中学でも分かる⑲『複素数』
ここでは、虚数と、その虚数を含むより広い数である複素数について学びます。2乗して $${-1}$$ になる虚数 $${i}$$ や、$${2+3i}$$ のように実数と虚数を組み合わせた数(複素数)があらわれます。
まず、本シリーズでたびたび用いた数の分類表を示します。
数の分類
数は、次のよう分類されます。
$$
\begin{align*}
\boldsymbol{複素数 a+bi}
\begin{cases}
\overset{\small b=0 のとき}{\boldsymbol{実数 a}}
\begin{cases}
\underset{\scriptsize 分数で表せる数}{\boldsymbol{有理数}}
\begin{cases}
\boldsymbol{整数}
\begin{cases}
\boldsymbol{自然数} \scriptsize{(1, 2, 3, \cdots)}\\
\boldsymbol{0}\\
\boldsymbol{負の整数} \scriptsize{(-1, -2, -3, \cdots)}
\end{cases}\\
\boldsymbol{有限小数}\\
{\footnotesize 例 0.17 (=\dfrac{17}{100})}\\
\boldsymbol{循環小数{\scriptsize(循環する無限小数)}}\\
{\footnotesize 例 0.232323\cdots\left(=\dfrac{23}{99}\right)}
\end{cases}\\
\underset{\scriptsize 分数で表せない数}{\boldsymbol{無理数}}\\
{\scriptsize 例 \pi (=3.1415\cdots) のような \boldsymbol{循環しない無限小数}}\\
{\scriptsize e (=2.7182\cdots) のような \boldsymbol{循環しない無限小数}}\\
\end{cases}\\
\overset{\small b\ne0 のとき}{\boldsymbol{虚数 a+bi}} 特に a=0 のとき \boldsymbol{bi} を\boldsymbol{純虚数}という。
\end{cases}
\end{align*}
$$
***
あらためて、この表について解説していきましょう。
自然数
$${1, 2, 3, 4, \cdots}$$ を自然数という。
***
数を数えるときに用いる、最も基本的な数を自然数といいます。ここでは、$${0}$$ は自然数に含めないことにします。大学で学ぶ数学では $${0}$$ を自然数に含めることもありますが、高校までの数学では、$${0}$$ を自然数に含めない立場をとります。
しかし、自然数だけでは、$${2-2}$$ や $${2-5}$$ のような引き算は扱えません。これらの計算結果は自然数の範囲をはみ出してしまうからです。そこで、このような引き算を自由に行えるように、新たに整数という数を導入します。
整数
自然数と $${0}$$ と $${-1, -2, -3, \cdots}$$ を整数という。つまり
$$
\begin{align*}
\underbrace{\cdots, -3, -2, -1, 0, \underbrace{1, 2, 3, \cdots }_{自然数}}_{整数}
\end{align*}
$$
このうち、$${-1, -2, -3, \cdots}$$ を負の整数という。
***
以上をまとめると、最初に次の分類表ができあがります。
$$
\boldsymbol{整数}
\begin{cases}
\boldsymbol{自然数} \scriptsize{(1, 2, 3, \cdots)}\\
\boldsymbol{0}\\
\boldsymbol{負の整数} \scriptsize{(-1, -2, -3, \cdots)}
\end{cases}
$$
これで、先ほど自然数の範囲で扱えなかった $${2-2=0}$$、$${2-5=-3}$$ のような引き算は、整数の範囲で扱えるようになります。
しかし、整数だけでは、$${3\div2=\dfrac{3}{2}\,}$$ や、 $${1\div3=\dfrac{1}{3}}$$ のような割り算は扱えません。これらの計算結果は整数の範囲をはみ出してしまうからです。そこで、このような割り算を自由に行えるように、新たに有理数という数を導入します。
有理数
$${\dfrac{m}{n}}$$ のように、分数の形で表せる数を有理数という。ただし、$${m}$$ は整数、$${n}$$ は $${0}$$ でない整数とする。
***
$${0}$$ で割ることはできないので、$${m}$$ は $${0}$$ 以外の整数となります。
すべての整数 $${m}$$ は、$${\dfrac{m}{1}}$$ のように分母を $${1}$$ とする分数の形で表せるので、有理数になります。例えば、
整数 $${3}$$ は $${\dfrac{3}{1}}$$
整数 $${-5}$$ は $${\dfrac{-5}{1}\raisebox{3ex}{ }}$$
整数 $${0}$$ は $${\dfrac{0}{1}\raisebox{3ex}{ }}$$
と書けます。$${\raisebox{3ex}{ }}$$
これで、先ほど整数の範囲では扱えなかった $${\,3\div2=\dfrac{3}{2}\,}$$ や $${\,1\div3=\dfrac{1}{3}\,}$$ のような割り算も、有理数の範囲で扱えるようになります。
さて、有理数とは、整数にくわえて、小数で表したときに有限小数か循環小数になる数のことです。
有限小数
$${0.5}$$、$${3.25}$$ のように、小数点以下の桁数が有限である小数を有限小数という。
***
なお、小数とは「小数点を使って表した数」のことで、$${0.5}$$ や $${0.333…}$$ のような $${1}$$ より小さい数だけでなく、$${56.2}$$ や $${-123.45}$$ のように整数部分が大きい数もすべて含まれます。これらの数は、小数点(ピリオド)を用いて、整数部分と小数部分を区切って表します。
有限小数は、すべて分数の形で表せるので有理数となります。
例 $${0.5=\dfrac{5}{10}=\dfrac{1}{2}}$$
$${2.55=\dfrac{255}{100}=\dfrac{51}{20}\raisebox{3ex}{ }}$$
$${-0.125=-\dfrac{125}{1000}=-\dfrac{1}{8}\raisebox{3ex}{ }}$$
循環小数
$${0.3333\cdots}$$ や $${0.324324324\cdots}$$ のように、小数点以下で同じ並びの数字が無限にくり返される小数を循環小数(循環する無限小数)という。
***
循環小数も、すべて分数の形で表せるので有理数となります。
例 $${0.3333\cdots=\dfrac{1}{3}}$$
