三題噺ショートショート_ベンチ
落語家もすなる三題噺といふものを、コジも、してみむとてするなり。
企画もの、大の苦手なのである。
どんな親しい人の企画ものでも、なかなか素直には乗れない。
私は、「ルール」とか「決まり事」とか「期限」とか「締め切り」とかという制限事項が世の中で一番嫌いなのだ。
いくつになろうが、聞かん坊の悪ガキ。それが、私、kojuroだからである。
え?落語?三題噺?ヤスさん?

心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、別名、天の邪鬼志朗だろ。「もし書けなかったとしても、それはそれでOK。でも、やってみなきゃ、もったいない!」なんてこと言われたら、逆に書きたくなるんじゃないの?
なんのはなしですか。

わかったよ、書くよ。書く書く。書けば良いんでしょ、リトル。それで、いいんだろ?
ブラックホールよりも重い重い重い腰を上げて、半ば自暴自棄に筆を執る。
さて。では、三題噺ショートショート「ベンチ」まいりましょうか。

了は几帳面で。絵がズバ抜けて上手い。成績も常に学年上位だ。博士のような風格があり、みんなにレオナルド・ダ・ヴィンチと呼ばれていた。
俺たちの最後の試合は、暴風警報が出て順延。ミーティングのあと定食屋で、みんなで日替わり定食を食べた。
俺が言った。
「了、また、ノートをコピーさせて」
すると了が返してきた。
「良いよ。けど、自分でノートを作ったほうが良いよ」
「勉強なんてさぁ、防御率や打率を上げることに比べたら簡単なもんだ」
了曰く。
「勉強は、やるかやらないかで90%決まる。ただ野球は、やってもやっても伸びないヤツは伸びない」
了は法学部を出て大手弁護士事務所の所長になった。
俺は、彼の弁護士事務所への発注書に最後の決裁印を押している。
この前飲んだとき、了が言った。
「確かに今の年収はお前より多い。だけど叶えられるなら、この年収36年分全部使っても、一度でもいいからベンチに入りたかったよ」
夜空の月を見上げ、2人で肩を組んで笑った。

ヤスさんの三題噺企画の、そんなこんなを家内と語らおうとして後ろを振り向くと、家内が笑って言った。
まだ、あの三題噺続けてるの?じゃ、それにちなんで、マッサー(注1)三倍返しで、ね。ペペン、ぺンッ!
……。
マッサージをすると家内は、上機嫌になる。
家内が上機嫌だと、我が家は、明るくて平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。
俺にしちゃあ、三題噺も、けっこう書いたは書いたが。笑

