銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十一話(23) 恋の嫉妬と仕事の妬み
・第一話のスタート版
・第三十話 まとめ読み版① ② (11)(12)(13)(14)(15)(16)(17)(18)(19)(20)(21)(22)
わたしったら、こんなところで何をしているのか。
興奮状態のせいで、おかしなことになっている。
近くにはバッハさんや、ほかの隊員もいる。
は、恥ずかしい。身体を離そうとしたら、レイターがさらに力を入れて抱きしめた。
「もう少し、こうしていようぜ。俺が抱いて連れて行ってやる」
一瞬、そうしてほしい気持ちが浮かぶ。いや、ありえない。密着し過ぎだ。
「い、今は仕事中です」
「仕事じゃなかったらいいのかな」

「バカなこと言わないで!」
にやりと笑うレイターの顔を見上げたら、いつもと同じような苛立ちがわきおこった。
* *
十五階の廊下で、特殊部隊の指揮を任された俺は、ティリーさんとワトキンスのやりとりを盗聴していた。
「きっと、このニュースで銀河中の人にわかってもらえます」
今だ。
ワトキンスがテレビに気を取られた隙を狙って、特殊部隊に突入の指示を出した。
静かに室内へ入る。
ワトキンスの首筋に即効固定剤を打ち込んだ後の俺の仕事は、ティリーさんの保護。
万一、作戦が失敗してXKZが爆発したら、俺はティリーさんを抱いたまま十五階の窓から飛びだす。俺は盾になり、死んでもティリーさんを守る。
ティリーさんの細く柔らかい身体を抱きかかえる。
最悪の事態にはならずにすんだ。
バルダンの仕込んだ部下たちは優秀だった。きっちりとXKZ液体爆弾を回収した。
「遅くなってすまねぇ」
ヘルメットを取ると、ティリーさんの髪の甘い香りが俺の身体に入ってきた。

「遅いわよ、遅すぎよ。レイターのばかばかばか」
なぜだかティリーさんは、罵倒しながら俺の胸をこぶしでぶつ。
そこ、さっき撃たれたところで痛てぇんだけど。
「怖かった・・・」
ずっと緊張してたんだろう。ティリーさんの身体が小刻みに震えた。
「よくがんばったな」
ティリーさんが震える手で俺の身体をつかむ。
やべぇ。かわいすぎる。
俺は力を込めてティリーさんの身体を抱きしめた。俺があんたの震えを止めてやる。銀河中のすべてのものから、きっちり守ってやる。

任務を終えた達成感のせいだ。身体中に幸福感があふれ出す。
俺はティリーさんを抱きしめながら、アーサーの「殺すな」という面倒くさい捕獲命令に感謝していた。
抱きしめる俺の手が、人を殺した直後じゃなくてよかった。
アリオロンの盗人たちを殺していたら、こうやってティリーさんを抱きしめちゃいけないような気がした。
ティリーさんが俺から離れようとする。俺はずっとこうしていたい。
「もう少し、こうしていようぜ。俺が抱いて連れて行ってやる」
* *
フェニックス号で、サブリナは思い返していた。
社内に嫌な噂話が流れていた。わたしが隣の営業企画課の契約を横取りしたことになっていた。
わたしは一年以上前から、コッペリ社の中にきちんとコネクションを作っていた。
そこへ後から入ってきたのは、隣の課のフレッド先輩だ。

わたしより値引きした額を持ち込んできた。
主任のアディブ先輩と相談して、上司を説得し同額まで値下げして対応した。
コッペリ社の担当者は、フレッド先輩より長くつきあってきたわたしの方が話がしやすいと、購入の連絡を入れてきた。
それだけのこと。
横取りしようとしたのは、営業企画課のほうだ。
アディブ先輩に呼ばれた。
「サブリナ、変な噂が流れているわね。きちんと否定する?」

わたしは先への影響も計算して判断する。一時の感情で誤ったりしない。
「いえ、否定したところで、フレッド先輩に余計に恨まれるだけですから、このままで結構です。その代わり、評価はきちんと昇格と給与に反映してください」
「わかったわ、課長に伝えておく」 (24)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」