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よもすえ団のみなさんが、ゆるゆると地球を侵攻中です!(改訂版)その8

『彼らの侵略目的は、実はあなたの心かも?』

【見た目優しくかわいい彼らに、あなたの心が盗まれる……】

連載第1回目 第2回目 第3回目 第4回目 第5回目

 第6回目 第7回目

【社員旅行?怒涛の大宴会!】

 それは……怒涛の宴会時間だった。
 まるで、どこぞの国でかつて繰り広げられていたという、阿鼻叫喚の乱痴気騒ぎにも似た──

 若い板前さんのマグロ解体ショーの後、そのクロマグロ(推定300キロ)を喰いつくしたちび共。
 そのままの勢いで宴会を始めたんだけど、その様子と言ったら、エントロピーの神が白目を剥きながら、一升瓶を振り回しつつ、いっき!いっき!

 さあ!

 飲んで歌って、踊って笑って……いっき、いっき、はいはいはい!

 この世界にハラスメントの概念など……ない。

 宴会場と化した座敷の様子を、こっそり覗き見した俺は、しばらく目が点になったままだった。

 宇宙節理の平衡ってなんだ?

 この世界で最も美しい筈の数学定理も、明後日の方向に吹っ飛んで行ったまま、影も形も見当たらない。
 そして、宴会場となっている松の間は本来8畳間の座敷の筈だが、どういう訳か最大収容人数が100名の、大宴会場に変わっていた。

 まあ、あのちび共の仕業には違いないだろう。
 俺はそのままそーっと室内に入り、座敷に置かれてる衝立の陰から様子を伺っていた。

 てけてけと、座敷の中を歩き回って「お酌」をしているちぃたんを呼び止めて、これは一体どういうからくりかと尋ねたところ、「四次元モジュール」とかいう、宇宙通販グッズを使った結果だということが分かった。

 何だってー?

 いや、いいんですよ。
 ここは元々、お化け屋敷だし。
 霊障が酷くて、長年放置されてる物件なんだから。

 しかもあいつら、どこぞの別な宇宙から来たという存在だし、これ以上驚くことは──

 だがしかし、座敷を後にしようとして、俺の目は宴会場の舞台の上に釘付けになった!

 舞台の上にいたのは、豆絞りの手拭いを鉢巻きにして、爪楊枝を二本加え、それで両方の鼻の穴を拡げたずちころねんが、笊を手にどじょう掬いの踊りを始めたところだった。

 短い手足のくせに、動きの切れが素晴らしい。
 思わず笑いながら見入ってしまった。

 曲に合わせて、リズミカルに舞台の上の「田んぼ」からひょいひょいとドジョウを救い上げ、腰に吊るした”魚籠”の中に入れていく。
 時折逃げ出したドジョウを捕まえるしぐさも、観客の笑いを誘う。

 舞台の下ではほかのちび共の他に、どういう訳か狸やら狐やら、その他大勢の姿もあった。
 一体どこから……いや、考えるのはよそう。

 考えたら負けだ。
 ここは混沌、不条理世界のお化け屋敷なのだから……

 そして次の演目が始まった。

 脳筋族のぱふんが、空手の演武を披露していた。
 舞台の四方八方に置かれた「瓦」を、ピンボールの要領で、次々と割っていく。

「てい!」
「とわー!」
「ちぇすとー!」

 気合いと共に、頭突き、手刀、両足蹴りで瓦を粉砕していく。

 ちなみに、舞台上は先ほどの「ドジョウ掬い」のせいで水浸しであり、あちこちでドジョウが跳ねまわっている。
 そこに瓦の破片が降り注ぐもんで、えらい状態になっていた。

 あー、これ。
 後片付けがえらく大変なパターン。

 ぱふんの演技のラストは「瓦30枚連続割」だった。
 舞台上で伸び縮みしたぱふんが、勢いよく垂直に飛び上がり、舞台の天井から吊るされている「瓦」を連続で打ち抜いていく。

 見事30枚の”発泡スチロール製”の瓦を割りつくしたぱふん。
 舞台にちょこんと着地すると「押忍!」とあいさつをして演武を終えた。

 舞台の両袖から、黒子さん達がしゅたたたーっと現れ、水と瓦とドジョウでぐちゃぐちゃになった舞台をささっと片付け、次の演目が始まった。

 あ、これはラッキー。
 面倒な仕事が減ったぞ。

 舞台上にカウンターテーブルが設置され、そこにちょこぺんがナイフ片手に立っていた。

「えー、私が披露しますのは、ナイフジャグリング……ファイブフィンガーフィレットという、熟練を要する高等芸であります」

 そう言いつつちょこぺんは、もの凄くやばい芸を始めた……
 ただし実際は、ナイフをテーブルに置いた彼の手(フリッパー)の、左右に動かしているだけだった。

 そうだよな。
 おもえに指、あるのか?

 当然ではあるが、座布団や空き缶、箸などが舞台に向けて投げつけられる結果となった。

 しょぼぼーーんとなってちょこぺんが舞台を降りると、入れ替わりでももちゃんとちぃたんが舞台に立った。

「わたしたちはぁ、これからぁ、ミラクルぴかぴかショーを、始めまぁす」

 二匹揃ってふわもこの衣装に身を包み、ちょこんとお辞儀をする姿は、めちゃくちゃ愛くるしかった。

 そこの君。
 ウサギとネコって萌え、だろう?

