見出し画像

インタラクティブミュージックについての12の神話

ついにNHK「ゲームゲノム」の「ゲーム音楽SP」にて、インタラクティブミュージックが取り上げられた。

私は、じーくどらむす、こと、岩本翔と申します。
当番組ではインタラクティブミュージックの解説を担当しました。
FF15に使われた音楽システムの実装を担当しておりました。
その他の詳しいプロフィールや経歴などは以下「ポートフォリオ」から。


この神話連載について

番組を見てインタラクティブミュージックに興味を持った方は是非、私のnote連載「ゲームと音楽の関係性」から好きな記事を読んでみていただきたい。短い時間では紹介しきれなかった、たくさんのゲーム音楽の工夫が垣間見れるはずだ。


さて本稿は、そんな「インタラクティブミュージック」に対する幻想を終わらせるために書いている。つまり最終幻想。これは私のファイナルファンタジーなんだ。

「インタラクティブミュージック」って何百回も書くの嫌なので、以降、Interactive Music略して「IM」とする。

想定読者としては、私の↑のnote連載を既に読んでいたり、そうでなくともインタラクティブミュージック一般について既にご存知の方々になる。IMってよくこう言われているけど、実際どうなのか?とか、おおまかに知っているけど、もっと詳しくなりたいという、クリエイターや、コアなゲームおよび音楽の愛好者たち。

私が「ゲームと音楽の関係性」を連載をした当時は、国産ゲームにおいて導入が遅れていたIMの魅力を伝えたいという意図があったため、IMの「良い面」にフォーカスして執筆や講演を行った。嬉しいことに、国産ゲームへのIMの導入は瞬く間に進んでいった。私がいなくてもこの技術が早晩広がったことに疑いの余地はないが、それを加速するのには一役買っただろう。

そして今、開発者にIMが広がりきったと思われる状況から遅れて5年くらい、何やら私に講演依頼やらラジオ出演依頼やら、ついにはTV出演依頼まで来てしまった。もちろん、一般的にはまだ知らない人が多いだろうし、その魅力を伝えることは願ったり叶ったりである。

しかし。

もうIMの技法は広まった。これ以上「良い面」ばかりを宣伝したところで、さらにIMが広まるというメリットよりも、IMの悪い面が目立つ使われ方や、IMに対する誤解をもとにした言説が広まるデメリットの方が大きくなってきてしまう。そうした懸念は、ゲーム音楽を深く知る方々からは連載当初から私のもとに届いていたし、私も同じ危機感があった。

世間の注目が集まる今こそ、悪い面や誤解されている面も含めた「本当の話」を出して、ゲーム業界関係者や、ゲーム音楽を深く知りたいというユーザーに対して、ある種の説明責任を果たすべきではないか、と考えて本稿を書いている。というわけで、ここからIMに対して抱かれている「神話」を打ち砕くべく、私の知る限りの事実認識を並べ立てる

というわけで、12の神話記事をリンクしていくがその前に!

今回、これまでの研究成果や色んなところで発表してきたノウハウを全てまとめ直し、大量の文字を書いたので全部合わせると軽く文庫本1冊(10万文字)近くなる可能性がある。しかもそれを全て無料公開するので、さすがに何か見返りを求めたほうが良い気がしてきた(無料にするのは、知識を広めることが目的なのでそうしたいのだが、ダンピングに加担しすぎるのも良くないし、私も少しご褒美がほしい)。

そこで!

もし、この記事全体あるいは一部でも「これは有料級だ」とご納得いただけたら、こちらのおまけ有料記事をご購入いただけたら幸いだ。もちろん全く強制ではないので、あくまでサポートしたいと思った方だけで構わない。

値段は800円とさせていただく。軽い文庫本くらい?自分はコーヒーが大好きで、1杯800円くらいのスペシャルなやつを飲み歩いたりしている。ご購入いただけたら、ありがたく美味しいコーヒーに変換し、今後の活動の糧とさせていただきたい。

おまけ記事の中身としては、表向きにはハッキリ書かなかったけど本心ではこう思っている、といった裏話を中心に、とくに役に立たないけど12の神話全部読むほどの人なら気になるだろうな、というこぼれ話を書いておく。なのでそれを目当てに買うのではなく、あくまで以下を読んで価値を十分に感じた人向けなのと、見ても内容を絶対に外に漏らさないで欲しい


では、以下12の神話リンク、どこからでも読めるので、気になったところからどうぞ!

