見出し画像

銀河フェニックス物語 <恋愛編>  第八話 雪が生まれる場所で(11)

銀河フェニックス物語 総目次
第八話 雪の生まれる場所で (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)
<恋愛編マガジン>

「ロヤ星の崩壊は避けられない」
 こいつ、表情筋一つ変えやしねぇ。
「俺が戦闘機で蹴散らしてやる」
「無理だ。気流が激しく近づけない」
「おい、一体、あんたの任務は何なんだ? 連邦加盟のこの星の崩壊を食い止めるんじゃねぇのかよ」
「一人でも多くの命を救い、崩壊をソフトランディングさせる」
「ソフトランディング?」
「無用な混乱を生じさせないということだ。感染症のパンデミックによる崩壊は、歴史上に幾度もある」
「生物テロを自然死に見せかけるってことかよ。虐殺を手伝うようなもんだな」
「人為的であることを公表したところで問題は解決しない。混乱が激しくなるだけだ。犯行声明が出たらその段階で判断する。ロヤ星政府からパンデミック発生時の対応が連邦軍に一任されている。この後、外出禁止例を発令させ、空港も閉鎖する。強毒性ウイルスが確認され次第、非常事態宣言に切り替える」
「くそったれ!」

 通信機のスイッチを思いっきり切った。あいつと話している時間ももったいねえ。
「お袋さん、ロヤ山のデータを出してくれ」
 敵は五合目から登っている、先回りできれば止められるんじゃねぇのか? 
「山頂に船で直接入れねぇのかよ?」
 登山スーツに着替えながらデータをチェックする。
「無理です。雪の誕生地に近い山頂付近は吹雪だけでなく磁場嵐がひどく、操縦不能です」
 ふむ、確かにこれじゃ船で近づけねぇな。アーサーの言うとおりだ。銀河一の操縦士である俺様でも無理だ。
「七合目ならどうだ?」
 土産物売り場の裏に小型の駐機場がある。
「無理です。降りられるのであれば、敵も降りていたでしょう」
「そりゃそうだ」
「五合目がギリギリのラインです」
 お袋さんの言うことは正しい。同じスタートラインじゃ山岳民族に俺が追いつける訳がねぇ。目を細めて観測データを眺める。吹雪の上に、厄介な磁場。黙視もレーダーも効かない。
 アーサーの奴はテロを止められないと判断した。天才のあいつは計算ミスをしねぇ。けど、あいつが知らねぇ情報がある。

**

「ティリーさん起きてください。レイターが呼んでいます」
 マザーの声で目が覚めた。何だろう? ガウンを羽織って居間へ顔を出す。
「おはよう。こんな朝早くどうしたの?」

「ティリーさん、ブリ・アル貸してくれ」
 レイターが見慣れない格好をしている。山登りをする時に着る登山スーツだ。
「一体どこへ行くの? その格好で」
「決まってるだろ、ロヤ山へ観光さ」
 軽い調子でウインクした。
「冬は立ち入り禁止でしょ。何か企んでるんじゃないでしょうね」

 突然モニターが立ち上がった。
「臨時ニュースをお伝えします。ロヤ政府が外出禁止命令を発令しました」
 外出禁止命令? 思わずレイターの顔を見た。
(12)へ続く


いいなと思ったら応援しよう!

48ノ月(ヨハノツキ) ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」

この記事が参加している募集