銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十一話(22) 恋の嫉妬と仕事の妬み
・第一話のスタート版
・第三十話 まとめ読み版① ② (11)(12)(13)(14)(15)(16)(17)(18)(19)(20)(21)
俺は、テレビに見入ったワトキンスの首筋に、即効固定剤の注入針をニードルガンで打ち込む。
プシュッツ
ワトキンスの身体中の筋肉がこわばり、動きを止める。
これで銃の引き金は引けねぇ。
同時にバルダンたちが緩衝シートを床に投げ入れる。
打ち合わせ通りだ。
XKZのボトルが落ちる速度より速く、ワトキンスの足元でふわふわのマットシートが広がる。
ワトキンスが倒れてガラスのボトルを割らないように、部隊が突っ込む。
* *
ティリーは何が起きたのかわからなかった。
ワトキンスの手から、ガラスのボトルが落ちるのが見えた。
ボトルが割れてXKZが爆発したら一巻の終わりだ。
恐怖に息が止まり、身体が固まった。
目の前に白い煙が立ち込める。
複数の人の足音。
迷彩色の戦闘服を着た人が、わたしの身体を抱きかかえた。
特殊部隊が突入したんだ。
「被疑者の身柄確保」
声が響いた。
白煙が薄くなり、視界がはっきりしてくる。
ワトキンスさんを、マットの上で数人の隊員が抑え込んでいた。
「爆発物解除」
ほっとして身体中の力が抜けそうになった。そんなわたしを特殊部隊の人が抱きかかえた。
耳元で声がした。
「遅くなってすまねぇ」
思わず見上げる。

ヘルメットで顔は見えない。
でも、その声は、わたしのよく知っている声だった。
* *
「最新情報が入ってきました」
フェニックス号のテレビから、記者の興奮した声が聞こえてきた。
サブリナは、ジョンと一緒に緊張しながらモニターを見つめた。
「コッペリ社に特殊部隊が突入した、とのことです」
ティリー先輩は大丈夫だろうか。
少なくとも現時点で、コッペリ社の本社ビルは爆発していない。
記者に原稿が突っ込まれる。
「ワトキンス容疑者の身柄確保、身柄確保です。爆発の恐れはありません。人質にけが人はいないもよう。避難命令が、まもなく解除となります。繰り返します」
わたしはジョンと顔を見合わせた。

「よかった、よかった。ティリーさんも無事だ」
「ジョン、ありがとう」
わたしは抱きつき、ジョンの胸に顔をうずめた。わたしの不安が消えていく。これで父にぶたれることもない。
ジョンの柔らかく温かい手がわたしの背中をさする。気持ちが落ち着く。
「サブリナ、もっと僕を頼っておくれ。君はしっかり者で、優秀で、何でも自分で解決できると思っているのかも知れない。けど、僕は、君を見ていると心配でたまらなくなるよ。今回のコッペリ社の契約だって、君が隣の営業企画課の仕事を横取りしたような、間違った噂が流れている」
「知っていたの?」
驚いてわたしはジョンの目を見つめた。
「アディブさんから聞いたよ」
* *
まだ、うっすらと白い煙が十五階の室内に漂っている。
「遅くなってすまねぇ」
そう言いながら突入してきた隊員が、特殊部隊のヘルメットを取った。
その顔を見なくても、わたしはもう誰だかわかっていた。
「遅いわよ、遅すぎよ。レイターのばかばかばか」
レイターの胸をこぶしで何度もたたく。涙が出てきた。怒っているのか、喜んでいるのか、驚いているのか、何が何だか、自分でもわからない。
「怖かった・・・」
身体の震えが止まらないわたしを、ぎゅっとレイターが抱きしめた。

「よくがんばったな」
温かい。レイターの胸の鼓動が聞こえる。手に力を入れて戦闘服を抱きしめる。ここから離れたくない。
完全な信頼感が、わたしの恐怖を取り去っていく。震えがおさまる。
もう大丈夫。レイターがいれば何一つ不安はない。力強いレイターの腕に身体中の力をゆだねる。
全てのものからわたしを守ってくれる。その心地よい安心感。レイターが一緒なら何も怖くない。
ずっとずっとこうしていてほしい。身体ごと溶けてしまいたい。
ふわっとした一体感と幸福感に充たされる。
とその時、特殊部隊の人の声が耳に入ってきた。
「被害者の方歩けますか? 救急隊が到着しました」
わたしは、我を取り戻した。 (23)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」