぬぬぬ…これはまた、なんとも歴女の胸をくすぐる怪談ではないか!
怪談好き歴女の「天正戦国小姓の令和見聞録」感想
あらあら、これはまた、稀有なる書物を見つけ申したな!「天正戦国小姓の令和見聞録」と申すか…ふむ、なかなかに面白そうな書名でございますこと。まさか、上杉景虎様がお屋形様で、しかもフィンランド生まれの英愛御前様がご正室様とは…!ははあ、これはなかなかの奇想天外な設定じゃのう。そして毒舌ご意見番に食客・毒見役とは、賑やかな面々が揃っておる。ふふふ、見聞録検めが小姓の仁科源太殿で、著者が加地鳴海殿と…なるほど、これは期待が高まるというものじゃ!
序章にゾクゾク、背筋が凍る期待感
それにしても、冒頭の注意書きには参ったわい!「井戸を覗くな」「皿を割るな」「階段を踏みはずすな」とな…。「そなた達の背に白い手が迫るやもしれぬ」とは、くぅ~!もうこの時点で、わたくしの怪談センサーがビンビン反応しておるではないか!しかも「丑三つ時にオチを追記してござる」とまで言うておるではないか!これはもう、読まずにはおられぬではないか!怪談好きのわたくしとしては、この掴みだけで大満足じゃ。さあさあ、いったいどんな恐ろしい話が待っておるのか、この胸の高鳴りを抑えられぬわい!
微笑ましき痴話騒動と、忍び寄る怪異
「怨念と輪廻の紅い糸」とは、なんとも風流な題でござるな。しかし「悪夢の見合い話を思い出しておった」「オールジェンダー風呂より怖い話」とは…ふふ、源太殿と転倒殿の掛け合いがなんとも微笑ましいこと。若者らしい発育盛りの羽目外し未熟青年とは、なんとも可愛らしいではないか。英愛御前様が女性への言葉遣いを厳しく躾けておられるあたり、上杉家の規律の厳しさも垣間見えて、歴女としてはたまらぬものがあるのう。
それにしても、七夕の祭りの後での「あちらのほう」の話とは…ふふふ、御前様もなかなかの茶目っ気をお持ちでいらっしゃる。春画の話まで飛び出すとは、なんともおおらかな時代でございますこと。しかし、それが子作りの話に繋がり、挙げ句の果てにはお屋形様からの「良きおなごがおれば」というお言葉…はて、このあたりから何やら怪しい雰囲気が漂い始めるではないか。
そして極めつけは、青空厠の件で弱みを握られた御前様が、源太殿と転倒殿に見合いの話を持ちかけるところじゃ!しかも「後ろ姿でしか紹介できぬ」とは…!むむむ、これはいかにも怪談の導入としては完璧ではないか!顔や齢で判断せぬようにというお屋形様の下知も、後から思えば恐ろしや…。越後美人という言葉にも、いとしいかな、油断めされておったな、源太殿、転倒殿よ。
出ました!まさかの定番怪談オールスターズ!?
そして、見合いの席でのこと!十人いるはずが、源太殿と転倒殿が選んだのは…なんと**「お岩」と「お菊」ではないか!うひゃあああ!わたくしは思わず声を上げてしまったぞ!四谷生まれのお岩殿に、番町皿屋敷育ちのお菊殿とは…これはいよいよ本格的な怪談に突入ではないか!「縁あって、お岩様と古びた宿の翁夫婦に育てられました」とは…なんとも恐ろしき因縁**よのう。ここでゾクゾクと全身に鳥肌が立ったわい!まさかこんな展開が待っていようとは…!
源太殿と転倒殿は、顔が見えぬゆえに「越後美女に相違ない」と、はしゃいでおるが…哀れなるかな、二人はまだその真実に気づいておらぬ。読んでいるわたくしとしては、もう心の中で「逃げろ!逃げろ!」と叫んでおったぞ!
戦慄のオチ、これぞ怪談の醍醐味!
そして祝言の日取りを決めようと御前様のもとへ向かう二人…ここで御前様が「お岩とお菊の名はあり得ぬな…五十年前に亡くなられておる」の一言で、まさかの本物確定!うひゃあああ、恐ろしや!恐ろしや!
しかし、ここからがさらに恐ろしい!「上手くいきましたなぁ」と笑うお屋形様と御前様、実は戯言で八人のところを十人と言っただけだと…!そして、その八人の中には、見合いの前に齢八十の二人の侍女が急逝していたと…!
「さすれば、お岩とお菊は本物だと申すか…」
この最後のセリフで、わたくしはもう、恐怖のあまり身動きが取れなくなったわい!なんと恐ろしい怪談か!まさかお屋形様と御前様までもが気を失うとは…!これはもう、怪談好きのわたくしにとって、これ以上ないほどの至極の読書体験でござる!まさに怪談の王道を行く、見事な仕掛けでございました!
仁科源太殿と二本末転倒殿、どうかご無事で…!この続きがどうなるのか、夜も眠れぬほど気になって仕方がござらぬ!ああ、この怪談、ぜひ語り継ぎたいものじゃのう!
なんと、読後には背中にひんやりと白い手が触れたような心地がするではないか!まさしく怪談好きの心を鷲掴みにする逸品じゃった!
