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『選ばれない自分』(8)

【夏 2nd】

 梅雨明けのニュースが流れた。夏休み直前の書店は、旅行ガイドブックなどが多数発売され華やかになる。心なしか、お客さんの表情も明るく感じられる。
 私はようやく心の平静を保ち始めていた。再び心を凍らせて、日常の業務を淡々とこなしていた。家庭内は何も変化はない。妻からは何も連絡はなく、子どもは部屋に引き籠ったままだ。この先、自分の人生がどうなるかはわからない。希望はないが、先の事を考えても不安が大きくなるだけなので、私は日々の業務に没頭するよう心がけていた。
 桧山さんは、結婚と同時にアルバイトを辞めていた。学生のアルバイトと異なり、毎週決まったシフトをきちんとこなしてくれる人がいなくなる事はやや影響が大きかったが、なんとか学生のアルバイトでシフトを埋める事ができていた。
 そんな時、書店に新しいアルバイトの人がやってきた。その人は白石さんと言う女性だった。年は40歳少し手前、落ち着きがあって気配りの出来る人だ。履歴書の自己紹介欄に、趣味は映画鑑賞と美術鑑賞と書いてあった。
 彼女の勤務初日、私は書店の周囲の店を紹介がてら、彼女をランチに誘った。白石さんは少し控えめな人で、私との会話はあまり盛り上がらなかった。しかしそれでも、居づらさは感じなかった。ランチを出た後、昨年桧山さんとよく通ったアイスクリームスタンドの前を通った。するとおとなしい白石さんがいきなり大きな声で言った。
 「私、アイスクリーム大好きなんです!」
 白石さんと私は、二人で並んでアイスクリームを食べた。梅雨明けの抜けそうな青空に、綺麗な白い雲が浮かんでいた。

※最後までお読みいただきましてありがとうございました。
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ラーメンと競馬と映画がたまらなく好きです。 こんな辺境の文章を読んでいただきまして、本当にありがとうございます!