透明レモンソーダ プロローグ
あらすじ
大学二年生の前田 当麻(まえだ とうま)には好きな人——佐藤 明日香(さとう あすか)がいる。誰にでも優しく、明るい佐藤には思い人がいるらしい。どうやらその人は……。
——たしかにあった愛は、人からみえないモノでした。
——あなたに私たちがみえていますか
プロローグ
誰かの話し声が絶えず流れている。
小さな長方形の中には、水色を基調としたセーラー服を着た少女たちと薄い水色のワイシャツを着た少年たちがいた。
教室なのだろう。背景にある窓の向こうには眩しいほどの青々とした空が広がっていて、周囲には机と椅子が規則正しく並んでいる。彼らは机にもたれかかったり、椅子に座ったりしながら、歯を見せて笑っている。
その中心にいるのは、ミルクチョコレートのような明るい茶色の髪を一つに結った少女だった。
『撮るよー!』
溌溂とした大きな声が響くと、長方形の中にいた少年少女たちが一斉にこちらを振り向いて、茶髪の少女が真ん中になるようにして立ち、ピースをしたり変顔をしたりと各々好きなポーズをとる。
写真を撮られると思っているのだろう彼らが動く様子はない。三十秒ほど経った時、茶髪の少女がポーズをとったまま、瞬きを繰り返してから目を見開いて口を開けた。
『え、待って、もしかして動画!?』
『よくぞ気づきました! 動画でーす!』
『もー!!』
からかいを盛大に含んだ声が少年少女たちに飛ばされる。皆一様に文句をたれながらポーズをとるのを止めて、先ほどまで談笑していた位置に戻った。
『ね!』
茶髪の少女が声をあげる。透き通る綺麗なこげ茶色の瞳がこちらを真っすぐ見ていた。
『いいの撮れた?』
『もちろん!』
彼女の声に答える声が響く。
『そっか』
少女は目を細めるとともに口角をあげて笑った。花がふわりと開くように、柔らかく、優しく、笑ったのだった。
『ありがとう』
その声はとても、とても、穏やかであった。
第一章
第二章
第三章
第四章
第五章
第六章
エピローグ