$${5.324324324\cdots=\dfrac{197}{37}\raisebox{3ex}{ }}$$
循環小数は、繰り返す数の配列の上に ・(ドット)を打って、次のように表記します。
例 $${0.3333\cdots=0.\overset{\large.}{3}}$$
$${3.252525\cdots=3.\overset{\large.}{2}\overset{\large.}{5}}$$
$${-12.3454545\cdots=-12.3\overset{\large.}{4}\overset{\large.}{5}}$$
3つ以上の配列が繰り返されるときは、その配列の最初と最後だけに・を打ちます。すべての数字の上に・を打つ必要はありません。
例 $${1.123123123\cdots=1.\overset{\large.}{1}2\overset{\large.}{3}}$$
$${2.34897589758975\cdots=2.34\overset{\large.}{8}97\overset{\large.}{5}}$$
有理数は、整数であるか、整数でない場合には、有限小数か循環小数として表されます。
逆に、有限小数や循環小数で表される数は、必ず分数の形に書き表すことができるので有理数になります。
したがって
有理数 $${\Leftrightarrow}$$ 整数または有限小数または循環小数
といえます。
以上をまとめると、次のようになります。
$$
\underset{\scriptsize 分数で表せる数}{\boldsymbol{有理数}}
\begin{cases}
\boldsymbol{整数}
\begin{cases}
\boldsymbol{自然数} \scriptsize{(1, 2, 3, \cdots)}\\
\boldsymbol{0}\\
\boldsymbol{負の整数} \scriptsize{(-1, -2, -3, \cdots)}
\end{cases}\\
\boldsymbol{有限小数}\\
{\footnotesize 例 0.17 (=\dfrac{17}{100})}\\
\boldsymbol{循環小数{\scriptsize(循環する無限小数)}}\\
{\footnotesize 例 0.232323\cdots\left(=\dfrac{23}{99}\right)}
\end{cases}
$$
有理数を「分数で表せる数」と定義し、そのうえで、整数・有限小数・循環小数に分かれることを見てきました。
すると、「分数で表されない数」として、次のような新しい数が定義されます。
無理数
分数の形で表せない数を無理数という。
***
無理数には、具体的には
$${\sqrt{2}, \sqrt{3}, \pi, e}$$
などがあります。
なお、$${\sqrt{4}}$$ は $${\sqrt{4}=\sqrt{2^2}=2}$$ と整数になるので無理数ではありません。
また、$${\sqrt[3]{\dfrac{1}{8}}}$$ も $${\sqrt[3]{\dfrac{1}{8}}=\sqrt[3]{\left(\dfrac{1}{2}\right)^{3}}=\dfrac{1}{2}}$$ と有理数になるので無理数ではありません(中学でも分かる➂「平方根」)。
このように、累乗根がついていても、計算して整数や有理数になる場合は無理数ではありません。
また、無理数は小数で表すと、循環しない無限小数になります。繰り返しのない無限に続く小数です。例えば
$${\sqrt{2}=1.41421356\cdots}$$
$${\pi=3.14159265\cdots}$$(円周率)
$${e=2.71828183\cdots}$$(ネイピア数)
など、小数部分が規則的に繰り返すことなく無限に続きます。
代表的な無理数は、次のように有名な語呂合わせがあります。
$${\sqrt{2}=1.41421356\cdots}$$(ひと世ひと世に人見頃)
$${\sqrt{3}=1.7320508\cdots}$$(人並みにおごれや)
$${\sqrt{5}=2.2360679\cdots}$$(富士山麓オウム鳴く)
$${\sqrt{7}=2.64575\cdots}$$(菜に虫いない)
$${\pi=3.141592\cdots}$$(妻子肥後の国)
$${e=2.71828\cdots}$$(フナひと鉢ふた鉢)
有限小数と循環小数は有理数であり、循環しない無限小数は無理数になります。
これまでに見てきたすべての数を合わせたものが、次に述べる実数です。
実数
有理数と無理数をあわせて実数という。
***
つまり、$${2}$$、$${\dfrac{1}{3}}$$、$${\sqrt{3}}$$、$${\pi}$$ など、これまで見てきた数はすべて実数になります。実数のイメージは、中学1年で習った数直線です。
図版
この数直線上の「すべて」の数が実数です。
まとめると、次のようになります。
$$
\boldsymbol{実数}
\begin{cases}
\underset{\scriptsize 分数で表せる数}{\boldsymbol{有理数}}
\begin{cases}
\boldsymbol{整数}
\begin{cases}
\boldsymbol{自然数} \scriptsize{(1, 2, 3, \cdots)}\\
\boldsymbol{0}\\
\boldsymbol{負の整数} \scriptsize{(-1, -2, -3, \cdots)}
\end{cases}\\
\boldsymbol{有限小数}\\
{\footnotesize 例 0.17 (=\dfrac{17}{100})}\\
\boldsymbol{循環小数{\scriptsize(循環する無限小数)}}\\
{\footnotesize 例 0.232323\cdots\left(=\dfrac{23}{99}\right)}
\end{cases}\\
\underset{\scriptsize 分数で表せない数}{\boldsymbol{無理数}}\\
{\scriptsize 例 \pi (=3.1415\cdots) のような \boldsymbol{循環しない無限小数}}\\
{\scriptsize e (=2.7182\cdots) のような \boldsymbol{循環しない無限小数}}\\
\end{cases}
$$
2つの実数の足し算・引き算・掛け算・割り算(四則演算)の結果は、どれも実数になります。このように、四則演算をしても結果が同じ種類の数からはみ出さないことを、その数は四則演算について閉じているといいます。
すなわち、実数は四則演算について閉じています。
実数+実数=実数
実数-実数=実数
実数 × 実数=実数
実数 ÷ 実数(0でない)=実数
なお、実数の一部である有理数も四則演算について閉じています。2つの有理数の足し算・引き算・掛け算・割り算の結果も、必ず有理数になります。
有理数+有理数=有理数
