ラヴィアンローズ(薔薇色の人生) 1
【あらすじ】
心が揺れると口から花を生むえりかは、母親と二人浮草のように漂いながら生きてきた。えりかにとって当たり前の日常は、他人には当たり前ではなかったのだ。魔物のような自分を愛せずにいたえりかだったが、職場の花屋の店主や花を求める人々との出会いを通して、どんな自分でも人に寄り添える希望を見出してゆく。
だが花を生み続けるうちに、えりかの体に異変が起きる。もう元には戻れない。それでもえりかは人の願いを叶える花を生むことをやめない。
『ばけもので何が悪い?だから何だというの。これから先も沢山の人の心に出会う私は、決して独りではない』
自分の意味は自分で決めていい。究極の愛のかたちを求めた幻想的救済の物語。
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1. 正しくはないファンファーレ
私は、はだかで生まれてきた。
何もまとわず、ありのままの体で。
誰もがそうに決まっている。みんな同じ、はだかの子どもだったのだ。
ただひとつ私が他の人と違っていたのは、口から花を生むことだった。
精一杯の力で肺を膨らませて、呼吸を始める。
初めてこの世の空気を吸い、大きな声を張り上げるたびに、私の唇からは花があふれ出した。
宙を舞う羽毛のように軽い、小さな白い花。
波打つ七枚の花びらはまぶしく煌めき、縁には透明な光の粒が連なっていた。
私をこの世に押し出したばかりの母は、それを見るとすぐさま分娩台から飛び降りて、私の口のまわりの花を取り除いた。私が花で窒息しないように。
泣き声ファンファーレとともに湧き出る花。
分娩室の床に降り積もる花、花。
母は花をかき集めては、自分のはだけた胸元に押し込んだ。赤ん坊からあふれ出た花を、自らの体のなかに戻そうとしたのだろうか。なかったことになんて出来ないのに。
目の前の出来事に茫然としていた助産師も、恐る恐る花を集め始めた。
「これは良い予感?それとも悪い予兆なの?」
助産師は震える指で花をひとつつまみあげ、じっと見つめた。この子の行く末は一体どうなるのかという不安げな面持ちで。
煌めきながら分娩室を漂う花に囲まれて、やがて助産師は思いを決めた。
「命の花はこれほど輝くのだから、この子を必ず良い方へ導くはずよ。大丈夫」
これほど力強いつぶやきを私は他に知らない。
赤ん坊の体から生まれた花。それは真っ白な朝の光そのものだった。
まだぼんやりとしか見えないはずの目で、私はたしかにこの光景を見た。私の耳は、まばゆい光に満ちた分娩室に響き渡る自分の声を聞いた。けれども私が私である限り、それが心の水面に浮かび上がることはなかった。
思い出したのはもっとずっと後、あたたかな大地に座って空を見上げた時のことだった。
人生のはじまりの時。
私は泣き声でこの世に挨拶をした。
はじめまして、世界。
こんな私ですがどうぞよろしくお願いします。
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2.日常-⑴へ続く
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紙媒体の本を創りたい。という目標があります。
