銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十一話(21) 恋の嫉妬と仕事の妬み
・第一話のスタート版
・第三十話 まとめ読み版① ② (11)(12)(13)(14)(15)(16)(17)(18)(19)(20)
* *
コッペリ社七階の開発管理課。
電子鞭でしばった怪力の大男は床にのびている。
もう一人の背の低い男が、速乾洗剤フイールの開発資料を手に逃走した。
レイターが追いかける。
速い。
大男はパワー。チビはスピードか。
ブースターブーツで身体を浮き上がらせ、窓から外へ飛びだそうとしている。
やべぇ。間に合わねぇ。逃げられる。俺の特別手当が・・・。
あのチビ、ワトキンスを置いて逃げる気だ。
フイールの資料さえあればワトキンスがいなくても、アリオロンの科学者がXKZ液体爆弾を成功させるにちがいねぇ。
やっぱ、生け捕りじゃなく殺しときゃよかった。
俺のせいじゃねぇ、アーサーの面倒な捕獲命令のせいだ。

半径一キロは警察も誰もいねぇ。あいつは悠々と逃げのびる。
と、その時だった。
窓の手前で黒い大きな影が、チビにタックルした。
ダンッツ。
音を立ててチビが床にひっくり返る。
ブースターブーツの噴射を超えるパワー。
ヘルメットに戦闘服の男が、チビを押さえ込む。
「窃盗犯を現行犯逮捕」
バルダンの声だ。
相変わらず、すげぇな。
対刃防弾スーツの上から急所を指一突きかよ。チビがぐったりしている。
乗り込んできた特殊部隊の奴らがフイールの資料を回収する。バルダンの部下は手際よく、大男とチビに拘束着を着せた。
「遅せぇよ」
文句を言う俺にバルダンは、怪力大男の力の抜けた薬指を見ながら言った。
「ふむ、俺の教えた通りに働いたようだな」

「ちげぇよ、あんたの教え通りに戦ったら、殺すしか選択肢ねぇだろが」
「俺は今、警察官だ。悪い奴を捕まえるのが仕事なんだ」
ガキのころ、俺と一緒に戦艦アレクサンドリア号に乗ってたバルダンは、白兵戦部隊を率いて敵を倒しまくってた。あの頃とは違うってことかよ。
チビも死んでなかった。
「さて、もう一人の悪い奴を捕まえに行くぞ。動けるか」
「当たり前ぇだ。上に俺のクライアントがいるっつったろ」
大きな声を出すと胸が痛む。撃たれたところだ。肋骨やられたか。
「お前、十五階の部屋を盗聴してるんだろ?」
「よくわかったな」
「アーサーが言っとった。突入のタイミングはレイターに任せろと。お前に指揮権をやる。部隊をしっかり動かせ」
「アイアイサー」
俺たちは十五階へ向かった。
*
十五階の構造は面倒だ。ワトキンスが立てこもっている経営総務課へ入るためのドアは正面の一つしかない。
ワトキンスから丸見えだ。
ワトキンスは素人だ。どこかに隙がでる。それを狙って突入する。
ティリーさんの携帯通信機を通じて、俺の耳に室内の音が聞こえる。
ワトキンスとティリーさんが会話している。
やばい。ティリーさんが怒ってる。
頼むからワトキンスを逆上させるな。
あん? 何だか、すげぇ会話だ。
「社員一人の責任に負わせるなんておかしいじゃないですか。ワトキンスさんの居場所を奪うなんて、もってのほかです!」

ティリーさんの怒りの方向が、ワトキンスと同調している。
「理不尽です」
「わかってくれるか、私の無念を」
「はい」
被害者特有のストックホルム症候群? いや違うな。
ティリーさんは、純粋にワトキンスに同情して共感している。天然の傾聴力。
ワトキンスはティリーさんが自分を認めていることを感じて、憎悪の攻撃性が緩んでいる。
「ワトキンスさん、テレビを見てください。あなたの主張をマスコミが取り上げて流していますよ。きっと、このニュースで銀河中の人にわかってもらえます」
今だ。
俺は突入の指示を出した。

正面ドアから音を立てずに一気に侵入する。
バルダンの部下が白い煙幕を張った。 (22)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」