有理数-有理数=有理数
有理数 × 有理数=有理数
有理数 ÷ 有理数(0でない)=有理数
自然数や整数、無理数だけでは、四則演算については閉じていません。四則演算まで考えたときに、閉じている数の集まりとして最も基本的なものが、有理数と実数です。
次からいよいよ、上記の分類には無い新しい数です。
複素数
中学から高校1年までは、実数を解に持つような1次方程式や2次方程式を扱います。つまり、実数が解にならないような方程式は「解なし」になります。
そこで、「どんな方程式にも、必ず解がある世界」を目指して、数の範囲を広げてみます。そのきっかけとして、次の方程式を解いてみましょう。
問題 次の方程式を解きなさい。
(1) $${2x+4=0}$$
(2) $${2x-3=0}$$
(3) $${x^2-5=0}$$
(4) $${x^2+1=0}$$
(5) $${x^2+3=0}$$
解答
(1) $${4}$$ を移項して
$$
\begin{align*}
2x=-4
\end{align*}
$$
両辺を $${2}$$ で割って
$$
\begin{align*}
x=-2 \cdots\small{(答)}
\end{align*}
$$
このときの解は、整数になります。
(2) $${-3}$$ を移項して
$$
\begin{align*}
2x=3
\end{align*}
$$
両辺を $${2}$$ で割って
$$
\begin{align*}
x=\dfrac{3}{2} \cdots\small{(答)}
\end{align*}
$$
解は有理数になります。解を整数の範囲に限ると、この方程式は解をもちませんが、有理数の範囲まで広げると解をもつことができます。
(3) $${5}$$ を移項して
$$
\begin{align*}
x^2=5
\end{align*}
$$
両辺の平方根をとって(中学でも分かる「平方根」)
$$
\begin{align*}
x=\pm\sqrt{5} \cdots\small{(答)}
\end{align*}
$$
$${\pm\sqrt{5}}$$ は無理数なので、このときの解は実数です。解を有理数の範囲に限ると、この方程式は解をもちませんが、実数の範囲まで広げると解をもつことができます。
(4) $${1}$$ を移項して
$$
\begin{align*}
x^2=-1
\end{align*}
$$
この $${x}$$ は「$${2}$$ 乗して $${-1}$$ になる数」です。$${2}$$ 乗して $${1}$$ になる数は $${\pm1}$$ と実数の範囲で存在しますが、$${2}$$ 乗して $${-1}$$ になる数は、実数の範囲では存在しません。よって、解の範囲を実数の範囲までに限ると、この方程式は「解なし」になります。中学で習う2次方程式は、解を実数に限っているので、このような2次方程式は出題されません。
そこで、次のように新しい数を導入します。
虚数単位
$${2}$$ 乗して $${-1}$$ になる数を $${i}$$ と定義して、これを虚数という。つまり
$$
\begin{align*}
i^2=-1
\end{align*}
$$
$${i}$$ は虚数の基本的な単位を表すので、特に虚数単位ともよぶ。
***
すると
$$
\begin{align*}
(-i)^2=(-1)^2i^2=i^2=-1
\end{align*}
$$
より、$${2}$$ 乗して $${-1}$$ になる数は $${i}$$ と $${-i}$$ の2つ存在するので、$${x^2=-1}$$ の解は
$$
\begin{align*}
x=\pm i \cdots\small{(答)}
\end{align*}
$$
となります。
解を実数の範囲に限ると、この方程式は解をもちませんが、虚数という新しい数を導入することによって、この方程式は解をもつようになります。新しい数を導入することで、それまで解けなかった方程式が解けるようになるのです。
(5) $${3}$$ を移項して
$$
\begin{align*}
x^2=-3
\end{align*}
$$
$${2}$$ 乗して $${-3}$$ になる数は、
$${(\sqrt{3}i)^2=\sqrt{3}^2i^2=3\cdot(-1)=-3}$$
$${(-\sqrt{3}i)^2=(-\sqrt{3})^2i^2=3\cdot(-1)=-3}$$
の2つあるので
$$
\begin{align*}
x=\pm\sqrt{3} i \cdots\small{(答)}
\end{align*}
$$
これも解は虚数です。新しい数の導入によって、解けない方程式も解けるようになります。
$${\blacksquare}$$
これまで見てきたように、新しい数を導入すると、解けなかった方程式が解けるようになりました。
ここで、実数と虚数をひとつにまとめる新しい数を導入しましょう。それが複素数です。複素数の定義を与えます。
複素数
実数 $${a, b}$$、$${2}$$ 乗すると $${−1}$$ になる数である虚数単位 $${i}$$ を用いて
$$
\begin{align*}
a+bi
\end{align*}
$$
という形で表される数を複素数という。
$${a}$$ の部分を実部(Real part)といい、$${Re(z)}$$ と表記する。また、$${b}$$ の部分を虚部(Imaginary part)といい、$${Im(z)}$$ と表記する。つまり
$$
\begin{align*}
z=Re(z)+Im(z)i
\end{align*}
$$
となる。
***
虚部とは実数 $${b}$$ のことを指し、$${bi}$$ 全体ではないので注意してください。
複素数の分類
複素数 $${a+bi}$$ は、$${a, b}$$ の値によって次のように分類されます。
(case1) 実数
$${a}$$ は任意の実数で、かつ $${b=0}$$ の場合は実数となります。
例 $${2+0\cdot i=2}$$
$${-3+0\cdot i=-3}$$
$${0+0\cdot i=0}$$
これは、$${a}$$ だけからなる数なので実数です。
(case2) 虚数
$${a}$$ は任意の実数で、かつ $${b\ne0}$$ の場合を虚数といいます。
例 $${2+3i}$$
$${-3-5i}$$
$${0+2i=2i}$$
$${0-7i=-7i}$$
$${0-i=-i}$$
つまり、$${i}$$ がついている数はすべて虚数です。
(case3) 純虚数
虚数のうち、$${a}$$ が $${0}$$ の場合を純虚数といいます。上の例の中では
例 $${0+2i=2i}$$
$${0-7i=-7i}$$
$${0-i=-i}$$
が純虚数です。実部がなく、$${bi(b\ne0)}$$ の形で表される数を純虚数といいます。
また、純虚数 $${bi}$$ のうち、$${b=1}$$ のときの $${i}$$ を、特に虚数単位といいます。
