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【小説】ある技官、その妻とトキのぬいぐるみ 第1話

あらすじ
 防A省の技官であり建築士の筑後川敦と、元演劇人の美花は電撃晩婚をした。異文化交流のような夫婦の、缶車(官舎)での転勤族生活が始まる。
 美花は、初めての土地で孤独に陥る。ペットを飼いたいが缶車では禁止である。しかたなく通販で朱鷺のぬいぐるみを買うと摩訶不思議なことが。なんと、ぬいぐるみが喋り出したのだ。
 きいちゃんと名付けられたぬいぐるみは、喋れるが動くことができない。日々模索する夫婦。次第に心を通わせ、きいちゃんは子なし夫婦の子供のようになる。こうして、2人と1羽は家族になっていくのだった。

第1話 はじめまして

 皆さん、はじめまして。
 私 は、防A省に勤務する筑後川敦ちくごがわあつしと申します。
 さっそくですが、皆さん。私のような者のことを、国家公務員だと思っている方が多いのではないか、と思うのですが、いかがでしょうか?
 正確には、私は特別国家公務員です。そうなんです。“特別”がつくのです。
 なぜこのような細かいことを、冒頭からお話するかと言いますと……。妻の、ある言葉を思い出したからです。あれは、まだ結婚する前、知り合ったばかりの頃のことでした。

「え? 特別が付くんですか? へえぇ…、なんでですか?」
 なるほど、そうくるか。なかなか説明しにくいところを質問してくるな、民間の女性は、と当時は思いました。
 特別と付く理由。それはーー、法的なーー、とにかくいくつかの理由と経緯があり、そう決まっているわけなのです。

 私の妻は、前職の特色のせいか大変好奇心の強い女性でして……。興味をもったことに関してはとことん追求していきます。その他のことに関しては、まあ、マイペースといいますか、自由といいますか、私から言わせると娯楽人間なところがありますね……
 また後日詳しくお話する機会もあると思うので、今日は省略しますが、妻はちょっと変わった職業についていたものですから……。と言っても、妻曰く、
「それで食べていないから、仕事って言えないかもね。あはは」
 ということなのですが……
 確かにお金を稼いでいないのならば、それは職業とは言えない。
「それは趣味じゃないの?」
 と私が妻に言いますと、あきらかにむっとした顔をし、その後無口になってしまいましたので、慌ててご機嫌をとるために、
「散歩に行こう」
 と誘って最寄りのコンビニへ行き、果物やクリームがたくさんのったスイーツを買ってあげました。
「わあ、ありがとぉ」
 わかりやすく機嫌のよくなる妻。私は、ほっとしましたが、決して顔には出しません。九州男児であり防A省勤務の私、筑後川は男らしさを前面に出しておかねばならんばい。
 んん、ゴホッゴホッ(大げさな咳払をする)。
 話が逸れてしまいそうなので、戻しますとーーー

 おっと。時間だ。
 続きはまた後日改めさせていただきます。
 残業がなく帰宅した日は、2230ふたふたさんまる就寝と決めています。明日の仕事に支障が出てはいけませんから、寝ることにします。
 しかしながら、妻はまだ寝ません。夜更かしが常となっています。どうやらそれも前職のせいらしいのですが……
 それでは、皆さん、
 防A省の私、筑後川敦と妻、美花を今後とも宜しくお願い致します。
 おやすみなさい。



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