 二匹のアイドルが一体どんな芸を見せてくれるのかと思っていると、ちぃたんがマイクを手に歌い始めた。

「ちぃたん、くろまめのうたを歌いまぁ~す」

 黒豆?
 確かに縁起のいい食材だよなぁ。
 まめに働いて、金運上昇商売繁栄だ。

「くろまめ~、くろまめ~、まっくろくろまめぇ~」

 ちぃたんの歌声がマイクを通して、大宴会場と化した座敷に響き渡る。
 あまぁ~くて、やたらメルヘンな、どこぞの国ではアニメボイスと呼ばれる声色だった。
 しかも、決して音痴ではないのが驚きだった。

「くろまめぇ~、くろまめぇ~、白いおさらにくろまめぇ~」

 一瞬、ピキーンといったノイズ?を耳にしたような気がしたが、宴会場の音響設備はそこまで上等なものではないので、単にハウリングが起きたのだろう。

 宴会場の他の連中はそれぞれ、蜜柑を食べたりしながら舞台上の二匹に首ったけになっていた。

「蒔いても出ないよくろまめぇ~、畑にはえないくろまめぇ~」

 マイクを握り、ちょこまかステップを刻んで歌い続けるちぃたんの横で、ももちゃんがマイクを握り舞台下の面々に向かって語りかけた。

「みなさぁ~ん、楽しんでますかぁ?私たちも楽しいでぇす。これからもっと楽しくなりますよぉ~」

 二匹揃ってステップを刻み、奇妙な曲を歌い続ける。

「穴から出てくるくろまめぇ~、くろまめぇ~」

 そこでももちゃんが急に、お皿に乗ったケーキを取り出し、それを観客席に見せながら手にしたフォークですくい取った。

「ももちゃん、かくし芸をしまぁ~す。まず……ここにある美味しそうな
”イエローケーキ”を頂きまぁ~す」

 うんうん。ケーキね。
 美味しそう?

 なにー!
 ちょっとまてぃ!

 ももちゃん、そ、それはやばい物質だぞ?
 そんなものを喰ってはいかん!

 誰か止めろー!
 ……が、遅かった。

 ももちゃんはあんぐりと口を開けると、チーズケーキのように見えるやばい物質を、一飲みにして食べつくしてしまった──
 ちぃたんは、そんな相方の事などお構いなしに謎の歌を歌い続けている。

 ブォンブォンブォン……宴会場に妙な振動音が響き始めた。
 ぷりちーついんの頭上に黒い雲が渦を巻き、みるみるうちに直径1メートルほどの黒い穴へと変化していく。

 なんだ、あれ?
 ま、まさか……

 俺は冷や汗が全身から噴出するような思いで、舞台に向かって駆け寄ろうとした。

 そのとき。
 ももちゃんの全身が、青白く発光し始め、アーモンド形の両目が眩い輝きを発していた。
 そして次の瞬間、全身の毛が逆立つと同時に──

 ばびゅーん!
 青白いビームが放出された。

「もうだめだー!」

 俺は思わず床にうずくまり、両手で頭を抱え込んでいた。

 にゃじら誕生、と思われたのだが、恐る恐る薄目を開けて舞台上に目をやると、何と黒い穴が、ももちゃんの放射するビームをことごとく吸収しているのだった!

 おお、これは驚き桃ノ木ブラックホール!

 あの奇怪な歌はどうやら、このやばい宴会芸のための安全装置の役割をしていたらしい。

 ナイス気配りだぜ、ちぃたん。

 だが、よく見ると、ちぃたんの様子が変な事に気が付いた。
 ブラックホールに吸い込まれそうになっているちぃたんは、ももちゃんの爪で押さえられ、かろうじて舞台にとどまっている。
 その身体から、まるで上着が脱げるような感じで、毛皮がはぎとられていった……

 その他にもいろんなものが空中を飛び交っていた。
 よもすえ団の連中も吸い込まれそうになっていたが、柱や欄間にしがみつき難を逃れていた。

 土鍋が一つ、どういう訳か飛び回っている。

「およ?あれって、伝説のFlying DONABEじゃん?」

 ぱふんが飛び回る土鍋を見て叫ぶ。

 ???
 すっぽーーん!

 ウサギの皮が黒い穴に吸い込まれていくのが見えた。
 そして舞台の上に目を向けると。

 そこには、ぱふんやずちころねんと同じ姿をした赤ちゃんアザラシが、きょとんとした様子で立っていた。

 そして暴れまわるブラックホールは、宴会場のテーブルや座布団、それによもすえ団の連中と一緒に飲み食いをしていた狐狸妖怪まで、綺麗さっぱり飲み込んで、現れた時と同じようにぎゅるぎゅる音を立てて消えていった。

 から~ん。

 最後に、消えゆくブラックホールに吸い込まれそこなった土鍋が一つ。
 舞台の上に立っているちぃたんの足元に転がった。

 終わった……

 怒涛の大宴会が終わった。
 これから後始末かよ……

 めんどくせーけど、どうやら俺の立ち位置って実況だけじゃ無いようだしなぁ。
 こいつらよもすえ団のちび共が、ここで何をしでかすのか、最後まで見届けてやろうじゃないの。

 そして宴会場に目を向けると、そこは100人収容の大宴会場ではなく、いつもの静かな松の間に戻っていた。
 ちび共は、思い思いの場所で、仰向けやうつぶせ、あるいは大の字になってすぴょすぴょ寝息を立てていた。

 さて、それでは今のうちに浴場の支度でもしておくか。
 宴会の後にひとっ風呂て言うのもありだろう。

(次回に続く―)


『作者の呟き』
フォロワーの皆さん、今回も最後までお読み頂きありがとうございました。
前回から1か月近く期間があいてしまいましたが、その分今回はテンション倍増で愉快な内容になるように頑張りました。
この物語を楽しんで頂けたなら何よりです。

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それではまた、次の記事でお会いしましょう。
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