見出し画像

網膜に重なる風景の中へ

光に色と形を重ね合わせる


日々の中で像を結ぶ。対象にピントを合わせる。
密度、鮮やかさ、質感は視点によって移り変わる。
まなうらに映るのは、今に浮かぶ過去の情景。
視点は風景をゆるやかに書き換えていく。水の
ゆらぎ、揺れる島影、布のはためき、つながれた
部分が、いつかの網膜に映った像と響き合う。




ロビーの居心地のよい空間に浮かぶ



引き伸ばされた生々しい光の痕跡



今回、美術館を訪れた理由の一つの企画展へと



空間を横切って、上階へと進む



外部に表出していた2本のシリンダーに


建築家と芸術家の会話が思い浮かぶ



企画展が行われている展示室へ



外部から見上げたブリッジを渡り



連続する空間の境界をまたぐ



黄色い壁。ロゴの下のMIMOCAのフォントも



作者によるもの。RETINA



網膜と名付けられた展覧会


海をめぐり、街にふれ、ようやくここへたどり着いた



過去の記憶をつかさどる欠片が



積層されては塗り込められる



記憶の断片がふわりと



また定着するように



書き換えられるように連続する


今はゆるやかに連なる過去の上にある



床面にゆらめく光に


まぶたの裏の記憶をそっと重ねる



入り交じる透明の凹凸に


水の動きがゆらりと浮かぶ



網膜という作品群は、捨てられるはずであった



露光テストのフィルムに残る光の痕跡に



透明の樹脂が塗り重ねられたもの



うごめくような塗膜層が



画面全体に立体的に定着し



光と色を屈折させる



表現されるのは網膜に映る過去の記憶



偶然の産物が、引き伸ばされて情景となる



見るというよりは、受け止めるというほどの



大きさの作品の細部に入り込む


部分によって構築される全体像の



寄りと引きを繰り返し



褪せては柔らかな色合いの



堆積する記憶が引き伸ばされた



作品の世界の中をなぞるように歩く



均質な赤い画面に



映り込む情景に


網膜に映しとってきた風景を重ねる



結ばれた映像は幾重にも



圧倒的に連続するもので



ほとばしるような部分と



均衡する全体像のバランスに



ただただ引き寄せられては



失われるはずのものから生み出される



映像に心静まり、また高まる



フライヤーの表紙となるのは漠悸という作品



展開されては放射される碧に


光がふわり広がっては


はためく記憶を揺らめかせる



揺れ動く淡い色が生み出す情景を



引いては寄って


部分から生み出される全体像を



つなぎ合わせてく



画面に映る染みは


まるで海に浮かぶ島のようで



視点は空の上へと一気に上昇するように



島々をめぐる旅の記憶に



ゆるやかに接続する



うねっては波打つような作品に



海の表情を重ねては


旅の記憶をつなぎあわせては


網膜に映るものを見出す


日々は書き換えられていく。物理的に、精神的に。
目に映る対象は、意識の持ち方で違いを見せる。
見えているようで見えてはいないもの。見えて
いないようで感じ取っているもの。網膜は自分
の意識にかかわらず、目に入る光を映像化する。



見えるものを抽出するのは意識や視点。会場には
意味が生じる前の作品が並ぶ。生み出された映像
は意識により意味が立ち上がる。網膜に映るもの
を塗り重ねていく。旅を続けては、つなぎ合わせる。
そこで構築する風景は、かつて網膜に映ったもの。
まぶたの裏の像を、今の風景に重ねるようにして。



いいなと思ったら応援しよう!