$${a+bi}$$ という表記によって、これまでの実数も含めた新しい数「複素数」を導入することができます。複素数は、実数を含みつつ、$${x^2+1=0}$$ のように、実数だけでは解をもたない方程式も解けるようにした、自然な数の広がりだといえます。
以上をまとめることによって、最初に述べた数の分類が完成します。
数の分類(再掲)
$$
\begin{align*}
\boldsymbol{複素数 a+bi}
\begin{cases}
\overset{\small b=0 のとき}{\boldsymbol{実数 a}}
\begin{cases}
\underset{\scriptsize 分数で表せる数}{\boldsymbol{有理数}}
\begin{cases}
\boldsymbol{整数}
\begin{cases}
\boldsymbol{自然数} \scriptsize{(1, 2, 3, \cdots)}\\
\boldsymbol{0}\\
\boldsymbol{負の整数} \scriptsize{(-1, -2, -3, \cdots)}
\end{cases}\\
\boldsymbol{有限小数}\\
{\footnotesize 例 0.17 (=\dfrac{17}{100})}\\
\boldsymbol{循環小数{\scriptsize(循環する無限小数)}}\\
{\footnotesize 例 0.232323\cdots\left(=\dfrac{23}{99}\right)}
\end{cases}\\
\underset{\scriptsize 分数で表せない数}{\boldsymbol{無理数}}\\
{\scriptsize 例 \pi (=3.1415\cdots) のような \boldsymbol{循環しない無限小数}}\\
{\scriptsize e (=2.7182\cdots) のような \boldsymbol{循環しない無限小数}}\\
\end{cases}\\
\overset{\small b\ne0 のとき}{\boldsymbol{虚数 a+bi}} 特に a=0 のとき \boldsymbol{bi} を\boldsymbol{純虚数}という。
\end{cases}
\end{align*}
$$
***
複素数は四則演算について閉じています。
複素数+複素数=複素数
複素数-複素数=複素数
複素数 × 複素数=複素数
複素数 ÷ 複素数(0でない)=複素数
複素数は実数を含み、四則演算について閉じている、より広い数の世界だと考えることができます。
数の範囲を複素数まで広げると、これまで実数では考えることができなかった負の数の平方根も、$${i}$$ を使って定義できるようになります。
負の数の平方根
負の数の平方根とは「2乗して負の数になる複素数」のことです。
具体的に見ていきましょう。
$${-2}$$ の平方根を考えます。$${2}$$ 乗して $${-2}$$ になる数は、$${i^2=-1}$$ を用いて
$$
\begin{align*}
(\sqrt{2}i)^2&=\sqrt{2}^2i^2=2\cdot(-1)=-2\\
(-\sqrt{2}i)^2&=(-\sqrt{2})^2i^2=2\cdot(-1)=-2
\end{align*}
$$
となるので、$${\sqrt{2}i}$$ と $${-\sqrt{2}i}$$ の2つあります。よって、
$${-2}$$ の平方根は、$${\sqrt{2}i, -\sqrt{2}i}$$
これらをプラスマイナス記号で1つにまとめて
$${-2}$$ の平方根は、$${\pm\sqrt{2}i}$$
とも表します。
あらためて、負の数の平方根の定義です。
負の数の平方根の定義
一般に、$${a(>0)}$$ を満たす実数 $${a}$$ に対して
負の実数 $${-a(<0)}$$ の平方根は、$${\pm\sqrt{a}i}$$
となる。
***
例
$${-3}$$ の平方根は、$${\pm\sqrt{3} i}$$
$${-4}$$ の平方根は、$${\pm\sqrt{4} i=\pm\sqrt{2^2} i=\pm2i}$$
$${-5}$$ の平方根は、$${\pm\sqrt{5} i}$$
$${-8}$$ の平方根は、$${\pm\sqrt{8} i=\pm\sqrt{4}\sqrt{2} i=\pm2\sqrt{2} i}$$
$${-9}$$ の平方根は、$${\pm\sqrt{9} i=\pm\sqrt{3^2} i=\pm3i}$$
$${-12}$$ の平方根は、$${\pm\sqrt{12} i=\pm\sqrt{4}\sqrt{3} i=\pm2\sqrt{3} i}$$
$${-18}$$ の平方根は、$${\pm\sqrt{18} i=\pm\sqrt{9}\sqrt{2} i=\pm3\sqrt{2} i}$$
なお、次の平方根の計算
$${a>0, b>0}$$ のとき
$${\sqrt{a^2}=a}$$
$${\sqrt{ab}=\sqrt{a}\sqrt{b}}$$
を、以下のように当たり前のものとして使っています(中学3年の教科書参照)。
$${\sqrt{4}=\sqrt{2^2}=2}$$
$${\sqrt{9}=\sqrt{3^2}=3}$$
$${\sqrt{8}=\sqrt{4\cdot2}=\sqrt{4}\sqrt{2}=2\sqrt{2}}$$
$${\sqrt{12}=\sqrt{4\cdot3}=\sqrt{4}\sqrt{3}=2\sqrt{3}}$$
$${\sqrt{18}=\sqrt{9\cdot2}=\sqrt{9}\sqrt{2}=3\sqrt{2}}$$
複素数の四則演算
複素数の加法・減法・乗法・除法(四則演算)は、ふつうの文字式の場合と同じように計算できます。すなわち、虚数単位 $${i}$$ を一つの文字とみなして展開や整理を行い、その途中で現れた $${i^2}$$ を、定義 $${i^2=-1}$$ にもとづいて $${-1}$$ に置き換えます。
具体例で見ていきましょう。
複素数の加法(たし算)
実部どうし、虚部どうしをそれぞれ足して
$$
\begin{align*}
(2+3i)+(1-2i)&=2+3i+1-2i\\
&=2+1+3i-2i\\
&=2+1+(3-2)i\\
&=3+i
\end{align*}
$$
複素数の減法(ひき算)
実部どうし、虚部どうしをそれぞれ引いて
$$
\begin{align*}
(2+3i)-(1-2i)&=2+3i-1+2i\\
&=2-1+3i+2i\\
&=2-1+(3+2)i\\
&=1+5i
\end{align*}
$$
複素数の乗法(かけ算)
分配法則を用いて展開すると
$$
\begin{align*}
(2+3i)(1-2i)&=2(1-2i)+3i(1-2i)\\
&=2-4i+3i-6i^2\\
&=2-4i+3i-6\cdot(-1)\\
&=2-4i+3i+6\\
&=2+6+(-4+3)i\\
&=8-i
\end{align*}
$$
