「Solaria 2nd Stage 第十二話|君がいるから」

「Solaria 2nd Stage 番外編|はじまりの音」
「Solaria 2nd Stage 第一話|星降る約束」
「Solaria 2nd Stage 第二話|ぎこちない光」
「Solaria 2nd Stage 第三話|はじまりの朝」
「Solaria 2nd Stage 第四話|揺れるスタートライン」
「Solaria 2nd Stage 第五話|見えない距離」
「Solaria 2nd Stage 第六話|すれ違うリズム」
「Solaria 2nd Stage 第七話|雨に溶ける声」
「Solaria 2nd Stage 第八話|雨の再会」
「Solaria 2nd Stage 第九話|重なりはじめる音」
「Solaria 2nd Stage 第十話|東京南地区予選」
「Solaria 2nd Stage 第十一話|覚醒」
■ Solaria X【公式】
■ Solaria instagram【公式】
■ Solaria YouTube【公式】
■ Solaria【公式】LINEスタンプ
「第十二話 | 君がいるから」
■昼休み カフェテラス
春のやわらかな風が、テラスのカーテンを揺らしていた。
昼休みのざわめきの中、テーブルの一角。

天野ひなた、橘あかり、小鳥遊さくらの三人が向かい合っている。
「……で、どうする?」
ひなたが身を乗り出す。
「卒業式のあと、絶対なんかやりたいよね」
「うん……何もないまま終わるのは、ちょっと嫌かも」
さくらが小さく頷く。
あかりは腕を組み、少し考える。
「やるなら中途半端はダメ」
「ちゃんと“意味のあるもの”にする」
その言葉に、二人が真剣な顔になる。
ふと、テーブルの空席に視線が落ちる。
——本当なら、ここに二人いるはずだった。
「……歌おうよ」
ひなたが言う。
「私たち三人で」
「卒業する二人のために」
さくらが少し驚いた顔をする。
「三人で……?」
「うん」
「今だからこそ、伝えたいことあるし」
あかりが静かに息をつく。
「……曲は?」
ひなたが笑う。

「もう決めてる」
その目は、まっすぐだった。
「“君がいるから”」
一瞬の沈黙。
さくらの目が、少し潤む。
「……あの曲」
あかりは小さく頷いた。
「未完成のままだったやつ」
「完成させる」
はっきりとした声。
「三人で」
ひなたが力強く頷く。
「そしてもう一つ」
さくらがカバンからそっと取り出す。
丁寧に包まれた箱。
「あの二人に、渡したいものがあるの」
■数日前——
「……これ、本気でやるのか?」
顧問の五十嵐が苦笑する。
テーブルの上には、デザイン画。

新しい制服。
「はい」
ひなたは迷わない。
「卒業しても、Solariaは続くから」
あかりも続ける。
「形に残したいんです」
顧問は少し考え、ため息をついた。
「……やりすぎな気もするけどなぁ」
そのとき。
「いいじゃないか」
静かな声。
振り返ると、学園長が立っていた。
「彼女たちの想いは、本物だ」
「応援してあげよう」
その一言で、すべてが決まった。
■卒業式
満開の桜の下。
厳かな空気。
名前が呼ばれていく。
そして——
答辞。
白石ゆいが、一歩前に出る。

「在校生の皆さん、そして先生方——」
柔らかく、澄んだ声。
言葉は丁寧に紡がれていく。
「この学園で過ごした日々は、かけがえのないものでした」
一瞬、言葉が止まる。
視線が、前列の三人へ向く。
「友達、仲間、そして——」
小さく息を吸う。
「何よりも大切な、スクールアイドル部のみんな」
その声が、少しだけ震えた。
「今日まで、本当にありがとうございました」
深く一礼。
拍手が、静かに広がっていく。
■花道
校舎の通路。
在校生たちが並び、花を手にしている。
「おめでとうございます!」
声が飛ぶ。
ゆいとしおりは並んで歩く。

