三題噺ショートショート_奏で
落語家もすなる三題噺といふものを、コジも、してみむとてするなり。
企画もの、大の苦手なのである。
どんな親しい人の企画ものでも、なかなか素直には乗れない。
私は、「ルール」とか「決まり事」とか「期限」とか「締め切り」とかという制限事項が世の中で一番嫌いなのだ。
いくつになろうが、聞かん坊の悪ガキ。それが、私、kojuroだからである。
え?落語?三題噺?ヤスシさん?

心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、別名、天の邪鬼志朗だろ。「もし書けなかったとしても、それはそれでOK。でも、やってみなきゃ、もったいない!」なんてこと言われたら、逆に書きたくなるんじゃないの?
なんのはなしですか。

わかったよ、書くよ。書く書く。書けば良いんでしょ、リトル。それで、いいんだろ?
ブラックホールよりも重い重い重い腰を上げて、半ば自暴自棄に筆を執る。
さて。では、三題噺ショートショート「奏で」まいりましょうか。

|棟(むね)はハーモニカをいつも持っていて、流暢に奏でる。
俺は、からっきし音楽には縁がなかったが、歌うことだけは、時々したし。好きで無くもなかった。
棟はその逆で。万年ベンチ外。でも練習はキチンとやる。チームの下働きは進んでやり。だが、暇さえあれば、ハーモニカを吹く。
俺なんかからすると、どうして野球をやり続けているのかなんて思うのだが、常にきちんとしているし、持久走は誰よりも早かった。
それと。
合宿は、めちゃくちゃ盛り上がるのだ。打ち上げの夜は、ヤツのハーモニカが大活躍で。普段大人しいヤツも、みんなで歌い、踊りまくって上手く締める。
ヤツは、裏のエースだった。
今、ヤツは、実家の料理屋を継いでいる。そして趣味で、オフの日に料理教室をやっている。
いまだに独り身の俺は、そろそろ腕を上げたくて通うことにした。
ヤツは言った。
「松竹梅、どのコースにする?」
「じゃ、松で」
俺の腕はまだまだだが。棟の店は、ハーモニカの如く軽やかに踊っている。

ヤスシさんの三題噺企画の、そんなこんなを家内と語らおうとして後ろを振り向くと、家内が笑って言った。
まだ、あの三題噺続けてるの?じゃ、それにちなんで、マッサー(注1)三倍返しで、ね。ペペン、ぺンッ!
……。
マッサージをすると家内は、上機嫌になる。
家内が上機嫌だと、我が家は、明るくて平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。
俺にしちゃあ、三題噺も、けっこう書いたは書いたが。笑