計算の途中で、虚数単位 $${i}$$ の定義 $${i^2=-1}$$ を用います。
複素数の乗法(わり算)
分母分子に、分母の複素数の虚部の符号を変えたもの(これを共役複素数とよぶ)を掛けて
$$
\begin{align*}
\dfrac{2+3i}{1-2i}&=\dfrac{(2+3i)(1+2i)}{(1-2i)(1+2i)}\\
&=\dfrac{2(1+2i)+3i(1+2i)}{1^2-(2i)^2}\\
&=\dfrac{2+4i+3i+6i^2}{1-4i^2}\\
&=\dfrac{2+4i+3i+6\cdot(-1)}{1-4\cdot(-1)}\\
&=\dfrac{2+4i+3i-6}{1+4}\\
&=\dfrac{2-6+(4+3)i}{5}\\
&=\dfrac{-4+7i}{5}\\
\end{align*}
$$
このようにして分母を実数にすることを、分母の有理化といいます。
共役複素数
複素数 $${z=a+bi}$$ に対して、虚部の符号だけを変えた
$$
\begin{align*}
\overline{z}=a-bi
\end{align*}
$$
を、$${z}$$ の共役複素数(きょうえきふくそすう)という。
共役であることを表すには、文字の上にバーをつけて $${\bar{z}}$$ と書き、「ゼットバー」と読む。
***
例 $${z=2+3i}$$ の共役複素数は $${\overline{z}=2-3i}$$
$${z=-1-4i}$$ の共役複素数は $${\overline{z}=-1+4i}$$
「$${z}$$ の方は $${+}$$、$${\overline{z}}$$ の方は $${-}$$ 」などと機械的に覚えないようにしましょう。虚部の符号だけを変えたものが共役複素数です。
共役複素数を求めることを、単に「共役をとる」という場合もあります。
共役複素数の性質
共役複素数には、次のような性質があります。複素数の計算や証明をしていくうえで、いずれもよく使う性質です。
$${z, w}$$ を複素数とする。
(1) 実数条件
$${z}$$ が実数 $${\Longleftrightarrow}$$ $${\overline{z}=z}$$
証明
$${z=a+bi}$$ とおくと、$${\overline{z}=a-bi}$$ より
$$
\begin{align*}
\overline{z}=z &\Longleftrightarrow \overline{z}-z=0\\
&\Longleftrightarrow (\cancel{a}-bi)-(\cancel{a}+bi)=0\\
&\Longleftrightarrow -bi-bi=0\\
&\Longleftrightarrow -2bi=0\\
&\Longleftrightarrow b=0\\
&\Longleftrightarrow z は実数
\end{align*}
$$
$${\blacksquare}$$
(2) 純虚数条件
$${z\ne0}$$ である $${z}$$ について
$${z}$$ が純虚数 $${\Longleftrightarrow}$$ $${\overline{z}=-z}$$
証明
$${z=a+bi}$$ とおくと、$${b\ne0}$$ より
$$
\begin{align*}
\overline{z}=-z &\Longleftrightarrow \overline{z}+z=0\\
&\Longleftrightarrow (a-\cancel{bi})+(a+\cancel{bi})=0\\
&\Longleftrightarrow 2a=0\\
&\Longleftrightarrow a=0\\
&\Longleftrightarrow z=bi かつ b\ne0\\
&\Longleftrightarrow z は純虚数
\end{align*}
$$
$${\blacksquare}$$
(3) $${z+\overline{z}}$$ と $${z\overline{z}}$$ はつねに実数となる。特に $${z\overline{z}\geqq0}$$ である。
証明
$${z=a+bi}$$ とおくと
$$
\begin{align*}
z+\overline{z}&=(a+\cancel{bi})+(a-\cancel{bi})\\
&=2a{\small(実数)}
\end{align*}
$$
また、$${i^2=-1}$$ を用いて
$$
\begin{align*}
z\overline{z}&=(a+bi)(a-bi)\\
&=a^2-(bi)^2\\
&=a^2-b^2\cdot i^2\\
&=a^2-b^2\cdot(-1)\\
&=a^2+b^2{\small(実数)}\\
&\geqq0
\end{align*}
$$
$${\blacksquare}$$
(4) $${z}$$ が虚数(実数でない複素数)のとき、$${z-\overline{z}}$$ はつねに純虚数となる。
証明
$${z=a+bi}$$(ただし $${b\ne0}$$)とおくと
$$
\begin{align*}
z-\overline{z}&=(\cancel{a}+bi)-(\cancel{a}-bi)\\
&=bi+bi\\
&=2bi{\small(b\ne0 より純虚数)}
\end{align*}
$$
$${\blacksquare}$$
$${z}$$ が実数 $${a}$$ のときは、$${\overline{a}=a}$$ なので
$${z-\overline{z}=a-\overline{a}=a-a=0}$$
となります。
(5) $${\overline{\overline{z}}=z}$$
共役を2回とると、元の複素数に戻るという性質です。
証明
$${z=a+bi}$$ とおくと、その共役複素数は
$$
\begin{align*}
\overline{z}=a-bi
\end{align*}
$$
さらに、$${\overline{z}}$$ の共役をとると
$$
\begin{align*}
\overline{\overline{z}}&=\overline{a-bi}\\
&=a+bi\\
&=z
\end{align*}
$$
よって
$$
\overline{\overline{z}}=z
$$
$${\blacksquare}$$
(6) 2つの複素数 $${z, w}$$ について
$$
\begin{alignat*}{2}
&1.\hspace{12pt}& \overline{z+w}&=\overline{z}+\overline{w}\\
&2. & \overline{z-w}&=\overline{z}-\overline{w}\\
&3. & \overline{zw}&=\overline{z}\,\overline{w}\\
&4. & \overline{\left(\dfrac{z}{w}\right)}&=\dfrac{\overline{z}}{\overline{w}} {\small (w\ne0)}