その終点。
一人の少女が立っていた。
「……あゆみ?」
しおりの妹。
差し出された手紙。
「これ、先輩に」
開く。

短い一文。
——「最後に、大体育館に来てください」
顔を上げる。
「あゆみ、これ——」
「行けばわかるよ」
いたずらっぽく笑う。
■大体育館
扉が開く。
中は真っ暗。
「……誰もいない?」
ゆいが不思議そうに呟く。
一歩、足を踏み入れる。

その瞬間——
スポットライト。
ステージの上。
そこに立っていたのは——
三人。
ひなた、あかり、さくら。
高等部の制服姿。
「しおり先輩、ゆい先輩」
ひなたが、まっすぐに言う。
「ご卒業、おめでとうございます」
静寂。
そして——
ピアノの音。
■「君がいるから」
アカペラに近い、静かな始まり。
三人の声が重なる。

♬ いつもの坂道 いつもの帰り道 ——
しおりは動かない。
ゆいは、もう涙をこぼしている。
♬ 君がいるから 前を向ける——
声が、真っ直ぐ届く。
三人だけの歌。
三人だからこその、想い。
気づけば——
しおりの頬にも、涙が伝っていた。
■歌い終わって
静寂。
誰も動かない。
さくらが一歩前に出る。
「しおり先輩、ゆい先輩」
「ステージに上がってきてください」
ゆっくりと、二人が上がる。
向かい合う。
ひなたが言う。
「水瀬しおりさん」
あかりが続く。
「白石ゆいさん」
二人同時に。
「ご卒業、おめでとうございます!」

差し出される箱。
開く。
——新しい制服。
しおりが目を見開く。
「……これ」
あかりが言う。
「これからも、Solariaとして活動する時はこの制服を着てください」
さくらも続ける。
「大学生になっても、スクールアイドルです」
しおりが、かすかに笑う。
「……ほんと、バカね」
少しだけ震える声。
「でも……ありがとう」
ゆいは涙のまま笑う。
「……最高のプレゼントだよ」
そのとき!
「正式なものと認定しているから安心しなさい」
声。
振り向く。
顧問と、学園長。
「彼女たちから相談を受けてね」
「君たちは、特別だ」
静かな言葉。
「ここまで人の心を動かす部活動は、初めて見たよ」
■開かれる世界
「みんな、もう入っていいぞ!」
扉が開く。
一斉に流れ込む人。
歓声。
「Solaria!!」
「Solaria!!」
空気が一変する。
しおりが小さく笑う。
「……とんでもないことするわね」
ゆいも笑う。
「でも、これがSolariaだよね」
ひなたが手を伸ばす。
「行こう」
■Sunshine Splash!
音楽。
完璧な動き。
あの未完成だった曲が、完全な形で響く。
歓声が爆発する。
■そして——
イントロ。
「君がいるから」
今度は、違う。
三人の背後。
左右から走り出す二人。
しおりとゆい。
五人が揃う。
歓声が、さらに大きくなる。

最後の高等部制服。
五人の姿。
誰もが、その瞬間を焼き付ける。
■ラストMC
ゆいが一歩前に出る。
「私たちは今日、卒業します」
静まる会場。
「でも——」
少し笑う。
「Solariaは、終わりません」
「五人で、これからも進んでいきます」
拍手。
涙。
歓声。
■エピローグ
観客の中。
チアのメンバーが立っていた。
一人が呟く。
「……悔しいけど」
少し笑う。
「あれは、勝てないわ」
静かに背を向ける。
その表情は——どこか清々しかった。
■ラストカット

誰もいないダンス室。
並ぶ五つのシューズ。
その隣に、新しい制服。
光が差し込む。
揺れるカーテン。
——終わりじゃない。
ここからが、本当のスタートだった。
第十二話 君がいるから (終)
▶ Solaria 2nd Stage 第十三話|
― その先のステージへ ① ― へ続く