全記事リンク


1~3:定義、歴史、(黎明期の)技術


1~3では、IMの大前提となる認識について、誤解されたまま語られがちな言説を1つずつ取り上げる。定義の話、歴史の話、そしてテンポの話。


1.定議論:インタラクティブミュージックという言葉が定義されている、という神話

約5000文字
・「インタラクティブミュージック」と「アダプティブミュージック」
・学術界と産業界のズレについての私見
・定義の成功条件を考える

(登場するゲームが無いので)登場人物(敬称略):
Karen Collins、Michael Sweet、伊藤彰教、松永伸司

2.歴史論:インタラクティブミュージックは新しい概念である、という神話

約4300文字
・1980年代以前 音楽と効果音が分かたれていなかった時代
・1990年代 作曲エンジンを夢見た時代
・2000年代 ストリーミング再生技術による分断の時代

取り上げるタイトル:
ディグダグ、Checkmate、Star Wars: X-Wing、ゼルダの伝説 時のオカリナ、ファンタシースターオンライン、NieR Replicant/Gestalt、Peggle/Plants vs. Zombies

3.技術論:インタラクティブミュージックでテンポが変わる、という神話

約4400文字
・テンポは変わってないんだよ
・グラニュラーシンセサイザー
・テンポ変化を実現する2つの特殊な実装例について紹介

取り上げるタイトル:
エクストルーパーズ、FINAL FANTASY XIV / XV / VII REBIRTH、ドラゴンクエスト1、ゼルダの伝説 スカイウォードソード / 風のタクト


4~6:(近年の)技術、組織、デザイン


4~6では、IMを開発する側の話で、過度にすごい事をやっていると思われていたり、あるいは、意味のない事にコストをかけていると思われがちなところを、技術、組織、そしてデザインの面からそれぞれ整理した。


4.技術論:インタラクティブミュージックをやるには技術力が必要、という神話

約4600文字
・やればできるインタラクティブミュージック
・統合型サウンドミドルウェア CRI ADX
・オーディオミドルウェア Audiokinetic Wwise

取り上げるタイトル:
SCARLET NEXUS、OCTOPATH TRAVELER、Q-SIDE、NieR: Automata、Ghost of Tsushima、Tetris Effect

5.組織論:インタラクティブミュージックは技術があれば可能、という神話

約7500文字
・やりたくても出来ないインタラクティブミュージック
・「時間」とは、音楽にとっての「キャンバスサイズ」である
・セクショナリズムを超えて、音楽設計とゲーム設計の歩み寄りを目指そう

取り上げるタイトル:
Devil May Cry 5、FINAL FANTASY XV、Splatoon3

6.デザイン論:インタラクティブミュージックは気づかれないから意味がない、という神話

約8000文字
・シームレスに気づかれないようにする演出って意味なくない?
・じゃあ「気づかれたら負け」なのか?
・インタラクティブミュージックの金字塔「ゼルダの伝説 風のタクト」について語りたいだけ

取り上げるタイトル:
FINAL FANTASY XVI、BAYONETTA 2、ゼルダの伝説 風のタクト


7~9:批評・影響・演出


7~9では、IMが一般化するに従って「IMがあるからこうなった」という短絡化した言説が出てきがちな問題に対して、IM以外の一般的な音楽演出と比べながら、そのような比較が成り立つのか?という話(7.批評論)、なぜ「最近のゲーム音楽は印象に残らなくなった」と言われがちなのか?という話(8.影響論)、そして、結局のところ音楽演出として何が理想なのか?という話(9.演出論)に踏み込んでゆく。


7.批評論:インタラクティブミュージックの効果が測れる、という神話

約7900文字
・インタラクティブミュージックを「搭載」とか「採用」とか言うけど……
 ・だから何やねん
 ・「技術としてのIM」と「表現としてのIM」
・インタラクティブミュージックは「良い所取り」をするための折衷案
 ・IMでダイナミック化
 ・IMでシームレス化

取り上げるタイトル:
ダレカレ、ポケットモンスター ソード・シールド、ポケットモンスター スカーレット・バイオレット、マリオカート8、ファイアーエムブレム エンゲージ、FINAL FANTASY VII REBIRTH

8.影響論:インタラクティブミュージックは印象に残らない、という神話

約8000文字
・インタラクティブかつ印象深い音楽は可能なのか?
 ・反応性を優先すると音楽性が犠牲になる問題
 ・反応性を持たせながら、音楽性を保とうとしている日本のゲーム
・繰り返しを忌避する欧米のゲーム音楽
 ・繰り返し聴くことを前提とする日本ゲーム音楽文化
 ・Repetition Fatigueという烙印
・音楽の「重さ」という概念

取り上げるタイトル:
Horizon Zero Dawn、Ghost of Tsushima、ファイアーエムブレム風花雪月、ASTRAL CHAIN、など

9.演出論:インタラクティブミュージックを知ればゲーム音楽演出ができる、という神話

約8700文字
・ゲームにおける映画的な音楽演出
 ・インタラクティブミュージック「だけじゃない」音楽演出
・本題:ゲームならではの音楽演出
 ・音楽の「身体化」
・ゲームならではの「音楽をトリガーする」体験
 ・「プレイヤーの先を行かない」音楽演出、とは?