\end{alignat*}
$$
加法・減法・乗法・除法については、先に計算してから結果の共役をとっても、先にそれぞれの共役をとってから計算しても、結果は同じになるという性質です。
加法についてのみ証明を示します。減法・乗法・除法についても、同様の計算で確かめることができます。
証明
$${z=a+bi, w=c+di}$$ とおくと
$$
\begin{align*}
z+w&=a+bi+c+di\\
&=a+c+bi+di\\
&=(a+c)+(b+d)i
\end{align*}
$$
すると、この共役複素数は
$$
\begin{align*}
\overline{z+w}&=\overline{(a+c)+(b+d)i}\\
&=(a+c)-(b+d)i \cdots(*1)
\end{align*}
$$
一方、$${\overline{z}=a-bi, \overline{w}=c-di}$$ より
$$
\begin{align*}
\overline{z}+\overline{w}&=a-bi+c-di\\
&=a+c-bi-di\\
&=(a+c)-(b+d)i \cdots(*2)\\
\end{align*}
$$
$${(*1)=(*2)}$$ より
$$
\begin{align*}
\overline{z+w}&=\overline{z}+\overline{w}
\end{align*}
$$
$${\blacksquare}$$
(7) $${n}$$ が自然数のとき $${\overline{z^n}=\overline{z}^n}$$
これは、複素数の $${n}$$ 乗の共役は、元の複素数の共役の $${n}$$ 乗と等しくなるという性質です。
証明
共役複素数の性質 (6) の $${3}$$
$$
\begin{align*}
\overline{zw}&=\overline{z}\,\overline{w}
\end{align*}
$$
を拡張すると、次のように $${n}$$ 個の複素数についても成り立つ。
複素数 $${a_1, a_2, a_3, \cdots, a_n}$$ に対して
$$
\begin{align*}
\overline{a_1a_2a_3\cdots a_n}=\overline{a_1}\,\overline{a_2}\,\overline{a_3}\cdots\overline{a_n}
\end{align*}
$$
ここで、$${a_1=a_2=a_3=\dots=a_n=z}$$ とおくと
$$
\begin{align*}
\overline{\underset{\tiny z の n 個の積}{z\cdot z\cdot z \cdots z}}=\underset{\tiny \overline{z} の n 個の積}{\overline{z}\cdot\overline{z}\cdot\overline{z} \cdots \overline{z}}
\end{align*}
$$
左辺は $${z}$$ の $${n}$$ 個の積の共役なので $${\overline{z^n}}$$、右辺は $${\overline{z}}$$ の $${n}$$ 個の積なので $${\overline{z}^n}$$ となる。よって
$$
\overline{z^n}=\overline{z}^n
$$
$${\blacksquare}$$
***
一見すると当たり前に思える性質もありますが、計算や証明が複雑になるほど、これらの性質が力を発揮します。
それでは、これらの性質を使った例題を1つ挙げましょう。
例題
実数 $${a, b, c}$$ を係数とする 2 次方程式 $${ax^2+bx+c=0 (a\ne0)}$$ が、複素数の解 $${z}$$ を1つもつとする。
このとき、その共役複素数 $${\overline{z}}$$ も、この2次方程式の解になることを証明しなさい。
証明
$${z}$$ は2次方程式 $${ax^2+bx+c=0}$$ の解なので、$${x}$$ に $${z}$$ を代入すると
$$
az^2+bz+c=0
$$
両辺の共役をとると
$$
\begin{align*}
\overline{az^2+bz+c\,}=\overline{\mathstrut 0}\\
\end{align*}
$$
共役複素数の性質 (6) の $${1}$$ より
$$
\begin{align*}
\overline{az^2}+\overline{bz}+\overline{\mathstrut c}&=\overline{\mathstrut 0}\\
\end{align*}
$$
共役複素数の性質 (6) の $${3}$$ より
$$
\begin{align*}
\overline{\mathstrut a}\,\overline{z^2}+\overline{\mathstrut b}\,\overline{\mathstrut z}+\overline{\mathstrut c}&=\overline{\mathstrut 0}
\end{align*}
$$
共役複素数の性質 (1) の実数条件より
$${\overline{a}=a, \overline{b}=b, \overline{c}=c, \overline{0}=0}$$
なので
$$
\begin{align*}
a\overline{z^2}+b\overline{z}+c=0\\
\end{align*}
$$
共役複素数の性質 (7) より $${\overline{z^2}={\overline{z}}^2}$$ なので
$$
\begin{align*}
a{\overline{z}}^2+b\overline{z}+c=0\\
\end{align*}
$$
この式は、$${\overline{z}}$$ が2次方程式 $${ax^2+bx+c=0}$$ の解であることを示している。よって、$${\overline{z}}$$ もこの 2 次方程式の解である。
$${\blacksquare}$$
実数係数であるため、共役をとっても方程式の形が変わらないので「解の共役も解になる」といえます。
以上のことは、一般の $${n}$$ 次方程式にも拡張できます。証明は上と同じです(略)。
実数係数 n 次方程式の共役解の定理
実数係数の $${n}$$ 次方程式
$${a_nx^n+ a_{n-1}x^{n-1}+\cdots+a_1x+a_0= 0 (a_n\ne0)}$$
が複素数の解 $${z}$$ をもつとき、共役複素数 $${\overline{z}}$$ も同じ方程式の解になる。
***
複素数の相等
2つの複素数 $${z=a+bi, w=c+di}$$ について考える。$${a, b, c, d}$$ は実数とする。
このとき、$${z}$$ と $${w}$$ が等しいとは、実部どうしと虚部どうしがそれぞれ等しいことであると定める。すなわち
