三題噺ショートショート_永久欠番
落語家もすなる三題噺といふものを、コジも、してみむとてするなり。
企画もの、大の苦手なのである。
どんな親しい人の企画ものでも、なかなか素直には乗れない。
私は、「ルール」とか「決まり事」とか「期限」とか「締め切り」とかという制限事項が世の中で一番嫌いなのだ。
いくつになろうが、聞かん坊の悪ガキ。それが、私、kojuroだからである。
え?落語?三題噺?ヤスシさん?

心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、別名、天の邪鬼志朗だろ。「もし書けなかったとしても、それはそれでOK。でも、やってみなきゃ、もったいない!」なんてこと言われたら、逆に書きたくなるんじゃないの?
なんのはなしですか。

わかったよ、書くよ。書く書く。書けば良いんでしょ、リトル。それで、いいんだろ?
ブラックホールよりも重い重い重い腰を上げて、半ば自暴自棄に筆を執る。
さて。では、三題噺ショートショート「永久欠番」まいりましょうか。

翠は凜として色白。背の高い才媛で屈託なく笑う。
街のクラブチームに所属していて。150㎞/hをアンダースローから投げ込み、打てばボールをピンポン球のようにかっ飛ばすパワーヒッターだった。
高三の夏。女子の甲子園で、全試合ノーヒットノーランで優勝した。
その夜の女子会。チーム全員で肩を組み「栄冠は君に輝く」を熱唱し、街のカラオケ店が揺れた。
夏の終わり。NBP規約に男子のみとは記述されていないと大論争になった。
翠はプロ野球志望届を提出したがNBPは拒否。翠は東大に進学。六大学は議論を尽くした末、彼女のプレーを認めた。
翠は四年間でホームラン24本。49勝して記録を悉く塗り替えた。
再びのドラフト。
瞑想する翠。だが、水原勇気(注)は誕生しなかった。
チームメイトがみんな、更衣室のコインロッカーを拳で叩いた。
翠は今、母校の物理教師で。硬式野球部の新米コーチだ。
大学の部室には、永久欠番、9番のユニフォームが、額に入れられて飾られている。
(注)水島新司『野球狂の詩』に登場する架空の女性投手。右のアンダースローで「ドリームボール」を武器に、日本プロ野球初の女性選手として描かれた。

ヤスシさんの三題噺企画の、そんなこんなを家内と語らおうとして後ろを振り向くと、家内が笑って言った。
まだ、あの三題噺続けてるの?じゃ、それにちなんで、マッサー(注1)三倍返しで、ね。ペペン、ぺンッ!
……。
マッサージをすると家内は、上機嫌になる。
家内が上機嫌だと、我が家は、明るくて平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。
俺にしちゃあ、三題噺も、けっこう書いたは書いたが。笑