取り上げるタイトル:DEATH STRANDING、スーパーマリオワールド、ElecHead、ファイアーエムブレム覚醒、APE OUT


10~12:音楽、メディア、未来


10~12では、ゲームを離れて、より広い視点から音楽、それを取り巻くメディア、そしてAIを含めた未来において、IMがどのような意味や役割を担っていくか、という話について、現時点での私見をまとめる。


10.音楽論:音楽が感情を生み出す、という神話

約6800文字
・音楽によって、感情は操れるのか?
・音楽がないと、どんな感情になるのか?
 ・音楽が「空気」を支配する
・音楽を鳴らすと、結局何が起こるのか?
 ・感情の種に、確信を与える
・音楽を鳴らす前に、どうあるべきなのか?
 ・まずは面白いゲームを作ろう

11.メディア論:インタラクティブミュージックはゲームだけの演出である、という神話

約8000文字
・インタラクティブな「音楽」そのもの
・ビデオゲームという媒体における音楽表現
・実空間におけるインタラクティブミュージック
・Interactive Sonification

取り上げる事例:
モーツァルト、ジョン・ケージ、トッド・ラングレン、traumbaum、Biophilia、PLAYGROUND Organic Remix、Kid A Mnesia Exhibition、Sayonara Wild Hearts、リリカルアナグラム、アルクマルチバース、
ディズニーランド、大阪万博、等


12.予想論:AIが進歩することで、プレイヤーによって全て違う音楽が作られるようになる、という神話

約7000字
1,大量に作る用途を考える
・誰が為のパーソナライズ
・意味を感じさせないためのバリエーション
・無限のコンテンツを提供する
2,肩代わりする用途を考える
・フリーBGMの代わりになる
・プロトタイプの作成、ラフの作成
・トランジションの作成


13:番外編


無料のおまけです。自分に関する神話を尽く否定していきます。

約4200字
・おしゃれで広い家で開発している、という神話
・IMの実装をメインの仕事にしている、という神話
・FFシリーズにIMを初めて搭載した、という神話
 ・FF14、FF13-2、FF9、FF6
・IMの第一人者である、という神話



DirectMusicへの謝辞

本項は、私がインタラクティブミュージックに傾倒するきっかけとなった、Microsoftによる伝説的なドキュメント、「DirectMusicについての1ダースの神話」へのオマージュのつもりで書いています。

この記事は、DirectMusicがなかなか使われず(1995年~2000年代)、インタラクティブミュージックという考え方が行き渡らなかった事を背景として、「IMはそんなに怖くないよ!」という啓蒙のために書かれたもので、私は当時それにいたく感化されました。

以下がその目次です。(もちろん、すべての神話は否定されます)

神話 1: DirectMusic は作曲家に取って代わるだろう
神話 2: MIDI は貧弱な品質の音楽を意味する
神話 3: 特定のジャンルのゲームだけに適用できる
神話 4: 特定のタイプの音楽だけに適用できる
神話 5: 学習するのに難しすぎる
神話 6: インプリメントに時間がかかりすぎる
神話 7: 厳重な制約を適用する
神話 8: だれもまだ使っていない
神話 9: 単にゲームだけのためのもの、あるいはインターネットだけのためのもの
神話 10: CPU と RAM を使いすぎる
神話 11: 特別なハードウェアを必要とする
神話 12: なぜわざわざこんな努力をするのか

そして時は流れ、私はこうして、「IMにばかり囚われてると怖いよ!」という啓蒙のために、また12の神話を書く事にしました。これこそが時代の流れです。


おわりに

繰り返しになりますが、連載全体あるいは一部でも「これは有料級だ」とご納得いただけたら、以下のおまけ有料記事をご購入いただけたら幸いです。強制ではないので、あくまでサポートしたいと思った方だけで構いません。大金持ちの方はたくさんサポートいただいても構いません。

また、賛否関わらずコメントやご意見なども頂けると嬉しいです。これを機会に、インタラクティブミュージックに関するより本質的な議論が深まっていけば幸いです。

いいなと思ったら応援しよう!

じーくどらむす サポートいただけたら、連載への励みになります!