$${a+bi=c+di \longleftrightarrow a=c}$$ かつ $${b=d}$$
である。
***
例題
次の等式が成り立つとき、実数 $${a, b}$$ の値を求めなさい。
(1) $${a+bi=3-2i}$$
(2) $${(a+bi)(1+2i) = 3+i}$$
解説
(1) 実部どうし、虚部どうしをそれぞれ比較して
$${a=3, b=-2 \cdots}$$(答)
(2) 左辺を展開して、実部と虚部をまとめる。
$$
\begin{align*}
(a+bi)(1+2i)&=a(1+2i)+bi(1+2i)\\
&=a+2ai+bi+2bi^2\\
\end{align*}
$$
$${i^2=-1}$$ であるから
$$
\begin{align*}
(a+bi)(1+2i)&=a+2ai+bi+2b\cdot(-1)\\
&=a+2ai+bi-2b\\
&=a-2b+2ai+bi\\
&=(a-2b)+(2a+b)i
\end{align*}
$$
これが、与えられた式の右辺 $${3+i}$$ に等しいので
$$
\begin{align*}
(a-2b)+(2a+b)i=3+i
\end{align*}
$$
実部どうし、虚部どうしを比較すると
$$
\begin{cases}
a-2b=3\\
2a+b=1
\end{cases}
$$
これを連立方程式として解く。まず、上式から
$$
\begin{align*}
a=2b+3
\end{align*}
$$
これを下式に代入して
$$
\begin{align*}
&2(2b+3)+b=1\\
&4b+6+b=1\\
&4b+b=1-6\\
&5b=-5\\
&b=-1
\end{align*}
$$
これを $${a=3+2b}$$ に代入して
$$
\begin{align*}
a=3+2\cdot(-1)=3-2=1
\end{align*}
$$
よって、求める値は
$${a=1, b=-1 \cdots}$$(答)
複素数の絶対値
複素数 $${z = a + bi}$$ に対して、$${z}$$ の絶対値を次のように定義する。
$$
\begin{align*}
|z|=\sqrt{a^2+b^2}
\end{align*}
$$
***
例えば $$[|2|=2, |-3|=3}$$ のように、実数の絶対値は数直線上で原点からの距離、つまりその数の大きさを表します。
この考え方を複素数にも広げたものが上の定義であり、複素数 $${z}$$ の絶対値 $${|z|}$$ も、その複素数の「大きさ」を表す量だと考えることができます。
例 複素数 $${z=3+4i}$$ の絶対値は
$$
\begin{align*}
|z|=\sqrt{3^2+4^2}=\sqrt{9+16}=\sqrt{25}=5
\end{align*}
$$
複素数 $${w=-2-i}$$ の絶対値は
$$
\begin{align*}
|w| = \sqrt{(-2)^2+(-1)^2} = \sqrt{4 + 1} = \sqrt{5}
\end{align*}
$$
この絶対値の定義は、次のように両辺を2乗した形で表されることが多いです。
$$
\begin{align*}
|z|^2=a^2+b^2
\end{align*}
$$
例 $${z=-3+4i}$$ について
$$
\begin{align*}
|z|^2=(-3)^2+4^2=9+16=25
\end{align*}
$$
$${w=-2-i}$$ について
$$
\begin{align*}
|w|^2=(-2)^2+(-1)^2=4+1=5
\end{align*}
$$
「大きさ」という幾何的な直感を持ちやすいのは $${|z|}$$ のほうですが、計算や理論の中では $${|z|^2}$$ のほうがよく現れます。
(注1)複素数の大小関係について
実数同士には、例えば $${2<5}$$ のように大小関係がありますが、複素数同士にはそのような大小関係は定義されないことに注意しましょう。
例えば、先ほどの $${z=3+4i}$$ と $${w=-2-i}$$ について、どちらが大きいかという意味での比較はできません。ただし、絶対値には大小関係があります。先ほどの計算より $${|z|=5}$$、$${|w|=\sqrt{5}}$$ なので、絶対値については
$${|z|>|w|}$$
が成り立ちます。
絶対値の性質
複素数 $${z, w}$$ に対して、以下の性質が成り立ちます。(5) のみ証明を与えます。
(1) ~ (3) は実数の世界と同様に考えると、直感的に理解できるでしょう。
(4) は、後に学ぶ複素数平面(ガウス平面)を用いて、図形的に考えた方が証明しやすい性質です。「三角形ではどの一辺の長さも、他の二辺の長さの和より短い」という事実を用います(教科書参照)。
(1) 非負性 $${|z|\geqq0}$$
実数の絶対値と同様に、複素数の絶対値もつねに $${0}$$ 以上の実数になります。なお、$${|z|=0}$$ となるのは $${z=0}$$ のときに限ります。
(2) 符号と共役に関する性質
$${|z|=|-z|=|\overline{z}|}$$
(3) 乗法と除法に関する性質
$${|zw| = |z|\cdot|w|}$$
$${\left|\dfrac{z}{w}\right|=\dfrac{|z|}{|w|} {\small (w\ne0)}}$$
(4) 和に関する三角不等式
$${|z+w| \leqq |z|+|w|}$$
(5) 共役複素数と絶対値の関係
$${z\bar{z}=|z|^2}$$
証明 $${z=a+bi}$$ のとき
$$
\begin{align*}
z\bar{z}&=(a+bi)(a-bi)\\
&=a^2-(bi)^2\\
&=a^2-b^2i^2\\
&=a^2-b^2\cdot(-1)\\
&=a^2+b^2\\
&=|z|^2
\end{align*}
$$
より、$${z\bar{z}=|z|^2}$$ が成り立つ。
$${\blacksquare}$$
この性質は、先に学んだ複素数の割り算で、分母から $${i}$$ を消すとき、つまり分母の有理化を行う場面などで重要な役割を果たします。
例
$$
\begin{align*}
\dfrac{1-2i}{2+3i}&=\dfrac{(1-2i)(2-3i)}{(2+3i)(2-3i)}\\
&=\dfrac{(2-3i)-2i(2-3i)}{2^2-(3i)^2}\\
&=\dfrac{2-3i-4i+6i^2}{4-9i^2}\\
&=\dfrac{2-3i-4i+6\cdot(-1)}{4-9\cdot(-1)}\\
&=\dfrac{2-3i-4i-6}{4+9}\\
&=\dfrac{2-6-(3+4)i}{13}\\
&=\dfrac{-4-7i}{13}\\
&=-\dfrac{4+7i}{13}\\
\end{align*}
$$
(注2)複素数の絶対値の2乗について
実数 $${x}$$ については $${|x|^2=x^2}$$ が成り立ちますが、複素数 $${z}$$ については $${|z|^2=z^2}$$ とはなりません。
例えば $${z=i}$$ とすると
$${|z|^2=|i|^2=1^2=1}$$
$${z^2=i^2=-1}$$
となり、値が異なります。複素数の絶対値の2乗は
$${|z|^2=z\bar{z}}$$
のように、元の複素数とその共役複素数との積として表されます。
ここで、$${z}$$ を実数 $${x}$$ の場合にしてみます。実数 $${x}$$ に対しては、$${\overline{x}=x}$$ なので
$${|x|^2=x\bar{x}=x\cdot x=x^2}$$
となり、確かに $${|x|^2=x^2}$$ が成り立つことが分かります。
一般式 $${|z|^2=z\bar{z}}$$ には、今まで当たり前として扱ってきた実数の絶対値の関係 $${|x|^2=x^2}$$ も含まれています。
複素数の歴史
2次方程式の解の公式は、古代から知られていました。しかし3次方程式の解き方が分かったのは、ずっと時代が下って、16世紀のイタリアになってからのことです。
16世紀のイタリアでは、デル・フェッロやタルタリアたちが3次方程式の解き方を見つけました。その成果をもとに、イタリアの数学者ジェロラモ・カルダーノが著書『アルス・マグナ』の中で、より一般的な解の公式として整理し、公表しました。ところが、その途中計算ではどうしても「負の数の平方根」が現れてしまいます。実際の答えは実数なのに、途中で「負の数の平方根」という、その当時は「ありえない数」と考えられていたものを通らないと計算が進まない、という不思議な状況が起きたのです。

当時の数学者たちは、この不思議な数に強い抵抗を持ちました。「数として認められない」とまで言う人もいましたが、それでも計算を続けると、なぜか正しい実数の答えが手に入ります。
そこでイタリアの数学者ラファエル・ボンベリは、この正体不明の「負の数の平方根」について、計算の規則を整理しました。「意味はよく分からないが、計算の世界では筋が通る記号」のようなものとして、「負の数の平方根」が少しずつ受け入れられ、計算に使われ始めます。

17世紀には、フランスの数学者であり哲学者でもあるルネ・デカルトが、このような数をフランス語で「nombre imaginaire(想像上の数)」と名付けました。これが英語の「imaginary number」、日本語の「虚数」という言葉の語源になりました。
実数に対して「本物ではない数」という否定的な響きの名前でしたが、呼び名が付いたことで、実数と対になる存在として次第に認識されていきます。

18世紀になると、スイスの数学者であり物理学者でもあるレオンハルト・オイラーが登場します。オイラーは、2乗して $${-1}$$ になる不思議な数に、$${i}$$ という記号を与えました。imaginary number の頭文字をとったものです。$${i^2 = -1}$$ をみたす新しい数として、$${i}$$ がはっきりと導入されたのです。

さらにオイラーは、複素数を三角関数や指数関数と結びつけた「オイラーの公式」
$$
\begin{align*}
e^{i\theta}=\cos\theta+i\sin\theta
\end{align*}
$$
を示しました。これに $${\theta=\pi}$$ を代入すると
$$
\begin{align*}
e^{i\pi}=\cos\pi+i\sin\pi
\end{align*}
$$
$${\cos\pi=-1, \sin\pi=0}$$ より(中学でも分かる⑧「三角関数」)
$$
\begin{align*}
e^{i\pi}=-1
\end{align*}
$$
$${-1}$$ を移項して
$$
\begin{align*}
e^{i\pi}+1=0
\end{align*}
$$
となり、これが、かの有名な「オイラーの等式」です。この等式は、5つの基本定数 $${e, i, \pi, 1, 0}$$ を一つに結びつけた「最も美しい数式」としてよく知られています。
オイラーは、この公式をはじめとする多くの結果を発表し、複素数の計算とその性質の研究に大きく貢献しました。こうして、実数と虚数を組み合わせた数を計算の中で自由に扱うという考え方が、大きく発展していきます。
その後、19 世紀には、ドイツの数学者であり物理学者でもあるヨハン・カール・フリードリヒ・ガウスが、複素数を「平面上の点」として考える方法を唱えました。

実数部分が $${a}$$、虚数部分が $${bi}$$ の複素数 $${a+bi}$$ を、横方向に $${a}$$、縦方向に $${b}$$ だけ進んだ点として表す考え方です。
実数が「数直線上の点」として表されるのと同じように、複素数を「平面上の点」として扱ったのです。いま私たちが「ガウス平面」や「複素数平面」(あるいは単に複素平面)と呼んでいる、複素数のとらえ方です。
例えば、複素数 $${z=2+3i}$$、$${w=-3-i}$$ は、下図のようにガウス平面上の点として表されます。ガウス平面では、$${x}$$ 軸を実軸、$${y}$$ 軸を虚軸といい
$${z=2+31}$$ は座標 $${(2, 3)}$$ の点を表す数
$${w=-3-i}$$ は座標 $${(-3, -1)}$$ の点を表す数
とみなします。

そして、複素数の絶対値
$${|z|=\sqrt{2^2+3^2}=\sqrt{13}}$$
$${|w|=\sqrt{(-3)^2+(-1)^2}=\sqrt{10}}$$
は、いずれも原点 O からその数に対応する点までの距離を表します。

ガウスがこの考え方を解析学の中で本格的に用いたことで、長いあいだ正体不明の「あやしい数」だった虚数は、実数とならぶ普通の数として受け入れられるようになっていきました。
またガウスは、1831年に発表した論文で、 実数を含む $${a+bi}$$ という数をドイツ語で「Komplexe Zahl」と呼びました。直訳すると「複合的な数」という意味で、「実部と虚部という2つの成分をあわせ持った数」というイメージがこめられています。これが、英語の「complex number」、日本語の「複素数」という言葉の語源になりました。
$${a+bi}$$ という形の数に「複素数」という名称を与え、数論の道具として体系的に扱ったことは、ガウスの大きな仕事です。
いまから見ると $${a+bi}$$ と和の形で書くのは当たり前に思えるかもしれませんが、それまで性質の違うものとして別々に扱われていた実数と虚数を、複素数として一つの数に束ねてしまうこの考え方は、当時としてはとても画期的なものでした。
高校で複素数を学ぶとき、その背景には、3次方程式から始まる何百年もの試行錯誤があったことを思い出してみてください。
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理数系小説『シュレーディンガーの Φ』
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